プーチンが握った「極超音速兵器」、アメリカも対処できない恐怖の性能とは
【連載】フジテレビ最強の軍事記者に聞く「今そこにある危機」#1- ロシアのウクライナ侵攻で高まる安全保障議論。フジテレビ軍事記者に聞く
- 最近の報道で出てくる「極超音速兵器」とは何か?崩れる「恐怖の均衡」
- 「極超音速兵器」の位置付けを含め、ロシアのウクライナ侵攻の判断の背景は?
ロシアは3月19日、「極超音速ミサイル・キンジャール」を前日に実戦で使用したと発表した(参照:FNNプライムオンライン)。一部の専門家で懐疑的な見方もあるが、仮に確認されれば史上初の実戦使用となる。

「極超音速兵器」とは一体どのようなものなのか。今回のロシアのウクライナ侵攻で、日本の安全保障議論も高まっているが、安全保障の議論をするには、本来、歴史はもちろん、国際情勢、国際法、国際政治の論理などに加え、各国の軍事力や装備品・兵器に関する知識を把握していなければ始まらない。中でも手薄になりがちなのがミサイルなど各国兵器の開発状況や性能への理解だ。
1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材するなど安全保障関係の取材に長く携わり、軍事専門誌・雑誌への寄稿を多く手掛ける、フジテレビ報道局上席解説委員の能勢伸之さんに「極超音速ミサイルの最前線」について聞いた。(収録は2月末に行いました)
「西側のミサイル防衛を突破」露兵器の性能
――ロシアのウクライナ侵攻が始まってしまいました。ロシアは演習の段階から、キンジャールという軍用機から発射する極超音速ミサイルの発射演習を実施していたと報じられています。

【能勢】はい。キンジャールは空中発射型の極超音速ミサイルで、2019年3月までに12回の発射試験を実施しています。射程は2000キロから3000キロ程度と言われています。アメリカをはじめ、西側諸国はまだ極超音速ミサイルを迎撃する手段も、対抗手段もない状態にあります。つまりロシアの極超音速ミサイルは、西側の弾道ミサイル防衛を突破できる性能があるということです。
――アメリカを含む西側はロシアの極超音速ミサイルに対する防衛も出来なければ、同じ極超音速兵器という対抗手段もなく、それ以外の「抑止力」で抑えるしかない状態にある。このことは能勢さんのご著書『極超音速ミサイルが揺さぶる「恐怖の均衡」』(扶桑社新書)や『極超音速ミサイル入門』(イカロス出版)で知り、大変驚きました。
【能勢】これは極超音速ミサイルができてから初めて出現した状況です。そのため、本ではこの「極超音速ミサイル」の出現で、「不安定ながらも核兵器とそれを管理する国家間の枠組みが保ってきた『恐怖の均衡』が、極超音速兵器の出現で揺るがされているのではないか」と提起しています。
迎撃できない極超音速兵器
――通常、弾道ミサイルは山なりに飛んで落ちてくるので、落下点が予測できる。それゆえに迎撃することが可能だったのですが、極超音速ミサイルはそうではないんですか。
【能勢】弾道ミサイル防衛というのは、通常、ミサイルが発射された直後からセンサーで追いかけ、軌道をコンピューターで計算し、どう飛んでどこに落下するかを予測します。したがって、その予測できるところに向けて迎撃ミサイルを撃てばよかった。

一方、極超音速ミサイルは弾道弾などのロケット部分を利用して打ち上げられ、切り離された弾頭部分がマッハ5以上、時にはマッハ27程度で飛んでいきます。レーダーが捕捉するのが難しい程、低く飛ぶこともあり、さらに弾頭部分は飛行中、自由に動くことができるため、どこへ飛んでいくかを事前に予測することは不可能です。そのため、現在の迎撃システムで撃ち落とすことは、まず不可能なのです。
野球に例えれば、弾道ミサイルは剛速球ではありますが、キャッチャーミットめがけて飛んでくるのである程度、打ち返すことができます。しかし極超音速ミサイルは、ピッチャーの手を離れたあと、どう変化し、どこに到達するかわかりません。しかも剛速球であることに変わりはないんです。
――日本でも「極超音速ミサイル」の名前は報じられてはいます。しかしこれまでのミサイル防衛が無効化されるとなると、かなりの脅威ですが、その割にあまり騒がれていないような?
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