連合「参院選で支援政党 明示せず」朝日の特報に、芳野会長出身労組の会長は「誤報だ」

朝日と読売の報道「温度差」にも注目

日本最大の労組の中央組織、連合が今年夏の参院選について、支援する政党を明記せず、目的が異なる政党や候補者は推薦しないとする運動方針を固めたことが波紋を呼んでいる。

連合はかつては民主党を支援し、傘下の労組組織から自らも候補者を擁立。選挙の運動員も多数送り込んできた。2017年に後継の民進党が立憲民主党国民民主党に分裂してからは対応に苦慮しつつも支援を継続。昨秋の衆院選では両党をそれぞれ支援政党として運動方針に明記した。

しかし、昨年10月、連合の会長に就任した芳野友子氏は、かねてから立民が共産党と接近し、野党共闘路線に舵を切ったことに批判的だった。立民はトップが枝野幸男氏から泉健太氏に交代、泉氏は共産党との距離を置く姿勢を見せてはいた。

しかし、立民と国民の合流を要求している連合としては、傘下の労組のうち、官公労系が立民を、民間産別労組が国民をそれぞれ支持し、亀裂が深まるのを避けるための「苦肉の策」として、参院選では野党共闘路線の候補者は支援せず、立民、国民とは必要な調整にとどめる方針に舵を切った。

この動きで興味深いのは読売新聞朝日新聞の報じ方で明らかな“温度差”がある点だ。

淡々と報じる読売、朝日は大展開

読売は22日付朝刊の政治面で、二段見出しで「共産『連携候補』支援せず」と、ストレートニュースで淡々と報じただけだった。読売があっさりしていたのは、政権与党との距離が朝日より近く、野党側の動向を冷めてみている側面もあるかもしれないが、実は朝日が前日夜にデジタル版で「連合、参院選は支援政党を明示せず 共産との共闘候補は推薦もなし」をスクープ報道したことで、やる気が起きなかった側面もあるかもしれない。

その朝日は翌日の紙面展開でも精力的だ。前夜のデジタル版をベースにした本記を、一面の3番手扱いで掲載するにとどまらない。4面をめくるとトップ扱いで舞台裏を詳報。「連合新方針  野党は困惑」の主見出しに、立民幹部が吐露したという「なんで乱暴な」という声をサブタイトルに持ってきた。デジタル版でこちらの記事も前夜に配信されているが、「なんで乱暴な」はネット受けしやすいキャッチなコピーだ。

ツイッターでは労組や左派関係者がビビッドに反応。芳野氏の出身労組でもある、ものづくり産業労働組合JAMの安河内賢弘会長に至っては「これはさすがに誤報です」とツイート。「立憲、国民両党の支援は全く変わっていませんし、野党候補の一本化を真っ向から否定する方針でもありません。そもそも方針決定していません」と否定して見せるなど、明らかに狼狽している様子だ。

安河内氏のツイートに対しては、野党支持者らが「誤報になることを祈っています」などと同調するも、安河内氏に対しては自民党の秘書と見られる匿名アカウントが「朝日を訴えたらいい」と煽るなど、たちまち“祭り”になった。

“祭り”は朝日の記事でも大々的に行われた。「なんで乱暴な」の記事では、一橋大学の中北浩爾教授の「連合本部への政治活動の一本化が後退したことは否めない」などと苦言気味の談話を掲載。さらには朝日新聞デジタルで記者や識者が記事にコメントをつけるコーナーでは、論説委員が「「自民1強」が強まるばかり」などと中北氏に同調。本記のコメント欄にも、歴史社会学者の小熊英二氏が「連合の存在意義をみずから否定することにならないか」との書き込みをするなど、紙面もコメント欄も揃って“連合バッシング”。野党の弱体化を危惧することへの朝日や関係者の本音が明らかに滲み出ている展開となった。

 
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