偽物?本物?河野太郎氏も注目するロシア情報機関分析官(?)の長文レポートが大反響

電撃戦の失敗、日露戦争との酷似性指摘...専門家も唸る「すごい連ツイ」
ライター/SAKISIRU編集部
  • 泥沼化するウクライナ戦線を緻密に分析したレポートが話題
  • ロシア情報機関FSB分析官が作成とされるが真偽は不明
  • 電撃戦の崩壊や今後の見立てに、プロも「説得力がある」と一目

ロシアがウクライナへ仕掛けた戦争は、ウクライナ側の決死の抵抗により、膠着状態が続いている。開戦から3日での首都・キエフの陥落を目論んでいたとみられるロシア側の当初の想定とは異なり泥沼化の様相を呈する中、あるレポートがネット上で話題となっている。

ferrantraite /iStock

真偽不明でもプロが注目

レポートは、ソ連時代の悪名高き諜報機関KGBの流れを汲むロシア連邦保安庁(FSB)のアナリストが執筆したものとの触れ込み。ウクライナ出身のレーシングドライバーで、日本で開催された「SUPER GT」の出場歴もある、イゴール・スシュコ氏が英語に翻訳した。この戦争については特に、フェイクニュースが蔓延っており、このレポートの真偽も今のところは不明と言わざるを得ないが、分析の中身にリアリティがあるために国際政治学者や政治家も一目置いているようだ。

スシュコ氏は、「My translation of the analysis of the current situation in Russia by an active FSB analyst.(FSBアナリストによるロシアの現在の状況の分析を私が翻訳したもの)」と切り出し、英語で2000ワードに上る長文を連続ツイートした。

このFSBアナリストはまず、ロシアが起こした戦争による影響は、世界中に食糧問題を巻き起こすと指摘している。

The Pandora’s Box is open – a real global horror will begin by the summer – global famine is inevitable as Russia and Ukraine are main producers of wheat.(パンドラの箱は開いた。本当の世界的な恐怖は夏までに始まる。ロシアとウクライナが小麦の主な生産者であるため、世界的な飢饉は避けられない

ロシアの戦況は芳しくないことを受けてか、軍事計画を策定するFSBに対する風当たりは日に日に強くなっているという。

We are being scolded for our analysis. Recently, we have been increasingly pressured to prepare more reports.(私たちは分析のために叱責を受けている。最近、私たちはより多くの報告書を作成するようにますます圧力をかけられている。

「私たちはより多くの報告書を作成するように」とは、ロシアに有利な報告書をでっち上げろという意味なのだろうか。

また、このFSBアナリストを含む、現場の人間は誰一人としてロシアが戦争を起こすことを知らされていなかったという。

Most importantly, no one knew that there will be such a war – it was concealed from everyone.(最も重要なことは、このような戦争が起こることを誰も知らなかったというこだ。それは誰からも隠されていた。

I don’t know who come up with the “Blitzkrieg of Ukraine.(誰が「ウクライナの電撃戦」を思いついたのか分からない

さらに、FSBアナリストは、現状の苦悩について例を挙げて詳細に説明する。

「For example – you are being asked to analyze various outcomes and consequences of a meteorite attack on Russia(たとえば、ロシアへの隕石攻撃のさまざまな結果と結果を分析するように求められている)」

「ロシアへの隕石攻撃」とは唐突な表現だが、レポートを英訳したスシュコ氏は、「Here he most likely means the West’s sanctions(おそらく西側の経済制裁を意味している)」と注釈を入れている。

FSBアナリストは、「the conclusions of the analysis must be positive for Russia(分析の結論はロシアにとって肯定的でなければならない)」としたうえで、そうでない場合は、「get interrogated(尋問される)」と綴っている。つまり、「西側の経済制裁はロシアに大した影響を及ぼさない」といった類のレポートでないと厳しく尋問されるということだろう。

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「我々の電撃戦は完全に崩壊した」

連続ツイートはやがて、この戦争の戦況分析に移る。

「Our Blitzkrieg has totally collapsed. It is impossible to complete the task: If Zelensky and his deputies were captured in the first 3 days, all key buildings also captured, and they were forced to read an address of their surrender to the country, then Ukraine’s resistance would have likely dissolved to a minimal level. Theoretically.(我々の電撃戦は完全に崩壊した。タスクを完了することは不可能だ。ゼレンスキーと彼の代理人が最初の3日間で捕らえ、すべての主要な建物も占拠し、彼らが屈辱的な降伏の約束をできたとしたら、ウクライナの抵抗はおそらく最小限のレベルで抑えられただろう。理論的には。)」

