“宇宙ゴミ”ベンチャーが米宇宙燃料供給会社と契約、新興企業の宇宙ビジネス活況

政府も宇宙ビジネスに積極的な潮流
ライター/SAKISIRU編集部

スペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去技術の開発などを手掛けるアストロスケールホールディングス(東京・墨田、岡田光信CEO)は12日、子会社のアストロスケール米国(以下、アストロスケール)が「宇宙のガソリンスタンド」事業に取り組む米オービット・ファブ社(本社・カリフォルニア)と燃料補給契約を締結したと発表した。

アストロスケール・プレスリリースより

契約は、オービット・ファブの燃料運搬船が、アストロスケールの人口衛星「LEXI」に燃料を補給するというもの。「LEXI」は、寿命の尽きかけた既存の人口衛星に対して、修理を施すなどの寿命延長のためのサービスに特化した人工衛星。2026年までに静止軌道上に打ち上げ予定で、各国政府や民間衛星事業者向けに稼働する人口衛星の寿命延長サービスや宇宙ゴミの除去サービス、人工衛星故障時の撤去サービスなどを行う。

アストロスケールはこの契約により、「LEXIのサービスミッションの範囲や柔軟性を拡大し、あらゆる顧客要求を満たすことができます」と強調した。

また、オービット・ファブのダニエル・ファーバーCEOは、今回の契約締結について「当社はアストロスケールと提携し、軌道上サービスとそのサービスを担う衛星への燃料補給という明確な需要を示すことで、軌道上サービスという新興セクターの成長を促進します」と説明。「本契約は、固定価格で燃料を提供しアストロスケールがその燃料を購入するという、宇宙産業にとって初となるテイク・オア・ペイ方式を採用しており、サービスの提供前に契約の一部を収益化できるため、燃料タンカーと燃料運搬船のネットワークを迅速に構築できます」と、新しい契約形態も含めてアピールした。

2010年に約27兆円だった宇宙ビジネスの市場規模は、2019年には約40兆円まで拡大。2040年には約100兆円にまで達すると見込まれている。ジェフ・ベゾス氏(米アマゾン・ドット・コム創業者)率いるブルーオリジン社は、太陽系内の各地に拠点を作ることを目標に掲げており、宇宙旅行の登場チケットの売り上げは既に1億ドル(約110億円)に近づいているという。

米フロリダ州、ブルーオリジン本社(Thomas_Kelley /iStock)

また、イーロン・マスク氏(米テスラCEO)のスペースX社は、民間人のみ乗船の宇宙船を打ち上げており、2023年には起業家の前澤友作氏らを乗せた月旅行を計画している。投資銀行のモルガン・スタンレーのレポートによれば、スペースXの価値は既に1000億ドル(約10兆1000億円)に上る。

米カリフォルニア州のスペースX本社(Jorge Villalba /iStock)

日本でも、岸田首相が「2020年代後半には、日本人宇宙飛行士の月面着陸の実現を図る」と述べているように、政府を挙げて宇宙ビジネスを積極的に後押ししようとする姿勢が目立つ。実際に、宇宙ベンチャー育成のために政府や関係機関がパッケージで支援するさまざまな取り組みが行われている。

市場も宇宙ビジネスには大きな可能性を感じているようで、アストロスケールホールディングスが昨年調達した資金は、124億円。国内スタートアップの資金調達額ランキングでは、8位に入る健闘を見せている。世界と同様に、日本でもこれから宇宙ビジネスが活況を呈していく可能性は十分にあると言える。

 

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