プーチンの大量破壊兵器投入、国際社会がエスカレーションを止める3つのポイント
【連載】開戦1か月、元自衛隊情報幹部が戦略面を徹底解剖(後編)- 元自衛隊情報幹部の鈴木氏による徹底解剖、後編
- 大量破壊兵器投入も辞さないプーチンの行動理念はギャングに等しい
- エスカレーション阻止へ、各国政府がプーチンとどう交渉していくべきか
今後懸念されるのは、この戦況を打開するために、ロシア軍がABC(核・生物・化学)兵器を限定的に使用する可能性であり、米国はすでにBC(生物・化学)兵器については、その兆候があるとしている。

ギャングに等しいプーチンの行動理念
ロシア軍のウクライナ侵攻当初もそうであったように、バイデン大統領が「その兆候がある」の述べているのは、そのような機密情報を掴んでいるということであり、もしロシアがそれを使用した場合には、必ずその証拠に基づいて「大量破壊兵器の使用を認定する」という意味である。
当然、プーチン大統領もこれには気付いていると思われるが、それでもなお、国際社会からさらに厳しい非難と制裁を受けることを承知でこのような兵器に手を出そうとしているのはなぜかといえば、それは、ウクライナ政権や軍、そしてウクライナの国民に対して、極めて大きな心理的なダメージを加えられると信じているからである。
この、プーチン大統領の行動理念は、「ギャングや暴力団の行動理念に等しい」と考えれば理解しやすいだろう。つまり、「この相手は何をするか分からない。目的のためには手段を選ばない」と思わせ、実際に一部それを実行して見せることで相手を支配しようと目論むものである。
そもそも、今回ウクライナへ侵攻したこと自体がこのような理念に基づくものであり、キエフを包囲してもゼレンスキー大統領が屈服せず、かといってキエフ市内に突入して大統領府を制圧するのが困難であることが判ってきたので、仕方なくエスカレーション・ラダーを上げようとしているのだ。
では、このような状況をどう切り抜ければ良いのだろうか。
ロシアのエスカレーションを阻止するには
結論を言えば、プーチン大統領に、「ABC兵器を使用しても目的は果たせそうにない。ここは交渉によって一旦停戦を成立させ、長期において目的を果たせればよい」と判断させることだ。このために必要なことは、暴力団への対応と同様に、①相手の脅しに決して屈しないこと、②力による対応では目的を果たせないとさとらせること、③必要以上に追い詰めない(逃げ道を作為する)こと、である。

具体的にいえば、①については、センセーショナルに報じられている第3次世界大戦や核戦争という事態に、いたずらに脅えないことである。
交渉を長引かせて次の手を考えているプーチン大統領は、決して狂ってなどいない。冷静な判断ができると考えられる。したがって、米軍を始めとするNATO軍は、レッドラインを明確にし、「一線を越えれば座視しない。被害がウクライナ周辺国にも及ぶようなABC兵器を使用すれば、必ず軍事的対応をする」と明言してその準備を進めるべきであろう。
現時点でウクライナに侵攻しているロシア軍にNATO軍が攻勢をかければ、ロシア軍はとても耐えられないだろう。それはロシア側も十分認識していることは間違いない。今、このタイミングで米国などがロシアに対して一定の軍事的圧力をかける行動こそが、交渉を加速させることに繋がると筆者は考えている。
②については、前述の行動をとった場合、プーチン大統領は、「米軍などがウクライナのロシア軍に攻撃を仕掛けた場合、戦略核兵器の使用もあり得る」と脅してくるだろう。その際は、バイデン大統領が「一発でも戦略核兵器を使用すれば、その日のうちにロシアという国は消えてなくなるだろう」と、トランプ大統領が北朝鮮に対して言い放ったように、掛け合いで負けないことだ。
