「本を出せば人生が変わる!」気鋭の論客 アトキンソン氏 プロデュース秘話
田村重信『政策現場発:型破りサラリーマン道』第2回- 大活躍のアトキンソン氏が世に出たきっかけ。転機となる著作プロデュース
- 本を作る過程で自らの考えをまとめられる。それがまま本人の実力”となる。
- これからの時代、「私はこうだ!」と伝えることにチャンスの芽がある。
政治評論家・田村重信氏の連載・第2回目。1回目では、政党職員という肩書ながら「おさかな天国」をプロデュースした逸話も驚きでしたが、田村氏のプロデュース力はそれだけにとどまりません。 今をときめく気鋭の論客 デービッド・アトキンソン氏の数々の著作プロデュースも手掛けてきたそうなのです。知見と人脈をフル活用し、多くの人のチャンスの芽を繋いできた田村氏がみなさんにお勧めするのは「本を書くこと」だといいます--。
アトキンソン氏に本を出すことを勧める
これまでに50冊以上の本を出してきた私は、本を出すことが人生を変える力を持っていることを知っています。その一例をあげましょう。あの“観光立国論”を唱えて政府の成長戦略会議にもなって大活躍しているエコノミスト、デービッド・アトキンソン氏に本を出すように勧めたのも、実は私なのです。
その縁もあって、私が「本を出せば人生が変わる!」(内外出版)という本を出した時には、アトキンソン氏が帯を書いてくれました。「私のベストセラー『観光立国論』『新・所得倍増論』『生産性革命』は、田村重信氏のプロデュースで生まれました。この本は、きっと読者の将来に変化をもたらします!!」と。
彼と出会ったきっかっけは、知人のビジネスマンの紹介でした。「田村さんと合いそうな人がいるから、是非紹介したい」というのです。知人は、私が日本をもっと良くするために日々活動していることを知っていたのですが、彼はそんな私と話が合いそうだというのです。
早速、アトキンソン氏に会って話してみると、確かに気が合いました。彼は、日本の立場というものをよく理解したうえで、改善すべき問題点やその具体策にいたるまで、興味深い話をしてくれたのです。
彼は特に、東日本大震災後の東北の状態を心配していました。実は岩手県は日本一の漆の生産地なのですが、当時の日本の神社は改修する際、日本の漆を使わずに、安い中国産の漆を使っていたのです。日本の漆が使われなければ、日本独自の伝統産業の技術が廃れてしまう。アトキンソン氏は、そこを危惧していたのでした。
小西芸術工藝社という神社仏閣を修復する伝統企業を事業承継をしていたアトキンソン氏は、大分の宇佐神宮の改修に、日本の漆を使えるようにしたいというのです。そうだ、大分なら地元を選挙区とする岩屋毅衆議院議員だとおもい、二人を引き合わせてみると岩屋氏もアトキンソン氏の想いに共鳴し、その後、修復作業に日本の漆を使おうとする流れがつくられたのです。
アトキンソン氏と話をしていると、彼の日本の現状を危惧する洞察力や斬新な解決策を、もっと多くの人が知るべきだと思いました。そして、私は彼に本を出すことを勧めたのです。しかし当初、彼は逡巡しました。
「私も過去に一冊本を出しているのですが、日本語で本を一冊書くのは大変だったのですよ」というのです。彼は、過去に日本の不良債権に関する名著を一冊出していましたが、母国語でない日本語を使いながら、自ら書く作業というのが本当に大変だったというのです。
大切なのはメッセージ
「そんなのは簡単だよ。優秀なライターを紹介するから」私はそういって、彼に口述筆記を勧めました。アトキンソンさんが日本語で話し、それを手練のライターがまとめるという手法です。忙しい経営者が本を出すときに、こうした手法をとるのは一般的なことです。大切なのはメッセージ。大切なことは、より多くの人に伝えることが何より大事なのです。
まず手始めに出したのが講談社でした。『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』という新書を出したのです。この本は、前述の日本の漆への想いを中心に書いたものです。大変好評だったので、すぐ続編を出す流れになりました。アトキンソンさんの問題意識の良さに気づいたライターが、東洋経済でも本格的な経済政策の提言本を出そうと企画して『新・観光立国論』を出版するに至ったのです。“イギリス人アナリストが提言する21世紀の所得倍増計画”との副題もついたこの本は、あっという間に世の中の話題を呼んで、彼は名誉ある山本七平賞を受賞するまでになったのです。それからのアトキンソン氏の大活躍ぶりは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。彼の強い想いが本になり、それが日本政府の目玉政策として姿を変えて、これからの日本の主要戦略として大きく影響を与えるまでに至ったのです。
「本を出せば人生が変わる!」理由
本を出すと人生が変わるーー。アトキンソン氏が大成功を収めたのはもちろん、彼自身がアナリストとして客観的なデータをもとに卓越した分析眼を持っているゆえではあります。でも、彼のような類まれな人でないとしても、本を出すことは誰にとっても素晴らしいことだと思います。
たとえば、先日出したばかりの本に『敬天愛人と仲間たち』(内外出版)という本がありますが、この本は25人が分担して書いて一冊の本としてまとめたものです。この本の著者のひとりである作曲家の笠間千保子さんは「本を出すことで人生が変わった」という一人なのです。
「最初、7000字ほどの原稿を担当しないか?という話をいただいたのですが、書くことなんて全くの門外漢。自信も無いから断りました。でも一晩寝たあとに、“これはひょっとしたらチャンスなのかもしれない”と思って、引き受けることにしたんです。内容は普段自分が思っているようなことだったのですが、出来た本をSNSで告知してみると、急に私をみる周りの目が変わり始めたのです。作曲だけでなく、文章でも表現できる人なのだと一目置かれるようになったのです。以降、不思議なことに毎日のように仕事の依頼が舞い込むようになりました。先日も時代劇ドラマの主題歌の作曲の仕事が舞い込んできました。ドラマの主題歌を担当できるなんて、それまでの私には夢のような話です。まさに本を出したことで、私の人生が変わりはじめたのです」(笠間千保子さんの本人談)
どんなものであれ、名前をだして本を出す以上、責任が伴います。そのためには自らの考えを振り返らざるを得ない。書くことで、自らの考えをまとめる事ができる。書く過程がそのまま、あなたの実力になるのです。これからの時代は、どんな仕事をしていたとしても、この先どうなるかなんてわからない。そんなとき、“私はこうだ!”という自らの想いと、持てる能力を本で表現する。そこには、人生を変える“芽”がひそんでいるのです。
おしらせ:本文中にも登場する、田村重信さんがプロデュースした最新刊『敬天愛人と仲間たち』(内外出版)発売中です。
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