あのころ朝日新聞があった #2 東京五輪強行は「朝日脳」クラスター

ドツボにはまる五輪関係者
2021年05月20日 06:00
朝日新聞創業家
  • 朝日新聞創業家・村山氏が提唱する「朝日脳」思考。今回は五輪関係者を事例に
  • 「根拠なき楽観」など旧日本軍と類似。日本型エリートがドツボにハマるパターン
  • ついでに池江選手の問題も言及。「反対運動への参加」を求めた人たちは卑劣か

前回の記事で、新聞社と関係ないところにも「朝日脳」があるということを書きましたが、あちこちから「分かりにくい」とか「態度のでかい権力者はみんな『朝日脳』なのか」という反応がありました。もっともな話だと思います。

記事では例としては、旧日本軍やバブル期のことを書いたのですが、もともとその分野に興味のない方には、感覚的に理解しがたかったかもしれません。そこで、今回は旬の話題、東京オリンピックを例にして改めて説明してみます。

Ryosei Watanabe/iStock

日本型エリートがドツボにはまる典型

前回、「朝日脳」の簡略な定義?を書きましたが、もう少し詳しく「診断基準」に出来るぐらいの詳細版を出します。

自分達のやることはどんなに非常識でも、正義であり公共性があり万人が支持し絶対にうまくいくと、根拠も無くいつも思っている思考状態」。初出はアゴラです。

 

東京五輪関係者には、この基準が見事に当てはまる方が大勢おられ、旧日本軍との類似点もよく指摘されます。「根拠のない楽観」(ファクターXと神風)、「撤退の先送り」(開催1年延期とインパール作戦)、「リソース計算の欠如」(看護師500人急募と餓死多発)などがあります。

もう一つ、あまり誰も指摘しない(養老孟司氏ぐらいですか)ことを付け加えれば、「戦力の逐次投入」があります。緊急事態宣言を出すにしても、経済界に気を遣うあまり毎回簡単に解除してしまい、またピークがやってくるという次第です。

変異種の影響が大きい第4波は別として、第1波から第3波で、どんどんピークがでかくなるのは、ロックダウン(もどき)の不徹底が大きいのではないでしょうか。

また逆に、GoToのような経済振興策も、小出しにし(肝心の東京都は遅れた)たために大金をつぎ込んだ割には効果は小さく、旅行業界にいらぬ混乱を招いてしまいました。ガダルカナル戦とそっくりではありませんか。ガダルカナルをご存じない方でも、よかったら、ウィキペディアで軽くでもいいですから調べてみてください。日本型エリートがドツボにはまる時のパターンが、全然変化していないことがよくわかります。

五輪問題でのこうした症例の原因は、関係者の「朝日脳」であるというのが、今回私が主張したい点です。

代表例はバッハ会長です。“ぼったくり男爵”と呼ぶのが通例ですが私は支持しません。なぜならば、彼は男爵ではないからです…没落貴族の醜態と「朝日脳」とは別物ですから比喩としても不適切です。

昨年7月、大会1 年前イベントで勢揃いした小池氏、バッハ氏、安倍氏、森氏(官邸サイト)

バッハ氏の「朝日脳」症状は?

それはともかく、「朝日脳」の診断基準でみてみましょう。「東京オリンピック・パラリンピックの開催はどんなに非常識でも、正義であり公共性があり万人が支持し絶対にうまくいくと、根拠も無くいつも思っている」というのは見事に当てはまります。

「非常識」は医療関係者の間ではほとんど定説と化しています。バッハ氏はIOCのトップですから「正義」を主張するのは仕方ないとして、今の状況で公共性があると言えるのでしょうか。ほぼ確実なのは、強行開催の利益の総量よりは迷惑の総量の方があきらかに大きいことで、公共性というより公害性の問題です。

おそらく、万人が支持するより万人が反対する可能性の方が高い中での、挑発的なお花畑発言は、反対論をあえて黙殺しているというよりは、日本国民の反発が本当に見えていないからのようです。

