北のミサイル発射、PR動画で「煽動」〜 日本メディアの大騒ぎに金正恩「計画通り」
ウクライナ戦争でのバイデンの出方に「大喜び」- 北のミサイル発射の狙いは?ウクライナ戦争で得た「教訓」と「確信」
- 北朝鮮の煽動に乗せられた朝日新聞。「大騒ぎせず冷静に対応すべき」と重村氏
- 問題は、北朝鮮制裁をどう強化するか。日本にできることは…
北朝鮮はICBM(大陸間弾道弾)発射の翌3月25日、バイデン政権をからかう「短編映像」を放映した。金正恩総書記がサングラス姿で、ハリウッド映画の主役よろしく、ICBM発射場を多数の兵士と横並びで歩く姿を、国内向けにテレビで放映した。
普段の金正恩よりも「本人」が軽やかに歩くこの映像を、韓国当局は「サングラス姿の時の金正恩と兵士は俳優ではないか」「他にもフェイク映像が挿入されているのでは」と見ているようだ。いずれにしろ、北朝鮮のプロパガンダ・宣伝でしかなく、騙されてはいけない。
北朝鮮が得た「教訓」と「確信」
北朝鮮は3月24日に、ICBM「火星17号」の発射実験に成功した。この発射は、プーチンのウクライナ戦争への側面支援であり、映像は「2正面(ロシアと北朝鮮)戦争はできないだろう」とアメリカをからかうものだ。また、直前に失敗した偵察衛星発射の爆発を平壌市民が目にしたので、その信頼回復のための発射だったとの事情は、誰も指摘していない。
北朝鮮は2022年1月以来、11回15発のミサイルを発射し、早くも昨年1年間の発射回数を軽くオーバーした。大学教授や専門家は、米国への交渉呼びかけと分析し、今も「交渉を進めようとしないアメリカを強く牽制か」などと語っているが、これは間違いだ。以前の記事でも指摘したように、当初こそ中国向けの「支援要求」だった可能性はあるが、その後の「大量発射」の背景には、ウクライナ戦争におけるロシア支援と、彼らなりの分析がある。
分析とは何か。金正恩総書記は、ウクライナ戦争で、バイデン大統領が「米軍を派遣しない」と述べたのを「米国の弱体化」とみて、ミサイル実験を繰り返しても発射場や核施設への軍事行動はない、と判断したのだ。「実験するなら今だ」とバイデン発言に金正恩は大喜びしたことだろう。
北朝鮮はまた、プーチンの戦争から①ウクライナは核を持たないからロシアに侵攻された②ロシアは核兵器を持つからNATO(北大西洋条約機構)は軍事介入できない――との教訓を得た。核とミサイルを放棄しない自らの戦略の正しさを、改めて確認した。
また、ウクライナ戦争と米中対立で、中露からの外交・経済支援を期待している。現に中国とロシアは、3月25日の国連安保理会合で「対北制裁の緩和」を求めた。中露朝の連携した動きだ。
トランプが残した教訓は生かされず

北朝鮮がICBM発射と核実験を「一時停止」していたのは、2017年に当時のトランプ大統領が習近平主席を通じ「これ以上やると軍事攻撃する」と脅したからだ。金正恩総書記は2018年の初めに「核ミサイルの完成」を宣言し、核とミサイル実験の「終了」を表明した。この米朝交渉は「ミサイル実験場と核施設への軍事攻撃を表明しない限り、北朝鮮は実験をやめない」との教訓を残したが、バイデン政権はそれに学ばなかった。
「労働新聞」は25日、金正恩総書記が「米帝国主義者とその追随集団の軍事的虚勢を完全に崩す」と述べたと報じた。しかも「米帝国主義」の言葉を3回も繰り返した。北朝鮮は2018年以後、「米帝国主義」の発言をやめていたが、今回の「米帝国主義」復活で、米朝関係はトランプ政権以前の状態に戻ったことになる。
北朝鮮の煽動に乗せられた朝日新聞
ロシアのウクライナ侵略後、北朝鮮のミサイル発射は5回目となる。今回までは、メディアはウクライナ戦争報道に忙しく、北朝鮮ミサイル発射は以前よりは扱いは小さかった。これはいい傾向で、大騒ぎすればするほど北朝鮮を喜ばせるだけで、宣伝工作に利用されることは目に見えていた。
ところが今回は大騒ぎしている。朝日新聞は3月26日の朝刊一面トップ記事で、「北朝鮮、自制宣言を破棄」と報じた。これはICBMの発射が2017年以来であることに基づいての指摘だが、実際には「それがどうした」と言うべきで、「自制破棄」の方針はすでに明らかにしており、少なくとも2月27日の「弾道ミサイルに装着した偵察衛星」発射実験時点で、すでに「自制破棄」が確認されている。
朝日のこの見出しは、危機を煽り、日本の譲歩を誘導する扇動工作が得意な北朝鮮の「宣伝に乗せられた」と批判されても仕方がない。

