北京冬季五輪の裏で、3人の嫌われ者が「空しい」政治的駆け引き

プーチン氏北京入り、北のミサイル発射...その意図は?
早稲田大学名誉教授
  • 北京五輪の舞台裏で浮き彫りになる指導者たちの淋しい現実とは?
  • 国際社会が白けた中露首脳会談、その中露にも見放された金正恩…
  • 北のミサイル技術はロシア提供説。五輪直前の発射による外交的成果は…

北京オリンピックは独裁者たちの孤独を世界に披露する場となった。開会式に参加した大物は、ロシアのプーチン大統領だけ。首脳会談では「ウクライナと台湾については相互に支持する」ことを確認し合った。一方、北朝鮮の金正恩総書記は中露指導者から相手にもされなかった。華やかな五輪の裏で、指導者たちの淋しい現実が浮き彫りにされた。

北京オリンピック開会式を前に会談した習近平、プーチン両首脳(ロシア大統領府サイト)

国際社会が白けた中露首脳会談

2月4日の北京オリンピック開会式のテレビ報道では、プーチン大統領の姿は映し出されなかった。欧米のメデイアは、プーチン大統領がウクライナ選手団の入場の際に目を閉じていたことを報じ、「寝たふり」では、とからかった。

中国の力に頼るロシアの経済力は、韓国よりも低い。国内総生産は約1.5兆ドル(150兆円、2020年)で、韓国は160兆円を超え、日本は約500兆円超。その程度のロシアの経済力で、巨大な軍事費を費やさねばならず、日本や欧米からの追加制裁を受けては耐えられないから、アメリカと対抗するには中国の力が必要だ。

中露の五輪に合わせた首脳会談は、人権問題やウクライナ侵攻危機で世界から孤立する2人の嫌われ者が、協力せざるを得なくなった実情を表している。

プーチン大統領の意図はみえみえで、米国に対抗する経済力も国力もないロシアが、中国の力に頼り「中露連携」を強調し、欧米との対決を演出したことになる。しかし、平和の祭典の五輪での対決姿勢に、国際社会は白けた。

中露にも見放された金正恩

もう一人の嫌われ者、金正恩は、超大国の指導者に相手にしてもらえていない。注目された金正恩総書記は、4日に習近平主席に祝電を送り「習近平同志の指導で、中華の気概と国力を誇示した」と讃えたが、出席しないのだから何とも空々しい。中国は、北朝鮮のミサイル発射にカンカンで、金正恩は中国の怒りをなんとか鎮めようと祝電を送ったのだろうが、その文書は余りに空しかった。

金正恩氏(米政府公式flickr:Public domain)

北朝鮮のミサイル発射は、日米韓三国、国際社会が反発したが、実は中国の怒りは激しかった。中国は昨年12月に、「1月28日以後、北京五輪中の紛争の停止」を国連総会で決議していた。にもかかわらず、北朝鮮は1月30日にミサイルを発射。中国は普段は「関係国の冷静対応」を求めてきたが、この時だけはコメントを拒否することで、怒りを表現した。

プーチン大統領は北朝鮮の指導者を嫌っている。ロシアは、国際社会から孤立する北朝鮮に極めて冷たい。経済支援もしていないことから明らかだ。

北朝鮮は過去にロシアへの多額の未払い貿易代金を返済できず、チャラにしてもらったことがある。この経験から、ロシアは代金支払いのない北朝鮮への輸出には、厳しい態度を示している。

国連安保理の経済制裁以降は、朝露貿易はほぼ停止状態だ。安保理が認めるわずかな量の石油製品を出している程度だ。

朝露兵器技術の「不穏な関係」

北朝鮮のミサイル技術向上は、ロシアからの技術提供との観測があるが、ロシアは公式には否定している。だが、ロシアの技術者が密かに北朝鮮入りしている事実は確認されている。北朝鮮の核やミサイル開発施設から亡命した関係者や家族が、ロシアやウクライナの技術者の存在を証言しているのだ。

DedMityay /iStock

旧ソ連のミサイル開発は、ウクライナで行われていた。ウクライナには、多くの兵器工場があった。ウクライナ独立後も、ロシアは多くのミサイルと技術をウクライナから輸入していたが、2014年のクリミア併合で関係が断絶した。

このため、多くのウクライナの兵器企業は、倒産の危機に瀕した。この際に、北朝鮮がウクライナの技術者を引き抜き、精密部品を密輸したと言われる。この「技術移転」にロシアの武器商人や闇業者が関係しており、米国はこうした人物や企業に制裁を課しているが、ロシアは公式には否定している。

中国の求めを裏切ってミサイル発射

なぜ、北朝鮮は新年早々にミサイルを連続発射したのか。日本では、「アメリカの気を引くため」との分析もあるが、これは違うだろうと思う。アメリカの気を引くなら、最初から長距離のミサイルを発射すべきだが、いずれも短中距離のミサイルだった。

しかも、北京五輪直前のこの時期である。中国が求めた国連総会決議に違反してまで発射を行ったその狙いは、明らかに中国である。

中国は、北朝鮮が求める食糧や肥料、生活必需品の無償支援をくれなかった。ミサイル発射直後に初めて、北朝鮮の列車が中国入りし、物資を供給されたという。

中朝露の独裁者たちはみなそうだが、中でも「金正恩の孤独」は今後も続きそうだ。

 

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