しかし、このFSBアナリストは、ゼレンスキー大統領が降伏したとしても意味はないと喝破する。

「If we remove Zelensky – fine – who is going to sign the agreement? If Zelensky signs, then that agreement is worthless after we remove him. ОПЗЖ (The Opposition Party in Ukraine collaborating with Russia) has refused to cooperate.(ゼレンスキーを排除したとして、それでは、合意にサインするのが誰だ?ゼレンスキーがサインしたとしても、その後にゼレンスキーを排除した場合、その合意は意味をなさない。親ロシア派のウクライナ野党でさえ、協力を拒否している)」

Now even we kill Zelensky or take him prisoner, nothing will change. The level of hate toward us is similar to Chechnya. And now, even those loyal to us in Ukraine are publicly against us. (今、私たちがゼレンスキーを殺したり、捕虜にしたりしても、何も変わらない。私たちに対する憎しみのレベルはチェチェンに似ている。そして今、ウクライナの親ロシア派の人々でさえ、公に私たちに反対している。)

チェチェンはソ連崩壊後にロシア連邦からの独立を求めて、当時のエリツィン大統領、そしてプーチン大統領を相手に、独立派の発表によると6万人の死者を出すほど凄惨な「チェチェン紛争」を戦ったが、敗北している。独立派勢力は2002年10月にモスクワ劇場占拠事件、2004年2月にはモスクワ地下鉄爆破テロを起こした。

ロシア軍の損害について、ウクライナ側の発表とロシア側の発表では大きく乖離しているが、このFSBアナリストは「I don’t know the reality – no one does.(実際の数は分からない。誰にも)」としたうえで、次のように綴っている。

There was some information the first 2 days, but now no one knows what is happening in Ukraine. We’ve lost contact with major divisions(最初の2日間はいくつかの情報があったが、今ではウクライナで何が起こっているのか誰にも分からない。主要部門との連絡が途絶えた。

Total dead is definitely in the thousands, maybe 10,000, maybe 5,000, or maybe just 2,000.(戦死者の合計数は1000人単位に上るだろう。あるいは1万人か、5千人か、2千人ですんでいるかもしれない

But probably closer to 10,000 Russian soldiers killed.(もしかしたら1万人近くかもしれない

ロシアはロシア軍の戦死者を498人(2日時点)と発表しているが、実数との大きな乖離がありそうだ。あるいは、連絡が途絶えたため、ロシア政府ですら正確な死者数を把握できていないか。

「我々の期限は6月だ」

また、ロシアの今回の戦争は日露戦争とよく似ていると指摘する。

“100% we’ve repeated our mistake from last century, when we decided to kick the “weak” Japan in order to achieve a quick victory, and it turned our army was in a state of total calamity.(我々は、前世紀の失敗を100%なぞっている。“弱い”日本を蹴散らして勝利すると決心したが、我々の軍はボロボロにされた

We are already in total mobilization mode. But we can’t remain in this mode for long, but our timetables are unknown, and it will only get worse. Governance always goes astray from mobilization. And just imagine: You can sprint 100m – but try that in a marathon.(我々は既に総動員体制だ。しかし、このような体制は長く続けられはしない。この戦争のスケジュールは不明だが、状況は悪化していくだけだ。国家を統治していくうえで、総動員体制は狂いを生じさせる。100メートルは全力疾走できるが、マラソンでそれを試してみるといい

Our conditional deadline is June. Conditional because in June there will be no economy left in Russia – there will be nothing left.(我々の期限は6月だ。6月には経済破綻し、ロシアには何もなくなる

KGB時代と同じ庁舎を使っている、モスクワ市内FSB本部(Alivago /iStock0

この一連の連続ツイートは、世界中からの大きな注目を浴びており、8日昼の時点で3.8万件のリツイート、10.5万件の「いいね!」を得た。日本でも多くの専門家や政治家から注目されている。

国際政治経済学で東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏は次のように引用ツイートした。

すごい連ツイ。ロシアの諜報機関のFSB分析官の書いたものを英訳したものだが、極めて詳細に現状を語っており、その見立ても説得力がある。ソレイマニが途中で出てくるのにもびっくりだが、この時期にはイランもロシアに情報提供していた。

BBC(英国放送協会)の特派員でキャスターの大井真理子氏も次のようにツイートしている。

すごすぎる連ツイ。ロシア連邦保安庁分析官が書いたと思われる現状。ウクライナ侵攻計画を知らされず、仮に欧米に攻撃(経済制裁)された場合のシナリオを書けと言われたので、仮説ならロシアに有利なレポートを書かないと怒られると思い、提出。実際に経済制裁を受けた今、シナリオと違うと責められていると。

外相や防衛相などを歴任した自民党の河野太郎衆院議員も「長〜いスレッドで信憑性は不明ですが、面白いです」とツイートした。

【おことわり】ロシアとウクライナの戦争に際しては両国が仕掛ける激しい情報戦が展開しており、ネット上にも真偽の確認が難しいものが散見されます。今回はネット上での反響が大きい話題があった事象として取り上げました。万一、事実関係に問題が生じた場合は、改めて続報にて紹介します。

 

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