岩波ホールが7月に閉館へ。ファン、関係者に大きな衝撃

欧米以外の名作も上映、各国大使館も惜別
ライター/SAKISIRU編集部
岩波ホール公式ツイッター

映画館が独自の基準で選んだ映画を上映する。そんな日本のミニシアターを象徴するような存在の「岩波ホール」が7月29日に閉館する。1968年の開館以来、日本はもちろん、世界の名画を紹介し続けてきた岩波ホールの閉館に、映画ファンのみならず映画人の衝撃も大きい。

「ソナチネ」「地雷を踏んだらサヨウナラ」などのプロデューサー、奥山和由氏は自身のツイッターでコメントを発表。

岩波ホールの灯火が消える。高野悦子さんには本当に可愛がってもらった。カンヌ国際映画祭で何回かご馳走してもらったが、どの店でも毎年の行きつけでシェフが高野さんを尊敬していた。映画を文化として主張出来る人だった。岩波ホールに映画を上映してもらうことは選んでもらえたという誇りだった。

奥山氏が述べる高野悦子さんとは、映画プロデューサーで岩波ホールの元総支配人。岩波書店元社長、岩波雄二郎氏の義理の妹でもある。映画を通じて、文化の振興や国際文化の交流に尽力したとしてさまざまな賞を受賞している。

また、東京国際映画祭で作品選定ディレクターを務めていた矢田部吉彦氏も次のようにツイート。

岩波ホール閉館のニュースに言葉を失くす。ただの映画館閉館ということに留まらず、文化の火が消える。そして映画を見始めた幼少期から当然のように存在していた心の中の灯台が消えてしまう。この喪失感は埋められそうもない。

岩波ホールが果たした役割は日本映画の発展、振興だけにとどまらない。岩波ホールには、「日本では上映されることの少ない、アジア・アフリカ・中南米など欧米以外の国々の名作の紹介」や「欧米の映画であっても、大手興行会社が取り上げない名作の上映」といった役割があった。

それだけに閉館のニュースは、映画関係者のみならず、各国大使館からも惜別のコメントが相次いだ。

ポルトガル大使館の公式ツイッターアカウントは、次のようにコメント。

日本で初めてポルトガル映画が公開されたのは岩波ホールででした(1980年・パウロ・ローシャ監督作品「青い年」「新しい人生」)。高野悦子総支配人はマノエル・デ・オリヴェイラ監督とも親交が深く、数多くのオリヴェイラ作品も上映いただきました。ポルトガル大使館一同、深く感謝申し上げます。

ジョージアの駐日大使、ティムラズ・レジャバ氏も「残念です。岩波ホールでは多くのジョージア映画が上映されました」とツイートしている。

実は、岩波ホールは昨年2月6日、リニューアルオープンしたばかりだった。リニューアルにより、ホール内の耐震性強化、場内空気の給排気の向上、スクリーンと照明の新調などが図られた。この点について、ドキュメンタリー映画監督の本田孝義氏は次のようにツイート。

岩波ホール閉館の件。岩波ホールは、昨年、スクリーンを替え、座席位置も変えてリニューアルオープンしていました。良作を上映していましたが、近年、観客の年齢層が上がっていたと思います。新型コロナ禍では、高年齢層で映画館に行く人が減っているので、その影響をもろに受けた印象です。

長年のファンからすれば、環境がさらに良くなった矢先になぜ今、という気持ちになってしまうだろう。ただ、リニューアル計画は当然、コロナ以前から進められていたものだ。本田氏が指摘するように、長引くコロナ禍に資金繰りが想定以上に悪化していったのだろう。老朽化による取り壊し、というのなら多くのファンも「それなら仕方がない」と納得するかもしれない。

しかし、岩波ホールの場合はそうではない。こうなる前に打てる手立ては何かなかったのだろうか。

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