菅直人氏も10年前「ヒトラー」と批判されていた。しかも衆院本会議で

浜岡原発の「法的根拠なき」停止巡り、あの人に
SAKISIRU編集長
  • 菅直人元首相のヒトラー発言騒動を斬る。参院選を前にした維新との小競り合い
  • 不毛な論争だが、最近の電気料金から菅首相時代の浜岡原発停止の経緯を想起
  • 浜岡原発の停止は法的根拠なき要請。これを「ヒトラー」と批判した政治家は…

立憲民主党・最高顧問の菅直人元首相がツイッターで、橋下徹氏や維新について「ヒトラーを想起させる」と投稿し、これに橋下氏や維新が反発。維新側が立民の党本部に抗議文を送りつけるなどの騒ぎになって10日余り。参院選を前にした「鞘当て」が見え見えで、しかも不毛な論争に見えることから、一部のコア支持層を除くと無党派層などはドン引きしているのではないだろうか。

菅直人氏(写真:ZUMA Press/アフロ)

騒ぎが続くほど、菅氏にとっては良くも悪くもメディアやネットで露出を増やせるだろう。しかし、党外を見回せば、世論調査で自民党の支持率がダントツで、維新と立民の数字を足しても差が開いているケースすらある。

1月終盤に発表された日本経済新聞の調査では、参院選での投票先を尋ねたところ、自民は43%。維新は2位につけたとはいえ16%に過ぎず、立民に至っては10%に低空飛行だ。維新と立民による政策論争とは程遠い小競り合いは、自民への挑戦権を賭ける「準決勝」にすら程遠い。

維新は執行部が若いこともあって、まだ自民に正面から挑もうという気概があるのかもしれないが、結局、立民は目先の選挙で手一杯で焦りを募らせているようにしか見えない。

菅氏が連日、維新disりのツイートに精を出すほど、得意客の左派層にすら呆れ始められている。左派論客の猪野亨弁護士はブログで「立憲民主党自身が健全な保守層に受け入れられる政党に脱皮しなければならないのに、こうした不用意なツイートは有害でしかありません」と苦言しているが、どんぐりの背比べに執心する現状は、まさに視野狭窄に陥っているのだろう。

いまの電気料金高騰の元凶、浜岡原発停止

正直なところ、筆者自身は本件についてあまりの中身のなさ加減からスルーしようとも思ったが、菅氏のヒトラー発言に関連して1点だけ看過できない事態が起きた。電気料金の高騰だ。今回の諍いが起きてからまもない1月28日、電力各社10社が今年3月分の電気料金を発表。過去5年で最高となった。

電気料金をここまで押し上げた直接の要因は、火力発電所の燃料となる液化天然ガス(LNG)や石炭の輸入価格が大幅に上がったことだが、もともと「ゲタ」が高かった経緯が大きい。この10年、電気料金は上昇基調にあったが、起点となったのは2011年の原発事故の後、全国各地の原発をほとんど止めてしまったことだ。改めて言うまでもないが、その嚆矢となったのが、菅政権が法的根拠がない「お願い」で、中部電力の浜岡原発を停止させたことだった。

浜岡原発(fuku41/PhotoAC)

原発事故に怯える当時の国民世論からすれば、津波対策の見直しのための緊急避難措置として理解できなくもないが、それでも立法措置をしなかったのは、法治国家にあるまじき対応だった。当然、超法規的措置を強行したことで菅氏自身もヒトラー呼ばわりされた過去がある。2011年6月、当時の野党自民党で幹事長だった石原伸晃氏が衆院本会議での内閣不信任案提出に際し、こう演説している(太字は筆者議事録はこちら)。

一国の最高権力者が民間企業に停止を要請するなどという、不明確で、自分の責任を回避するようなやり方ではなく、必要なら、法律をこの立法府で改正し、正式な手続にのっとって停止を命令すべきであります。それが、私が心配している菅総理の危うさであります。そして、今私が話したのが、政治の、行政のあるべき姿だと思っております。

それらの手順をすべて無視して、ゴールデンウイークの最中に、突然、記者会見で原発の停止を要請するこのやり方は、法治国家日本の総理とは思えません。国民の原発に対する不安、そしてその心のすきにつけ込んで自分の人気取りに利用する総理の姿は、共産主義の危機をあおり立て、その不安につけ込んで権力の座を掌握した独裁者ヒトラーと、どこが違うのでしょうか。

舌禍の石原氏でも傾聴に値する訳

石原伸晃氏(内閣府サイト)

石原氏を巡っては、後年の数々の舌禍で求心力を落とし、昨年の衆院選で落選してしまった経緯もあるだけに、説得力を感じない人も少なくあるまい。引用した筆者の本音も実はそれは否定しがたいところで恐縮だが、舌禍の多くは記者会見や党内会合など、原稿のない「アドリブ」の一環で飛び出たものだ。

一方、このヒトラー発言は、野党第一党の幹事長として、時の政権にノーを突きつける「勝負原稿」を本会議で読み上げた中でのものだ。事前の推敲や党内調整があったであろうことを考えると、政治的な重みや真剣度合いは段違いだ。ちなみにこの当時、石原氏の口から本会議で飛び出たヒトラー発言について当の民主党も、マスコミも全くスルー状態だった。

結局何が言いたいかと言えば、ヒトラーと発言している菅氏自身もその政治手法が同じように批判されているし、世の中からすればどうでもいい話だったわけだ。

繰り返すが、維新と立民のネット上の小競り合いなど、自民党の独走状態を前にどんぐりの背比べに過ぎない。菅氏の戯言を抑えきれない立民の執行部の政治力のなさにも呆れるし、維新も(橋下氏も)オワコンの元首相などガン無視して、社会主義化が止まらない岸田首相に真正面から市場主義の真骨頂のような改革案をぶつけるべきではないだろうか。

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