岸田ショックで「SaaSバブル」崩壊が浮き彫り?

先行投資の赤字体質に株価低迷の試練
  • 「岸田ショック」が話題になった今週の株式市場でSanSanの続落が注目
  • SanSanに代表される「SaaS」業界のバブル崩壊が最近取り沙汰
  • 市場調査やベンチャー投資家の見方は?

「岸田ショック」が話題になった今週の株式市場で、特に注目されたのが、名刺アプリサービスを展開するSanSan(本社:東京・北青山)の株価の続落だった。クラウドでソフトを提供する「SaaS」(Software as a Service)業界を牽引してきたSanSanの株価低迷を引き合いに、SaaS業界のピークアウトを指摘する向きが出ている。

SAAS業界は生き残れるか(Melpomenem /iStock)

SanSan株は28日、一時、年初来安値となる1,190円にまで落ち込んだ(終値1210円)。これは2019年6月に上場した頃の1300〜1400円台を割り込んだもので、元LINE執行役員の田端信太郎氏が27日のツイッターで「SanSanの株価、上場のときの初値近辺まで、行って来いで戻る・・・。これでもPER(注:株価収益率)100倍以上なんやから、SaaSバブル完全崩壊中やなー。。。」との見方を示した。

2010年代、オフィスのクラウド化を追い風に拡大してきたSaaS市場。SanSanの他にも、中小企業向けサービスのラクス(本社・千駄ヶ谷)や、会計ソフトのマネーフォワード(本社:東京・芝浦)、同業のフリー(本社:東京・西五反田)、あるいはビッグデータ分析のプラスアルファ・コンサルティング(本社:東京・浜松町)などが急成長を遂げてきた。

コロナ禍に入った頃は、リモートワーカーの増加などでオフィスのDX化が追い風に見込まれ、日本経済新聞は2020年12月、「SaaS株再び騰勢」との記事を掲載し、「SaaS銘柄の成長余地は大きい」とする大手証券アナリストの談話を紹介。実際、SaaS市場そのものは、富士キメラ総研は昨年、2020年に見込んだ1兆332億円から、24年には1兆6,054億円に成長すると予測している。

SaaSオワコン説

ただ一方で、その日経記事も威勢の良い見出しの割に、「開発費や広告費といった先行投資がかさんで赤字の企業が多い」との課題は指摘しており、田端氏が言うPERの問題は当時から横たわっていた。

もちろん、ラクスのように売上高、利益ともに大幅増の会社もあるのだが、エンジェル投資家の間では厳しい展望を示す人もいる。新興ゲーム会社の事業責任者などを歴任後、現在はスタートアップへの初期投資を手がける投資家は「SaaSの盛り上がりはもう終わりではないか」と話す。また、ベンチャーキャピタル経営の木下慶彦氏も25日のツイッターで、尊敬するIT領域の実績ある経営者の話として、「AI・SaaSは終わった可能性もある。(終わったと言うのは現実的になるの意味を含む)そして絶対来るのはweb3」との見方を示していた。

少なくとも投資家の一部は、SaaSよりもメタバースやweb3といった新しい領域の将来性を買う方向にシフトしているようだが、株式取引のみの観点で言えば、現在の市場低迷は、アメリカFRBの利上げ警戒という直接の引き金のほか、国内的には「株主資本主義からの転換は重要な考え方の一つ」との認識を示す岸田首相の「新しい資本主義」政策といった要因が、投資家心理を必要以上に冷え込ませ、株価を一段と押し下げている側面はある。

株式市場の荒波の中でも、着実に事業を育てたり、斬新なサービスを打ち出したりして、どの企業がポストコロナのSaaS市場の主導権を取り、生き残るのか。今後も注目したい。

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