「韓服もキムチも中国に盗まれる!」中韓の熾烈な「歴史戦」が大統領選を動かす
北京五輪でも火花、中国メディア「韓国人の劣等感に過ぎない」- 北京五輪を機に「韓国の反中感情は、爆発寸前」の事態、何があったか
- 開会式で韓服姿の女性が出た場面になぜ怒ったのか。その経緯を解説
- 反日・反中は韓国の民族主義、中国への今回の怒りは何を意味するのか
北京冬季オリンピックをきっかけに始まったのは、「中韓文明の衝突」だった。韓国を代表する朝鮮日報紙は2月7日、「韓国の反中感情は、爆発寸前」と報じた。最近まで、文在寅政権をはじめ左派系学者や学生、インテリは、中国に親近感を寄せており、韓国では北朝鮮のような嫌中感情はほとんど聞かれなかった。その状況が変わりつつあるようだ。

「中国の悪口」で合意する南北高官
北朝鮮は、中国が嫌いだ。30年前のワシントン特派員時代に、ニューヨークで北朝鮮の外交官を毎月昼食に誘った。彼は、中国を「大国主義で嫌な奴らだ。朝鮮人は中国人が嫌いだ」と悪口を言った。中国と旧ソ連が対立した時代に、少しでもソ連を支持すると援助が止まり、いじめられた。文化大革命時代には、金日成主席批判の壁新聞が出た。「米中和解では、事前通告もせず北朝鮮を裏切った。中国は必ず裏切る、信用できない」と、興奮気味に語った。
北朝鮮の外交官と交渉した元開城工業団地理事長の韓国高官は、「北朝鮮高官とは中国の悪口では、いつも合意した」と笑った。「韓国人は中国の怖さといやらしさを忘れていたが、ようやく現実に気がついた」。長い歴史の中で、朝鮮半島が中国にいかに虐められてきたかを、彼は語った。
「韓国文化を中国が盗んだ!」
確かに、歴史を振り返れば朝鮮王朝の王様は、黄色い服の着用を禁止された。黄色は黄金を意味し、中国皇帝しか着用できなかったためだ。中国が日清戦争で敗北し、国名を大韓帝国に変更して初めて黄色い服を着た。この歴史は、朝鮮半島の人々の記憶遺産だ。
「その中国が韓服(ハンボク)を中国の文化であるかのように、オリンピックの開会式で世界に宣伝した、許せない」――との感情を韓国民は抑えられなかった。
北京冬季五輪の開会式で、その韓服を着た女性が他の少数民族と一緒に、中国国旗を掲揚するセレモニーに参加していたのである。中国としては、少数民族の朝鮮族を大事にしている事実を宣伝する目的で登場させたのだろうが、韓国民はそうは思わない。「韓国文化を、中国文化の一部だと世界に宣伝している」と捉えたのだ。
さらにスケート競技で、韓国選手が勝利したにもかかわらず、反則を理由に中国選手に優勝を奪われた。これに韓国世論は「不公正な中国」と激昂した。一般の国民からマスコミ、政治家までが「差別だ、韓国を見下している」と反発したのである。
一方、中国側も負けてはいない。中国メディアは韓国の怒りを「韓国人の劣等感に過ぎない」と反撃し、さらにはソウルの駐韓中国大使館も「参戦」、「一部韓国メディアと政治家が反中感情を煽っている」と批判した。
反日・反中は韓国の民族主義
かねて中国は、韓国の古代国家高句麗を中国の一部と主張し、韓国と対立してきた。そうした中で、中国ではキムチや韓服も中国文化と主張したから、韓国民はカンカンだ。一連の中国の主張を「文化帝国主義」や「中国のキムチ工程」「韓服工程」などと攻撃する言葉も生まれた。「工程」とは、「中国がキムチや韓服を韓国から奪い、我がものにしようとする作戦を実行中である」といった意味になる。
日本では、韓国は歴史的に中国の朝貢国だったから、中国と一緒になって反日運動をすると思いがちだが、これは間違いだ。韓国は、中国から2000年もの間、虐められた歴史がある。侵略も度重なった。王位や後継者の決定も、中国が介入した。
韓国と中国が対立し、左派政権が反日を煽る原因は、韓国と中国の「民族主義」(ナショナリズム)にあるのだが、当事者の韓国人と中国人、それに日本人もこれに気がついていない。
韓国の怒りは「正義」ではない
中韓両国民にナショナリズムが生まれるのは、戦後である。日本では、中韓のナショナリズムを評価する左翼の主張が強かった。ところが、民族主義は「創造の産物」であるとの政治理論が生まれた。アジア国家は現代化の過程で「想像の民族主義」を経て、近代国家に発展するとの政治学の理論である。いずれ日本のように民主主義国家に成熟すると、消滅する。
この理論は、世界的な政治学者ベネディクト・アンダーソン教授が著書の『想像の共同体』で明らかにした。朝鮮研究の学者たちは、この本を深く読んでいないようで、慶應大学系の学者たちは、文在寅政権の日韓対立を「正義の対立」と説明した。

早稲田大学系の研究者としては、この分析は学問的には間違いでいい加減、単なるマスコミ、世論向けの「スローガン」と指摘するしかない。もっとはっきり言えば、韓国左派の反日扇動を「正義」と弁護する屁理屈に過ぎない。
韓国と日本社会には「正義の概念」はない。正義とは、法に従った合法性か、「Justiceの概念」として示される。日本にも韓国にも、「法の支配」と「ジャスティス」の概念は希薄だ。とくに韓国には、「契約」「遵法」「法の正義」の概念は、根付いていない。日本と韓国に存在するのは、「儒教的正しさ」の意識でしかない。
それを、日韓における「正義」の概念規定もせずに、「正義の対立」とするのは、駆け出し記者の「見出し」作りの水準だ。学問研究の低さを笑われる。
中国への怒りは文政権への反発
アンダーソンの政治理論によれば、韓国と中国は近代国家に発展する過程の「想像の民族主義」の段階にある。民族主義は、全体主義国家や独裁国家に変化しがちだ。旧ソ連とナチス・ドイツ、一時期の昭和日本も「全体主義」だ。

全体主義国家と独裁国家は、言論の自由を認めず、国家と指導者を批判できない。民主主義でない。中国と北朝鮮はこの条件にぴったりなのに、日本では北朝鮮を全体主義、独裁国家と指摘する学者はごく少数だ。韓国の左派政権も、反日以外の主張を認めない「反日全体主義」だ。だから本来、日韓対立は「反日全体主義と民主主義の対立」と表現されるべきだ。
韓国民の「反中民族主義」は、文在寅政権の「中国に物を言えない」姿勢への反発でもある。政治学的には中韓対立は「想像の民族主義」の対立であり、大統領選挙を前にした国民の反発だ。政権交代に期待する国民感情の表明でもある。
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