毎日新聞を騙ったフェイクニュースサイトが「風説の流布」、莫大な損害賠償請求の可能性も

「真実の中に嘘を混ぜる」巧妙なクオリティ
ライター/SAKISIRU編集部

毎日新聞を騙ったフェイクニュースが話題となっている。「米大手ゲーム会社、GREE株公開買い付けへ。1株1500円で子会社化し、メタバース関連強化」というタイトルの記事で、ライブドアブログで17日に公開された。

毎日新聞サイトのURLが「mainichi.jp」のところ、フェイクニュースサイトのURLは「mainichi.blogto.jp」と手が込んでいる。サイトのヘッダーは、毎日新聞サイトと同様の作り。おそらく、毎日新聞サイトから窃取したとみられる。

削除後もネット上で出回る、毎日新聞を騙ったフェイクニュースサイトの画像

そのフェイクニュースの全文は次の通り。

アメリカのゲーム大手、エレクトロニック・アーツはきょう、ソーシャルゲームプラットフォーム「GREE」を運営する、IT企業のGREE(グリー)を友好的TOB(株式公開買い付け)で子会社化すると発表した。

TOBは2回に分けて実施。22年1月19日より、株の81.0%を上限に、1株1500円で取得すると発表。GREEは近年、事業の軸をゲームからメタバース関連へと移しており、仮想空間内での音楽ライブや、展示会の支援ツール『REALITY XR cloud』を提供。バーチャルYouTuber事務所、『ホロライブ』にも出資している。

エレクトロニック・アーツは、今回の買収でメタバース関係を強化する。
(白正男/ジャーナリスト)

新聞を読みなれている人でも違和感を覚えないほどのクオリティではないだろうか。さらに、グリーの子会社が「ホロライブ」に出資していることは事実で、グリーが「REALITY XR cloud」を提供しているのも事実。また、エレクトロニック・アーツがメタバースを強化しているのも事実、というより同社はすでに市場からはメタバース企業と見られている。

つまり、「エレクトロニック・アーツがグリーを子会社化する」という、この記事の肝以外の部分はすべて事実なわけだ。ちなみに、記事を執筆したとされる白正男氏も実在していて、ジャーナリストではなく「テコンダー朴」などの漫画の原作者だ。

真実の中に嘘を混ぜるとその嘘を信じやすくなるというのが心理学の定説。このフェイクニュースはその典型例のようなものと言える。

ただ、このフェイクニュースサイトの制作者、ふざけ半分でやったのだろうが、その代償は高くつきそうだ。記事が配信される前のグリーの株価は866円(1月17日10時時点)。記事が配信された翌日の株価は915円(1月18日10時時点)まで上がっている。「800円台のグリー株が1500円でTOBされる。買いだ」と、このフェイクニュースに騙されてグリー株を買った人が一定数いたのだろう。すでにサイトは閉鎖されているものの、立派な「風説の流布」だ。虚偽の風説の流布を禁止した刑法第233条の条文は次の通り。

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

さらに、グリー、毎日新聞の両社から民事で訴えられる可能性もあるだろう。信用毀損罪や業務妨害罪、偽計業務妨害罪などが考えられる。数百万円から数千万円の損害賠償を請求される可能性もある。個人的にはこういった被害を受けた時には企業がどんどん訴えて、後に続く者を出さないようにすべきではと思うのだが、両社はどうするか。損害賠償の請求金額とともに、両社の今後の動向に注目したい。

 

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