今秋の沖縄県知事選、琉球王家の現当主に保守陣営が熱視線?

篠原氏「本土での徳川家のような存在」
SAKISIRU編集長
  • 沖縄知事選、保守側の「本命不在」の中で、琉球国王の末裔に注目?
  • 政治的発言を控えてきたが、今年の元日、八重山日報で手記を掲載
  • 19日連載も開始。実際に出馬した時の影響力、篠原氏はどう見るか

今秋の沖縄県知事選挙に向け、現職の玉城デニー氏の対抗馬として、自民党など保守陣営で有力な候補者の名前が挙がらない中、意外な人物に注目が集まりつつある。最後の琉球国王、尚泰(1843〜1901)の玄孫で、現当主の尚衛(まもる)氏だ。

火災消失前の首里城で恒例だった新年のお祝い(2015年撮影:olli0815/iStock)

元日の手記に続き、八重山日報で連載

尚氏はこれまで政治的な発言は控えていたが、沖縄復帰50年を迎えた今年、元日に沖縄県石垣市の地元紙、八重山日報に手記を寄稿。これが評判になったようで、同紙は19日付朝刊に「尚本家  沖縄に寄せる思い」として題するコラムを掲載。これから毎週水曜に連載するという。

元日の手記は「祖国復帰は県民自身が選び取った歴史です」と題し、沖縄県民のアイデンティーについて「昔琉球國があり、私共の祖先は琉球の民として生きてきたこともありましたが、新たに日本人として生きる選択をした、というのが現在までの歴史であります」との認識を示していた。

そして新たに始まった連載では、「元日号ではお伝えしきれなかった部分もあるとかと思い、この機会にお伝えしなければならない」と決意を述べた上で、基地問題や独立運動で活動している人たちに言及。「活動家の皆様方も私にとって我が祖先が大切にした、琉球民の末裔の方々です」と、旧王家らしい寛容さを示す。

一方で、「活動を否定する訳ではありませんが、争いを起こしてほしくはありません」「同じ県民同士で、対立したりする事もこの目で見てきておりますので、その様な事は『平和を愛し争いを好まない』本来の琉球のアイデンティティーから離れていく行為」とも注文、沖縄県民同士での相互理解を求めた。

尚衛氏(Mountainapple /Wikimedia CC BY-SA 4.0)

尚氏は1950年生まれ。現在、沖縄県外に在住。一般社団法人、琉球歴史文化継承振興会の代表理事を務めているが、政治経験はない。ただ、沖縄や周辺諸国を取り巻く情勢では、香港で民主派が弾圧され、台湾に対する中国の軍事的圧力が継続。尖閣沖にも中国公船が連日侵入を繰り返すなかで、県民の融和を訴えた格好だ。

5月に本土復帰50年を迎える沖縄県は「選挙イヤー」。それも、辺野古基地問題を抱える名護市長選(今週末23日投開票)、尖閣の地元、石垣市長選(2月27日投開票)、沖縄市長選(4月24日)、そして夏の参院選、秋の知事選(現職の任期満了は9月27日)など、国の安全保障政策にも影響を与える大型選挙が続く。

特に知事選は、コロナ対策で不手際もあった玉城県政1期目の中身が問われるだけではなく、辺野古問題への影響はも小さくない。県による埋め立て工事の承認取り消しの是非を巡って、国と県は最高裁で係争中(一、二審は県の敗訴)。

仮に知事が自民・公明などが推す候補者に交代すれば、国との対話路線に転換するのは確実だが、ここまで報道ベースでは、県内政界の保守陣営で確固たる候補者の名前はあがっていない。そうした情勢から、保守政界の一部ながら、尚氏の動向に注目する動きもあるようだ。

“王家ブランド”の底力!?

サキシルの沖縄連載でもおなじみ、篠原章氏(批評ドットコム主宰)は「尚家としては、明治政府の1879年の沖縄処分後は東京に移ったものの、王家時代に所有していた土地は今でも自治体の公園などとして県民には身近だ。沖縄は家系図作成のビジネスも活発で、家系に対する関心は高い。特に年配になるほど尚家に対する敬意はある」と指摘する。

一方で、尚氏自身に政治経験はなく、一族を見回しても、大田昌秀知事時代の前半1991〜94年、夫が尚家だった農学者の尚弘子氏(琉球大学名誉教授)が副知事を務めた例があるくらいだ。篠原氏も、尚氏が実際に出馬する可能性は高くないとみているものの、“王家ブランド”の底力は一定度ありそうだ。

知事選や参院選のような大型選挙で沖縄の保守勢力は本命不在で、まとまりを欠くことが多かったが、実際に出馬するようなことがあれば、尚家は本土での徳川家のような存在。話題性もあるし、まとまりやすいかもしれない」(篠原氏)。

“旧王家”ならぬ旧藩主の末裔で知事になったのは、愛媛県の久松定武氏(在任1951~71年)、佐賀県の鍋島直紹氏(同1951~59年)、福島県の松平勇雄氏(同1976〜88)、熊本県の細川護煕氏(同1983〜91、後に首相)、秋田県の現職、佐竹敬久氏(同2009年〜)の例があるが、果たして琉球王家が再び“ウチナンチューのリーダー”となる日は来るのだろうか。

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