「経団連は利益団体か、国の発展のために汗をかくか」南場智子副会長の存在感が急上昇

サラリーマン男社長ばかりの組織でレアな女性創業経営者

経団連が先週後半、「スタートアップ躍進ビジョン」を発表。昨年6月に副会長に就任してから「初仕事」として提言を取り仕切った南場智子氏(DeNA会長)が週末のネットでクローズアップされた。

提言では、設立10年未満で、株式の時価総額が1,000億円超えの「ユニコーン」企業がアメリカで120社を超えるのに対し、10社程度にとどまる日本の現状について、5年後を目標に10倍の約100社に増やすことや、その裾野となるスタートアップ企業数も現在の10倍の10万社、投資額も同じく10倍となる約10兆円規模に増やすことを掲げている。

具体的には、必要な施策として、起業や資金調達のしやすい環境づくり、規制改革の強化、大学を核とした起業のエコシステムづくり、人材の流動化の促進などを訴え、政府に対しては「司令塔」としてのスタートアップ庁創設も提言した。

ただ、南場氏は発表直後の報道内容に満足しなかったようで、翌日の12日、ツイッターに自らの想いを綴った文書の画像を投稿。報道では「スタートアップ庁がクローズアップされていますが、ニュアンスはだいぶ違う」と指摘した上で、「教育・税制・労働・規制改革・金融などさまざまな省庁の取り組みが必要であることから、省庁をまたがって、全体を強力に推進できる体制を政府に提言しました」と背景を説明。

さらに世間で思われる経団連のイメージについて「経団連はオールドエコノミー企業の利益団体か、それとも国の発展のために汗をかく団体か。外にいた時は期待も意識もしていなかったのですが」と、自らの体験を引き合いに踏み込んだ見解も披露。続けて「加入して1年弱、会長副会長の皆さんや事務局のメンバーが驚くほど前向きに議論を進めてくださり、これはひょっとして、と可能性を感じています」と思いを明かしていた。

このツイッターの投稿は週明け昼前時点で、2000の「いいね」が付く反響。元経産省で、現在はメルカリで政策企画を担当する吉川徳明氏は「南場さんの投稿に2,000近いいいねが付いていて、経団連の提言がソーシャルメディアでこんなにシェアされたこと、かつて無かったでしょうね。すごい変化だと思います」と驚いていた。

NTT出身の上場起業家、スペースマーケットの重松大輔CEOは「経団連の会長、副会長で創業者は南場さんだけで他はサラリーマン社長、男性、生え抜きばかり。役員の創業者率をせめて半分にすると劇的に起業促進への支援内容とかも変わる気がします。人材の流動性が鍵ですね!」と、日本企業のボトルネックの一つである経営人材の多様化の必要性を指摘。

プロ野球界では女性初の球団オーナーになった南場氏に、女性初の経団連会長への待望論が広がる可能性もあるが、ネットではそもそも経団連に対してシビアにみている人も少なくない。弁護士の荘司雅彦氏もNewsPickとツイッターで「大企業の集まりである経団連が、ユニコーンを増やすというのには何だか違和感があります。しかも、具体策がスタートアップ庁の設立を促すというのは、ポストを増やしたい政官の代言をしているようにしか思えません」と指摘。一般のネット民からも

南場さんの言いたいこともわかるんですけど、経団連の広告塔になっている感が否めないです。まず経団連みたいな既得権の塊にメスを入れるのが先では…

確かにビジョンは素晴らしかったけど、申し訳ないが経団連を簡単に信用していない。国に求められて出しただけで中身の具現化は進まないだろうし、これまでも改革を謳うだけ謳ってその結果は?

といった懐疑的な声も散見された。「初仕事」では経団連に対し、ネットで異例の注目を集めることに成功した南場氏だが、今後のお手並みとその成否が問われそうだ。

 

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