ビットコイン価格は今年10万ドルまで駆け上るか?それとも海底まで沈むか?
米当局とSNSパワーの動きから占う- 昨年好調だったビットコインの先行きは?「強気派」「弱気派」に二分
- FRBの金融政策転換などが悲観的な見通しに。大富豪の買い支える動きも
- 個人投資家のSNSのパワーも見逃せない。予想は容易でないが大局的に見れば…
昨年はビットコインをはじめとする暗号資産にとって、とても良い年だった。
株は、S&P500指数が年初からほぼ右肩上がりで年末までに28.8%上昇したのに対して、ビットコインは乱高下しつつも、年間の上昇率は59.1%と株価の上昇をはるかに超えた。

ビットコインのこの好調さは今年も続くのだろうか。暗号資産投資家のうち強気派は昨年末までに到達すると言ってできなかった1ビットコイン=10万ドルに今年は到達すると言っている。一方、弱気派は1ビットコイン=1万ドルまで下がる可能性があると言う。
ビットコインに影落とす米当局の動き

ビットコインには、価格の乱高下がつきものだけに、予想は容易ではないが、今年は弱気派に分があるかもしれない。
その最大の理由は、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が金融政策をタカ派的に転換したことだ。現在、国債などの資産買入額を徐々に減らしつつあり、早ければ3月にも政策金利の引上げを行うと見られているため、投資家はリスク・オフの姿勢になり、リスクの大きい株や暗号資産などから資金を引き揚げ始めている。FRBの方針転換が明らかになった昨年11月以降これまでに、ビットコインの価格が史上最高値の約6万9千ドルから約4割下落していることからもそのことがうかがえる。
そしてもう一つの弱気材料は、規制当局の監視取締りが今後厳しくなることが予想されていることだ。ビットコインの購入貨幣としてドルや円よりはるかに大きなシェアを占めるテザーというステーブルコイン(ドルなどに価値がリンクされている暗号資産)に、規制当局から疑惑の目が向けられている。テザーが、ドルとのリンクを維持するために保有していると主張している裏付け資産が、実は十分に保有されていないのではと疑われているのだ。最近の研究では、ビットコイン購入の7割がテザ―だとされており、もしテザーに規制当局の取締りが入ると、ビットコイン価格に大きなマイナスの影響が出る可能性がある。
一方、ビットコイン価格を支えようとする力は依然として大きい。それはビットコインの持つ価値保存性、言い換えればインフレヘッジ機能に由来する力だ。有名な投資家で資産200億ドル(約2兆3千億円、FORBES400の資産家ランキング2021による)と言われるレイ・ダリオ氏、同73億ドル(約8,400億円)のポール・チューダー・ジョーンズ氏、同68億ドル(約7,800億円)のスタンレー・ドラッケンミラー氏は、彼らの莫大な資産の一部(例えばポール・チューダー・ジョーンズ氏の場合2%程度)をビットコインに投資していると公言している。
アメリカの超金融緩和政策が生んだ過剰流動性やコロナ禍による供給制約等を原因にしてインフレ率が急上昇する中で、彼らは自分たちの資産を守ろうとしているのだ。12月の消費者物価指数の前年比は7.0%だったが、これが仮に3年間続くと資産が2割以上減価する計算になるのだから彼らは真剣だ。ウォール街の金融機関も大口資産家の暗号資産投資を助けるために、ビットコインなどの暗号資産を取り扱うものが多くなってきている。
侮れない個人投資家のSNSパワー

さらにビットコインの価格に上昇圧力を与える要素として忘れてはならないのが、SNSを駆使した個人投資家のパワーだ。株式市場でもツイッターやレディット(Reddit)というネット掲示板などを通じて情報交換をして、集団で一定の銘柄に集中投資をして株価に大きな影響を与える無視できない勢力となっている。ゲームストップという銘柄で、カラ売りをして稼ごうとしていたヘッジファンドが個人投資家の襲撃を受けて破綻の瀬戸際まで追い詰められたことは有名だ。
ビットコインなどの暗号資産市場でもSNSの情報をもとに動く個人投資家が暗号資産の価格を爆騰させている。例えば、ドージコインという柴犬のモチーフをロゴにしてジョーク的に生み出された暗号資産は、昨年4月にテスラ社CEOのイーロン・マスク氏が「ドージは月に吠える」とツイートしただけで(筆者注:月には価格急上昇の意味が含まれている)一夜にして40%近く価格が上昇した。マスク氏は何度もツイートしてドージコインの上昇に貢献したが、今やドージコインの時価総額は暗号資産中12位の197憶ドル(約2.2兆円)となっている。
また、ドージコインと同じノリで作られたシバイヌ・コインは個人投資家の熱狂の中で昨年中に49万倍と信じられないような値上がりをした。昨年初めに2ドル5セント(約210円)をシバイヌ・コインに投資した人は、年末には100万ドル以上(約1億15百万円)の「億り人」になった計算だ。
ビットコインについても、イーロン・マスク氏や当時ツイッター社CEOだったジャック・ドーシー氏のツイートにフォロワーが多く集まり、マスク氏がテスラ車をビットコインで買えるようにするとツイートしたり、ビットコインを15億ドル相当購入したことを公表すると、SNS上でお祭り騒ぎが起きてビットコインの価格が跳ね上がった。
今年のビットコイン相場を占うことは、現在のところ上昇要因と下落要因の両方が存在しており、乱高下も激しいことから、魔法の水晶玉でも持っていない限り容易ではない。しかし、大局的に見れば、金融引き締めで価格は下降傾向を続ける一方、インフレヘッジ需要があるので価格が海底まで沈んで二度と浮上しないということにはならないだろう。そして、何かきっかけがあれば個人投資家が騒ぎ立てて、一時的な急騰劇が演じられる可能性も残っているのではないだろうか
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