それでもテスラがビットコインを持つ理由:大インフレ時代の幕開け
イーロン・マスク、常識外れの発想とは- ビットコイン決済を見送ったテスラが資産として保有継続の背景
- 藤巻健史氏「世界のインフレ懸念で、重要な代替資産となりつつある」
- 中央銀行高官「すべてを失う覚悟を」。マスク氏の常識外れの発想とは
テスラが今年2月に発表していたビットコインによる支払いについて、同社CEOのイーロン・マスク氏がビットコインの環境への負荷を理由に見送ったことで、今週後半のビットコイン相場が下落する騒ぎがあった。しかし、前回の記事でも紹介したように、テスラは資産としてのビットコイン保有は続けている。その背景にあるのが世界的な経済大変動のシナリオ。経済評論家の藤巻健史氏が指摘するのは世界的なインフレのシナリオだ。
ビットコイン保持の理由は、世界で大インフレが起こるから!?
「テスラ購入の決済通貨として使われなったことで、がっかりムードが漂ったかもしれませんが、思ったよりビットコイン価格は下がっていません。それは今、世界のインフレ懸念が高まっている環境下では、ビットコインは重要な代替資産となりつつあるからだと思います。インフレとは物価高だけでなく、国の法定通貨の価値が下がることを意味します。そんな時は、法定通貨ではない通貨に代替する価値のあるものを購入するのが投資家としては妥当な行為となるのです。こういう時、インフレが一国だけなら投資家はインフレしていない国の通貨を買いますが、今起こっているのは、世界同時進行のインフレ。金やビットコインはそれにあたるのです」(藤巻氏)
テスラが企業資産としてビットコインを購入したきっかけも、米国のドル大増刷によるインフレ懸念だった。テスラは今年2月、ビットコインを15億ドル(1600億円)を企業の資産として購入したが、これをアドバイスしたのは、マイクロストラテジー社のマイケル・セイラー氏だ。同氏は先んじて自社でビットコインを購入し企業の資産として組み込んでいた。
同氏も昨年から、米国での歴史的なドル増刷が近い将来インフレを引き起こすと予測し、その対策としてビットコインを購入をしていた。マイケル・セイラー氏の問題意識は本人がBTCBOXブログでの一連のインタビュー記事で詳しく語っている。
マイケル氏は政府がインフレ率を測る際の指標に資産インフレをカウントしていない問題を指摘しながら、ドルを刷ることでインフレが起こることは自明の理だという。その上で「自国の通貨が90%の確率で値下がりすると知っているのにも関わらず、その通貨を保有し続けるのは、果たして賢いと言えるでしょうか」と疑問を呈し、さらには「世界には300兆ドルの資産があり、そのうちの半分は今後46~48ヶ月の間に中央銀行によって資産価値が流出してしまうと考えています」などと、あまりに大胆な仮説を立てているのだ。
正しいのは政府高官か?ブッ飛んだ連中か?
彼らの考え方は基本的なところでは一致している。近い将来、世界的に深刻なインフレがおこり、法定通貨の目減りすることが確実だとみているのだ。
だからこそ、戦略的に将来価値が上がる可能性の高いビットコインを資産に組み入れている。企業の資産としてビットコインのようなリスク資産をつぎ込むことなど、これまで誰もやったことなどないのに、だ。
逆に各国の中央銀行の高官たちは依然と、「ボラティリティ(価格変動)の高いビットコインは警戒すべき」として「すべてを失う覚悟を」とまで言わせている。マスク氏やセイラー氏らのやっていることが既存の価値観からするととてつもなく“常識外れ”なのは間違いない。法定通貨のありかたそのものに根本的な疑問を持っている彼らの考え方と、国家の権威たちの見解とでは、根本的なところから対立しているのだ。
マスク氏は「法定通貨がマイナス金利である状況で、他の資産を探そうとしないのは愚か者だけだ」としながら、「ビットコインは法定通貨と同じくらいくだらない。しかし、ほぼというところが重要だ」という。彼らの発想は従来の固定観念を遥かに超えたところにあるようだ。
未来への見立てが正しいのは常識的な政府高官なのか、ブッ飛んだ彼らなのか--。その結論はそう遠くはない時にわかるかもしれない。
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