ロシアのSWIFT排除、日本の保守層が強硬論を唱えるも、猫組長氏「大変やで」
中国はすでに「国内の独自システムをむしろプロモート」の指摘- ロシアに対する米欧の経済制裁として、SWIFTへの注目度が上昇
- SWIFTからの排除ならロシアの貿易決済に支障。保守派は強く推進
- これに対し、猫組長氏や専門家が冷静な見方を示すツイート。その理由は
ロシアのウクライナ侵攻に対する米欧の経済制裁として、国際銀行間の決済ネットワーク、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除するかを巡り、二転三転したことで、日本国内でも26日、SWIFTへの注目度が一気に上昇した。
SWIFTは、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの頭文字をとった略称。銀行が国境をまたいで行う送金や決済を行うネットワークを運営する非営利法人。本部はベルギーにあり、1973年に設立。日本は1981年から参加しており、現在まで世界中の4000を超える金融機関が利用している。
ロシアの銀行も利用しているが、仮にSWIFTから排除されればロシアの対外貿易の決済に大きな支障が生じると見られており、AFP通信によると、その経済的な大打撃について、フランスのルメール経済・財務相が「金融核兵器」と称しているほどだ。
しかし、それだけに報復のリスクも高く、「ロシアの有力議員らは、欧州向けの石油やガス、金属の輸出が止まることになると反発している」(米CNN)。案の定、EU内では、ロシアからの天然ガス輸入に依存してきたドイツを筆頭に、イタリア、オーストリア、ハンガリーがロシアのSWIFT排除に反対。イギリスやポーランド、バルト3国など強硬派との隔たりが大きく、この日は発動が見送られたと報じられた。
この外電に日本国内でも、特に保守層が失望や怒りの声をあげており、ジャーナリストの門田隆将氏はツイッターで「ドイツ、ハンガリー、イタリアの反対で見送り。元々、独メルケル氏がプーチンと手を結び、ウクライナのNATO入りを阻止した2008年が問題の始まり」などとドイツを厳しく批判し、続けて「中国の台湾侵略への障壁はなくなりつつある」と述べ、台湾情勢への影響を懸念。
決定的な“金融核兵器”「国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網からの排除」という制裁がドイツ、ハンガリー、イタリアの反対で見送り。元々、独メルケル氏がプーチンと手を結び、ウクライナのNATO入りを阻止した2008年が問題の始まり。中国の台湾侵略への障壁はなくなりつつある https://t.co/i46QH9fMEV
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) February 26, 2022
また元財務官僚の高橋洋一・元内閣官房参与も「結果としてエネルギー政策で失敗しロシアに首をつかまれたドイツが足を引っ張った」との見方を示した。
結果としてエネルギー政策で失敗しロシアに首をつかまれたドイツが足を引っ張った→SWIFT排除でEU分断 対ロシア制裁、エネルギー懸念が影 https://t.co/5bago4k6TL @afpbbcomより
— 高橋洋一(嘉悦大) (@YoichiTakahashi) February 26, 2022
一方、保守系のネット民も続々と門田氏らに同調するような意見を述べ、ネット世論がそうした流れに傾きかけた中、この日、冷静な見方を示し続けていたのが、国際金融に詳しい元経済ヤクザの作家、猫組長氏だ。
日本時間の深夜になり、今度は一転してロイターがユーロ圏の中央銀行幹部の話として、SWIFTからの排除が決定される見通しと速報で伝えると、「SWIFT本気でやる気か…ロシアも困るけどロシアと勘定ある国も大変やで」と指摘した。
SWIFT本気でやる気か…ロシアも困るけどロシアと勘定ある国も大変やで。
— 猫組長 (@nekokumicho) February 26, 2022
この日の昼、SWIFT排除が見送られるとの報道があった段階で、猫組長氏は「ロシアも中国もSWIFTに代わる自国のシステムは既に持ってるよ」と述べていた。
実際、SWIFTの影響力が過大評価され、中国についてはすでに距離を置きつつあった動きを専門家が指摘している。
アメリカ財務省の元幹部で、米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」上級研究員のブライアン・オトゥール氏は2020年9月、当時、ウイグルや香港で人権問題が深刻化していた中国のSWIFT排除について「神話を信じてはならない」との題で分析を披露。これによると、中国銀行がアメリカの制裁に備え、SWIFTから独自の国内システムに切り替えを進めていたものの、「本当の動機はSWIFTから切断されることを恐れているのではなく、国内の独自システムをむしろプロモートすることにあった」との見方を示していた。
プーチン大統領は今月8日、北京オリンピック開会式に合わせて習近平主席と首脳会談。ウクライナ侵攻を見越し、経済関係の強化を取り付けてきた可能性があることを考えれば、今後、ロシアと中国間で決済ネットワークを接続するなど、むしろ欧米に対抗する形で緊密に連携をとってくる可能性はある。
ヨーロッパ政治が専門の東野篤子・筑波大学准教授もツイッターで「SWIFT制裁の効果の即効性に過度に期待する声が高まっている様子なのも気がかりです」「たしかにSWIFT制裁はロシア経済に大きな打撃を与えるでしょうし、だからこそ期待もされるわけですが、 『SWIFT制裁実施→ロシアが即座に侵略戦争を中断』という展開にはおそらくなりません」などと懐疑的な見方を披露。
論点その2。SWIFT制裁の効果の即効性に過度に期待する声が高まっている様子なのも気がかりです。
たしかにSWIFT制裁はロシア経済に大きな打撃を与えるでしょうし、だからこそ期待もされるわけですが、
「SWIFT制裁実施→ロシアが即座に侵略戦争を中断」という展開にはおそらくなりません。— 東野篤子 Atsuko Higashino (@AtsukoHigashino) February 26, 2022
東野氏はなおもツイートを連投し「当たり前のようですが、SWIFT制裁であれなんであれ、効果が出るには時間が必要でし、実際の効果も事前には計り知れない部分もあります」「おそらく、「金融核兵器」という言葉が一定の印象を作り出している側面もありそうですが、 SWIFTだけでなく制裁全般に関し、地に足のついた議論をしたいものです」など、拙速な強硬論に異議を唱えていた。
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