ウクライナ報道で急浮上!「防衛研究所」の専門家としての存在感

専門家「国費有効活用オブザイヤー2022」
ライター/SAKISIRU編集部

湾岸戦争や米同時多発テロ、イラク戦争など歴史的な有事の際には、日本国内でもNHKも民放各局はこぞって特別番組を放送していた。しかし今回のロシアによるウクライナ侵略では地上波放送で特別番組はほとんど見当たらない。NHKが国連緊急特別会合さえ生中継しなかった際には、多くの国民の失望を買った。

そんな中、ツイッターなどのネット空間やネットメディア、インターネット放送番組が存在感を高めており、そこで専門家として脚光を浴び始めたのが防衛研究所の専門家たちだ。

防衛研究所ツイッターより

ここ数日のウクライナ情勢の報道で注目されたのが、同研究所地域研究部主任研究官の山添博史氏だ。文春オンラインの取材に応じた山添氏は、ウクライナ側の発表ではあるものの、ロシア側にも4300人の死者が出ている惨状について、「このリアリティと、ロシア国内でプーチンが述べている戦争目的とのギャップがありすぎて、勝てるようにやっているとはとても思えないんです」「指揮官として、軍隊にちゃんと正当性を与えていないというのがとても非合理です」などとプーチン氏の「非合理さ」を指摘した。

また、世界中が懸念しているプーチン氏の核使用の可能性について問われた山添氏は、次のように分析。

核を使用しても、その後ロシア軍自身がそこに入っていかなければならないので、核防護部隊が必要です。それが出てきた軍事演習はあるんですが、今回は、核防護装備を持った部隊というのはまだ聞いていないです。それを見せ始めたら、本気の狂気が始まる可能性が高くなります。

鋭く論理的な山添氏の分析にネットでは、「深く同意しました」「読みやすくまとまっていてわかりやすかった」「この記事はとても分かりやすい。話し手の研究、取材共に素晴らしい」などといった声が多数寄せられた。

山添氏のほかにも俊英揃いの防衛研。1日にはアベマTVの『ABEMA Prime』に研究員の長谷川雄之氏が出演し、ロシアの軍事侵攻には「苦戦の焦り」「権力維持の焦り」「レガシー達成の焦り」のプーチン氏の「3つの焦り」があると指摘し、プーチン氏の異様な判断を下した背景を分かりやすく解説した。

「ちゃんとした見解を情報空間上に流通」

こうした防衛研究所の活躍ぶりにはロシアや民間の軍事専門家も惜しみない賞賛を贈る。東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏はツイッター(アカウント名「丸の内OL(27)」で「研究所内のロシア専門家を軒並みメディアに出してちゃんとした見解を情報空間上に流通させている」と指摘。

また、軍事ライターの藤村純佳氏(アカウント名「むすた-M2U(料理女子)」)も「防衛研究所、国費有効活用オブザイヤー2022を貰ってもいいくらい世の中に長年の成果を還元して貢献してますよぬ」(原文ママ)とツイートした。

「選択と集中」の名のもと、さまざまな専門分野の研究が淘汰されつつある日本。コロナ禍では感染症の専門家不足が浮き彫りになったが、他の問題にも当てはまるのではないか。次世代メモリー「磁気記録式メモリー(MRAM)」の開発を手掛ける東北大教授の遠藤哲郎氏は1日付けの日本経済新聞のインタビューで、開発の経緯を次のように語っている。

「2000年ごろに記憶素子を積み重ねる研究を発表したが、当時は「学者のお遊び」と言われた。20年たった今、微細化による技術革新が停滞する半導体において、この技術は面積当たりの記憶容量を増やすうえで欠かせないものになった。」

もし、防衛研究所の予算が「選択と集中」で削られ、ロシアやウクライナの研究から手を引いてしまっていたら、今のように専門家による精緻な分析は聞かれなかったかもしれない。

日本にロシアやウクライナの専門家がいなければ、膨大な情報の中で、「何が本当で、何が嘘なのか」が分からなくなり、日本国民はパニック状態に陥っていた可能性もあるだろう。ロシアのウクライナへの軍事侵攻という未曽有の有事を機に、専門家の存在意義が改めて示された格好となった。

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