「うまくい」ったかどうか…彼は、常識的な判断基準を受け入れる気など、最初からないでしょう。選手村で巨大クラスターが発生しようが、日本の医療崩壊が酷くなってコロナと関係ない死者まで激増しようが、無事に金メダルを全部分配できたら「成功であった。大きな犠牲を払った日本国民に感謝したい」と涼しい顔をして言える立場なのですから。少なくともそう考えていなかったら、事ここに及んでまでの強行突破はできないはずです。

この点では、バッハ氏ばかりでなく、令和のダメオヤジ氏も、“カイロの秘宝”緑の狸さんも、多かれ少なかれ同じ病状を示しています。「朝日脳」クラスターは一度出来てしまうと破局を迎えるまで誰にも止められません。さらに、同調圧力に弱いとか感情的決断がなぜか評価されるとかの基礎疾患があると重傷化しやすいのではないでしょうか。

池江選手の辞退論は卑劣か?

Murdock48/iStock

医療の話が出たついでに、「朝日脳」とはあまり関係ありませんが、池江選手の問題についても触れておきたいと思います。

彼女のツイッターに、「反対運動への参加」や「出場辞退」を求める書き込みが殺到したことに対して、それらを卑劣と糾弾して池江選手に同情する声がほとんどですが、私は以下の2つの理由で、そう一方的に断じるわけには行かないと思います。

まず、SNS上の公開アカウントでは、脅迫・罵倒やセクハラ・ストーカーの類は別にして、どんな投稿も言論の自由の範囲内と考えるべきです。ただし、それに対しては、多くの他の五輪候補者が恐らくやっているように、黙殺することもできます。「お気の毒ですが、五輪の実施については私には何の権限もありません。たとえ参加辞退をしても影響は皆無です」などと事実だけを述べて、冷たく突き放してもいいわけです。SNSとはそういう場所なのですから。

もう一つは、池江選手固有の特別な事情です。白血病からの奇跡的復活は、もちろん本人の驚異的な努力の賜物であることは間違いありませんが、その裏には、現代日本医療の成果があることもまた間違いありません。そして、そのためにはICUや無菌室をはじめとする充実した医療資源と、多数の医療者の尽力が必要であったということも事実です。

たいへん心苦しい話ですが、こうした大がかりな医療は、コロナのせいで日に日に実施が難しくなっています。たとえば、白血病と同種の病気である癌の手術延期が、日本中で発生しています。ICUが足りないのも大きな原因です。能力がありながら目の前の患者を救えない医師の辛さは、能力がありながらレースに出られない選手の辛さと同種のものではありませんか。

さらにもう一つ。池江選手を支えてきたのと同じ多くの医療者(もしかしたら彼女を治療した医師たち自身も)が、第4波の到来で心身とも、そろそろ限界に来ているはずです。

敢えて、こうした状況について選手本人の考えを尋ねることは、正当であり、いきなり卑劣と断じて糾弾されるべきものではありません。特に、医療資源不足で自分の臓器移植が延期された方や、最後のお別れもできずに大切な人を失った方、身近でこうした事例を見聞きした方が、現代医学の成果でもある「奇跡の復活」に対して複雑な感情を持ったとしても、とても非難する気にはなれません。

敢えて言いますが今回の騒動は、聡明(よほど賢くなければ五輪には出られません)な池江選手にとって、むしろ良かったようにも思われます。

スポーツは多くの絆や感動をもたらす一方、ひとつ計算が狂うと強烈な反発を呼ぶということを実感されたのは、将来指導者になられたときには大きな財産になるはずです。少なくとも、開催強行に突き進む某メダリストたちのような「重傷化朝日脳」を予防するワクチンには、なったのではないかと思います。

新旧のトップアスリートたちが、科学的事実と世論相手に空しい体当たりを繰り返す光景は、スポーツファンには耐えがたいものでしょう。

 

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