グレイステクノロジー株が連日のストップ安、巨額の粉飾決算に旧経営者の逮捕はある?
昨年3490円の株価が一時67円に !東証一部上場のグレイステクノロジー社の株価がここ数日、急落している。昨年1月6日に3490円の値を付けていた同社株は今年1月14日に400円にまで下落。株価の値下げは止まらず、今日、20日の始値は82円。一時、67円にまで値下がりしている。
同社は昨年11月に、過去の四半期報告書に不正があったと発表。特別調査委員会を設置して調査を進めるとしていた。当初、2021年7~9月期の四半期報告書を1月17日までに提出すると関東財務局に申請していた。しかし、14日、調査継続中として期限までに提出できない見込みであることを発表。東証は、同社の発表を受けて上場廃止基準に該当する可能性のある「管理銘柄」に指定。ここ数日の株価急落は、この指定を受けてのものとみられる。
グレイステクノロジーは、国内初のマニュアル制作専門会社として1984年に創業。2000年に、創業時の社名であった株式会社日本マニュアルセンターから現在のグレイステクノロジー株式会社に社名を変更。
グレイステクノロジー設立時には、ソフトバンク・インベストメント株式会社(現SBIホールディングス)、ソフトバンク・コマース株式会社 (現ソフトバンクBB)、伊藤忠テクノサイエンス株式会社(現伊藤忠テクノソリューションズ)から出資を受けている(その後、3社とも売却・譲渡済)。
同社は2016年に東証マザーズに上場し、2018年には東証一部上場を果たしている。今春、再編される東証プライム市場にも今のところは上場予定だ。
同社の創業社長の松村幸治氏は2019年5月20日に代表取締役会長に就任。前身の日本マニュアルセンターに新卒1期生として入社している飯田智也氏が新たに社長に就任した。しかし松村氏は昨年4月13日、急性大動脈解離により死去。飯田氏は、昨年12月に社長を退任している。
2人の元社長が関与する重大な不正
今回、この2人の元社長に疑惑の目が向けられている。同社が14日に発表した報告書では、「特別調査委員会より、本件調査の過程で、元代表取締役及び元取締役が関与する重大な経営者不正が発見されたとの報告がありました」としている。
報告書によれば、2人の元社長と元取締役が、「①架空売上を計上し、その架空取引に係る売掛金を当社役職員の自己資金を用いて仮装入金等していたこと、②売上の前倒計上をしていたこと、③利益操作目的で架空外注費を計上していたこと、④前記①ないし③を実現する手段として偽装工作している」ことが特別調査委員会から指摘された。
不正は2016年3月期から直近の2021年3月期まで行われ、2021年3月期は約18億円の売り上げのうち、半分以上にあたる約9.9億円が架空売り上げだったという。しかも不正計上した売り上げはさらに増える可能性が高い。「②売上の前倒計上」と「③利益操作目的で計上された架空外注費」は現在、特別調査委員会が精査中とのことだ。また、調査の過程で次のような新たな不正も見つかっている。
当初の調査対象は架空の売上計上でしたが、その範囲外であるリース案件についても会計処理の適切性が疑われる取引が発見されたとの報告がありました
さしずめ“粉飾決算のフルコース”といったところだが、ここまで悪質だと元社長や元取締役の逮捕は免れないと誰もが思うだろう。しかし、それは今のところ不透明だと言わざるを得ない。
ホリエモンは53億円で実刑判決、しかし…
粉飾決算での逮捕というと、いまだにホリエモンの愛称で知られる実業家の堀江貴文氏を思い出す人も多いのではないだろうか。堀江氏は証券取締法違反(偽計取引容疑)と有価証券報告書虚偽記載容疑で逮捕されているが、粉飾決算の金額は53億4700万円。堀江氏は懲役2年6カ月の実刑判決を受けている。
堀江氏の「ライブドア事件」とほぼ同じ時期に起こった「カネボウ事件」の粉飾額は2150億円。カネボウの当時の経営者は逮捕されてはいるものの、実刑は回避している。「オリンパス事件」も同様で、粉飾金額は1178億円に上るものの、経営者はみな執行猶予判決を受けている。
また、東芝は2,000億円を超える粉飾決算を行っており、第三者による調査では会社ぐるみで粉飾決算をしていた実態が明らかになったが、誰も逮捕されていない。昨年には刑事事件としての公訴時効を迎えている。
過去の粉飾決算事件を振り返ると、粉飾決算での経営者の逮捕や実刑の有無は、他の罪状とは違い「粉飾額がいくらだから」などと一般化できないようなのだ。結果だけを見るときわめて恣意的で不公正に思えるが、今回の「グレイステクノロジー事件」はどちらのパターンになるか。一部では、株主代表訴訟の動きも始まっている。グレイステクノロジー株が上場廃止に追い込まれるか、プライム市場にどのように影響を及ぼすか、そして旧経営陣の逮捕はあるのか、同社の動向を今後も注視していきたい。
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