「合格おめでとう 次は東大」私立中入学後も課金?想定外の出費が生まれる構造
教育費の「価格」と「価値」を考える- 難関私立中に合格しても、最近は入学後すぐに名門大学めざして塾通い
- 我が子の中学受験を経験して「想定外」の出費が発生する理由に納得
- 大学入学までどうやりくり?教育費を考えるときに大切な軸とは?
こんにちは、ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタントの八木陽子です。
「合格おめでとう 次は東大」
毎年、最難関校の入学説明会で配布されている、鉄緑会のチラシの言葉です。鉄緑会とは、現役東大生や東大卒業生が中心となって中高校生を教え、東大進学率が抜群といわれる塾です。入塾できる資格は、鉄緑会が指定する、御三家を中心とした難関校に所属している生徒。中学受験の勉強をくぐり抜けて難関校に合格しても、入学早々に、校門の前でチラシが配布されます。次なる目標に向けてレールが敷かれているというわけです。
その鉄緑会の入塾者は年々増加傾向で、今年は800人が申し込んだというニュースが流れました。もちろん、進学校の新入生を対象としているのは鉄緑会のみならず、他の塾も多数あります。中学受験が終わっても、さらに塾通いが続く……。そんな子供たちが増えているのかもしれません。同じ中学校の子供たちが塾に行くのなら、我が家も…。「うちの子も遅れをとりたくない」という親心は当然あるでしょう。

だから中学受験は「想定外」の出費が発生
少し話が変わりますが、娘が中学受験の勉強をスタートする前まで、私自身、家計相談をお受けするときに、不思議だったことがあります。「受験の最後の1年間、家庭教師のお金がかさんでしまった」というお話です。高所得ではない場合、「すでに塾に通っていたのに、どうして、そんなに気やすく、家庭教師を頼んだのだろう?」「個別指導の併用は本当に必要だったのか?」という疑問がありました。しかし、すでに使ってしまったお金を嘆いていても始まりません。将来の資産形成についてご相談に来ているのに、終了した受験のお金をあれこれ詮索するよりも、これからの家計改善のためにできる話を中心としていました。
それが、自分の子が中学受験をしたことで、妙に納得感が生まれたのです。なぜなら、塾の授業だけではどうしても解決できない瞬間があります。解き方が分からず、つまずくことがあります。そのとき、小学生はまだ幼いため、「自分で“解説”等を読んで解決する」という作業自体が困難なのです。そこは高校や大学受験の子供と異なるように感じました。
日本語の読解力がまだ育ち切れてないため、分からない箇所は親が教えるのか、塾の先生に教えてもらうのか。ただし、働く親は忙しいし、大手塾の先生には毎度毎度質問にしにくい…となると、家庭教師や個別指導塾を頼るのが、合理的な選択肢に思えたのです。金銭の負担を除いての話ですが。
そして、このような家庭教師の費用や、冒頭のような合格後のさらなる塾費用といったお金は、子供の状況や進路先の環境にもよるため、前もって金額を見積りしづらいものです。
私立中入学後、大学入学までどうやりくり?
ただし気になることとして、現在は、首都圏においては、中学受験は、一部の富裕層のものではなく、一般化しつつあります。「家庭教師」や「入学後のさらなる塾代」等は、ご家庭によっては想定外の費用になる上に、大学入学まで長く発生する可能性もあります。選択の仕方では、家計に占める教育費の割合があっという間に増加します。教育費の貯めどころやメリハリをつけづらくなっているのではと思います。

特に、私立中学校の3年間は、家計から教育費を捻出するふんばりどきかもしれません。
高等学校は就学支援金制度があり、大学は奨学金があります。高等学校は無償化の動きがあり、国からの支援(高等学校就学支援金)は、私立進学の場合所得に応じて増加されます。
それに加えて、自治体の支援制度もあります。東京都の場合、年収目安910万円以下という所得制限はありますが、私立高等学校の就学支援は進んでいます。国と東京都とあわせて、年間最大46万7000円という金額が受けられます。近年、私立に進学したものの、コロナ禍で家計が急変して苦しいという話を聞きますが、私立高等学校の場合は、こうした支援制度を活用できます。
(参照ページ)
・文部科学省 高等学校就学支援金
・東京都 私学財団 私立高等学校等授業料軽減助成金事業
ただし、これらは主に高校生のご家庭に向けてです。
では、負担増となりがちな中学受験と私立中学進学の教育費を考えるときに、大切なことは何でしょうか。何のために受験するのか、何のための教育費なのか、という自分の軸を持っていることだと思います。
教育費の価値をどこに見出すか?
当たり前ですが、「価格」と「価値」は違います。教育費も同じです。教育の難しくも面白いところは、お金をかけたからといって、最終的に立派な社会人になるわけではないのです。多数の教育費の選択肢がある中、周りに流されずに、ご家庭にとって「価値」あるお金の使い方なのかと、時に立ち止まることです。
と言いつつも、実は、我が家も揺れに揺れ、迷走しました。小学生が詰め込み勉強の生活になる、海外では塾など存在しない、従来の“お勉強”を続けても日本社会がよくなっている気がしない……などの理由で、中学受験に懐疑的な気持ちの日もありました。
そしてこれからも、教育費のかけどころを悩みつつ選択していくと思います。ただ、そのときになるべく周りに流されずに選択していけたらと考えています。
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