そして、③については、前述の①や②の手段と並行して、第3国を交えた外交手段を駆使し、プーチン大統領がどの線まで譲歩できるのかを探り、ウクライナを支援することによって早期に停戦の実現を目指すことこそが、最終的に現状を打開する糸口につながるということは言うまでもないだろう。
停戦交渉が成立しても、その際の条件をロシアがその後守るかどうかは疑わしいが、いったん戦闘停止命令が出れば、ロシア軍の士気は一気に緩み、将兵の戦意は失われるであろう。
そして、時間が経つにつれ、今回の戦争の悲惨さとその結果による負の遺産の余りの大きさにロシアの大多数の国民が気付いた時、プーチン大統領の時代が終わるのではないだろうか。
(終わり)
関連記事
編集部おすすめ
ランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
松野疑惑だけではない…朝日新聞が岸田首相の喉元に突きつけそうな「もう1枚の刃」
ミツカン訴訟で元婿無念の一審敗訴、報道は“東スポだけ”大スポンサーの隠然たる存在感
娘婿を「種馬扱い」…ミツカン会長夫妻、父子引き離し事件訴訟で法廷尋問へ
ミツカン父子引き離し事件:辣腕弁護士が尋問で暴いた創業家会長の傲慢
ミツカン父子引き離し事件、「子どもを連れ去った者勝ち」の日本は、子供の権利条約違反だ
「生物兵器製造に転用できる」…機械輸出で逮捕も「起訴取り消し」の理由とは
「#金井米穀店を守れ」がトレンド入り。「騒動の現場」吉祥寺の店舗を訪ねた
元プロ棋士 橋本崇載容疑者逮捕で、共同親権反対派が暴力性強調するも「印象操作」の非難続出
「ドドーン!」台湾軍の砲音届く与那国島で「シェルター建設構想」浮上
東芝は「日本企業」なのか?買収劇で覚えた違和感
ミツカン訴訟で元婿無念の一審敗訴、報道は“東スポだけ”大スポンサーの隠然たる存在感
娘婿を「種馬扱い」…ミツカン会長夫妻、父子引き離し事件訴訟で法廷尋問へ
なぜ社会から嫌われ者の「たばこ」の増税を許してはならないのか
松野疑惑だけではない…朝日新聞が岸田首相の喉元に突きつけそうな「もう1枚の刃」
ミツカン父子引き離し事件、「子どもを連れ去った者勝ち」の日本は、子供の権利条約違反だ
陰謀論者が招き入れる「新しい戦前」、跋扈するマルクス・レーニン主義の亡霊
ミツカン父子引き離し事件:辣腕弁護士が尋問で暴いた創業家会長の傲慢
江東区長選が10倍おもしろくなるウラ事情…実は「2位争い」が重要なワケ
ビットコインの生みの親、サトシ・ナカモトの正体がついに判明 !?
ロシアの日本人63人“出禁リスト”、笑えるところと笑えないところ
ミツカン訴訟で元婿無念の一審敗訴、報道は“東スポだけ”大スポンサーの隠然たる存在感
ビットコインの生みの親、サトシ・ナカモトの正体がついに判明 !?
安芸高田市長にヤッシーが喝!田中康夫氏「やり方が下手っぴ。頭でっかちな偏差値坊や」
娘婿を「種馬扱い」…ミツカン会長夫妻、父子引き離し事件訴訟で法廷尋問へ
陰謀論者が招き入れる「新しい戦前」、跋扈するマルクス・レーニン主義の亡霊
「#金井米穀店を守れ」がトレンド入り。「騒動の現場」吉祥寺の店舗を訪ねた
SAKISIRU、24年1月から不定期掲載になります
赤石千衣子氏は法制審委員に適格か?“ブライダルまさこ”の道義的責任は?
臨時特番ウェビナー企画「創価学会・池田大作名誉会⻑死去、政界地殻変動か」
東京23区の格差がネットで話題、1位の港区と23位の区の差は半世紀で倍に拡大
特集アーカイブ
人気コメント記事ランキング
- 週間
- 月間