核・ミサイル開発の「動機」を見誤るな
ミサイル連発に危機を覚える向きは多いが、北朝鮮の日本攻撃は、99%ないと言っていい。1%は、在日米軍に対するミサイル攻撃だ。確かに在日の評論家は、反日感情があるから日本を攻めると間違った解説をしており、「ミサイルの照準は日本だ」との発言もあった。だが冷静に考えてほしい。
なぜ日本への全面攻撃はないのか。北朝鮮には日本を占領できる兵器も部隊もない。日本に上陸できる兵員を送る船すらない。全面戦争を継続できる石油もない。もし、在日米軍基地をミサイル攻撃すれば、自衛隊と米軍が北朝鮮を総攻撃するため、北朝鮮という国家が消えてなくなる。日本を核攻撃すれば、米国が北朝鮮を核攻撃することになり、文字通り北朝鮮は壊滅する。
北朝鮮がミサイルと核を開発をするのは、ひとえに金日成一族が北朝鮮を支配する体制を維持するためだ。そのため、米軍が体制崩壊を狙い攻撃してくると国民に思い込ませ、米国の攻撃を阻止するとの建前で、軍事国家を維持している。米国を「敵視政策」と攻撃するが、そんな政策はなく、北朝鮮こそ外に敵を作ることで体制を維持している。その敵に実際に攻撃を加えて反撃されれば、体制を維持することは難しくなる。
当然、北朝鮮は、米国への核攻撃はできない。自殺行為であり、反撃されて北朝鮮が消え去る。今回、核を手放したウクライナがロシアから攻撃を受けたように、核がなければ米国に攻撃されるかもしれない。そうならないようにするため、あるいは攻撃を受けた際に反撃するために保有しているのだ。これが現実的リアリティである。

現状認識を誤らせる「思い込み」
危機管理の視点からは、北朝鮮ミサイルに大騒ぎせず冷静に対応すべきだ。
危機管理とは、想定外を想定することであり、危険負担は想定内の準備をすることだ。そのため、現時点で99%ないとは言っても、「北朝鮮が日本を軍事攻撃する」という想定外の事態への準備は必要だ。日本は何もしなくていいわけではない。最悪の場合の防衛準備をするのは、国防の任に当たる政治の使命だからだ。
だが、政治家や指導者は、「最悪の事態が確実に起こる」と思い込んではいけない。思い込みが深まれば、現状認識を誤るからだ。冷静に現状を分析しながら、最悪の事態にも備えるというリアリティこそが、政治には求められる。
大事なのは「北朝鮮への制裁強化」
問題は、北朝鮮制裁をどう強化するかだ。すでに、制裁は限界に達しており、「石油の全面禁輸」は残されているが中露が反対するだろう。「日本にできるのは、朝鮮総連議長の捜査・拘束」だ、との声が総連関係者からも聞かれる。総連議長の違法行為は、在日商工人から多くの告発があったが、自民党政治家の妨害で実現しなかった経緯がある。
総連議長の捜査・拘束には、北朝鮮が反発すると思われがちだが、平壌は総連議長の「退職」に苦慮しており、日本の捜査機関による逮捕を歓迎する面もある。多くの在日も総連議長には失望し、排除できない平壌指導部への不信を強めている。平壌と在日、日本政府にとって最良の策は総連議長の捜査・拘束で、「制裁強化」の名目にもなる。
そうでなければ、制裁を強化しながらも拉致問題解決のために日朝正常化を実現して対話のルートを確保し、核問題解決につなげる方法だが、これには米国の同意が不可欠だ。
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