ゼレンスキー大統領を“操る”のは誰か?注目の日本国国会でのオンライン演説

公開情報で日刊ゲンダイよりもう少し掘ってみると...
  • 演説や演出が巧みなゼレンスキー大統領のブレーンは?日本でも関心
  • 米新興政治メディアが迫真の取材。ウクライナと縁のある弁護士らの存在
  • 米では外国政府のロビイストの透明化。日本からも見ることは可能

ウクライナのゼレンスキー大統領の日本の国会でのオンライン演説があす23日に迫った。先週16日のアメリカ連邦議会では、動画も活用するなどオンライン演説の巧みな演出ぶりが注目され、日本のSNSでも「戦争広告代理店が暗躍しているのか?」といった警戒論も少しずつだが出始めている。

アメリカ議会の議員らにオンラインで演説するゼレンスキー氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

米新興政治メディアが迫真の取材

そうした中で、日刊ゲンダイがドイツ連邦議会での演説直後の17日、『ゼレンスキー大統領“感動演説”の裏に「戦争広告代理店」の影…日本では何を話すのか?』と題した記事を掲載し、配信先のヤフーニュースでも「演出が過剰」「ゼレンスキーが何を考えているか冷静に考えたほうがいい」といったコメントが書き込まれていた。

ところが肝心の記事の中身はといえば、タイトルで「戦争広告代理店」を掲げたものの、代理店の具体的な名前らしきものは皆無。根拠といえば、大手広告代理店出身という左翼作家が「欧米の著名な“戦争広告代理店”がプロパガンダに協力しているはず」という憶測コメントだけしかなく、期待外れだった。

しかし調査報道の本場、アメリカでは新興メディアでも日本の左翼大衆紙よりはるかに精度の高い取材力を見せつける。米政界の専門メディア、ポリティコは17日(現地時間)、「ウクライナのPRマシンの背後にあるインフルエンサー」と題した記事を掲載し、ウクライナ政府がアメリカ政府に対する影響力を行使しようと、アメリカ国内で雇ったロビイストやPR会社、元同国政府関係者をどう動員してきたのか、生々しい実情の一端を掘り起こしている。

ウクライナとゆかりのある弁護士

マック氏(事務所HPより)

ポリティコによれば、ゼレンスキー氏の顧問を務めているのが、アンドリュー・マック氏。首都ワシントンDCにもオフィスを構えるウクライナ発祥の弁護士事務所のパートナー弁護士の1人だ。

事務所の公式サイトによれば、国際法務ランキングで、同事務所はウクライナで「年間最優秀法律事務所」に選出。キエフ、ワシントンDC、ブリュッセル、ロンドンに事務所があり、米国とウクライナの間を結ぶ国際的な取引などに付随する法務に対応している。アメリカ国内で、ウクライナにとってロシアが脅威であるとの認識を広めるために尽力するなどしてきたという。

マック氏は取材に対し、ウクライナ問題に関わるのは同国人を親に持つ自身の個人的な問題として報酬を受け取っていないと釈明しているが、アメリカ政府関係者は、同氏がゼレンスキー大統領の影響力行使の原動力ではないかと疑っているという。実際、これまで報道関係者にゼレンスキー氏への取材をプロモートしていたことが明らかになっている。

他にもウクライナ側の“エージェント”として、オバマ政権の対露政策顧問やロシア大使を歴任した政治学者のマイケル・マクフォール氏(現スタンフォード大学教授)が挙げられるほか、ロビイング会社とPR会社の名前がそれぞれウクライナを代表するエネルギー企業から受注していたことも指摘している。マクフォール氏は米3大ネットワークの一つ、NBCの解説者も務めており、ウクライナ政府側と番組プロデューサーとの関係構築を支援していることを認めた。

ポリティコはこうした「ウクライナのPRネットワーク」の開戦後の成果として、ドイツとロシアを結ぶパイプライン「ノルドストリーム2」の運営会社への制裁や、ロシアから米国への石油、ガス、エネルギーの全面的な禁止を実現したことなどを挙げている。

日本の政治家は踊らされるのか

外国政府からの“ロビー戦場”でもある米連邦議会(ajansen /iStock)

残念なことに、ポリティコも一連の各国議会へのオンライン演説にこれらのエージェントが関わっているかまでは掘りきれていない。

ただ、アメリカでは外国代理人登録法(FARA)などの法規制により、外国政府の代理人を務める個人や法人は、クライアントとの関係や活動内容、また領収書をもとに売り上げの報告を義務付けている点が日本と大きく異なる。いわば日本の政治資金収支報告書のようなある程度の透明性を、外国政府のロビイストにも求めているわけだ。弁護士のマック氏は以前からゼレンスキー氏の代理人として登録しているという。

おおよその契約関係の情報は日本からもネットで見ることは可能だ。憶測コメントを載せるので手一杯だった日刊ゲンダイは、FARAなどの制度を知らなかったと見られるが、米政府公式のFARAサイトで毎年報告される定期レポートの2019年版によれば、今回名前のあがったロビイング会社は、ウクライナ政府から日本円で約3300万で契約、パイプライン事業に関するロビイング活動に従事していた。

一方、PR会社はこの時はウクライナとの契約関係は確認できなかったものの、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)からの仕事を請け負い、それぞれ日本円で約4000万、約2800万の支払いを報告。れっきとした外国政府の御用聞きとして実績抜群のようだ。

これまでゼレンスキー氏の各国のオンライン演説に当たっては、こうしたプロが相手国の情勢認識だけでなく歴史認識に至るまで綿密に分析し、メッセージを設計している可能性は高い。アメリカ議会での演説で真珠湾攻撃を引用したことが、日本では不評だったが、どのように“刺さる”メッセージを打ち出してくるのか。誰がブレーンを務めているのかも含めて、日本からも警戒半分、関心が高まりそうだ。

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