自民党がWEB3.0時代の新戦略案を発表、税制改正でNFTビジネスの成長を促す
「実際に収益が発生した時点で課税を」- 自民党のNFT政策検討PTが、WEB3.0時代の戦略案発表
- キャッシュになる前の段階で課税する現行税制について「見直しを」
- 消費者保護や著作権上の問題点にも言及
自民党デジタル社会推進本部 NFT政策検討プロジェクトチーム(PT)は、3月30日、「NFTホワイトペーパー(案)~ Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略 ~」を取りまとめた。
「今のままでは…」強い危機感示す
「Web3.0(ウェブスリー)時代の到来は日本にとって大きなチャンス。しかし今のままでは必ず乗り遅れる」と、強い危機感から始まるホワイトペーパーは、次の6つのテーマに沿った24の論点についての提言を取りまとめたもの。
- Web3.0時代を見据えた国家戦略の策定・推進体制の構築
- NFTビジネス発展に必要な施策
- コンテンツホルダーの権利保護に必要な施策
- 利用者保護に必要な施策
- ブロックチェーンエコシステムの健全な育成に必要な施策
- 社会的法益の保護に必要な施策
WEB3.0企業の成長を阻む税制上の問題点
日本でWEB3.0企業が育ちにくいことの理由の一つに、日本の税制がある。同PT座長の自民党の平将明衆院議員は、今年2月に行われた衆議院内閣委員会で日本の税制の問題点を次のように述べていた。
「暗号資産のベンチャーがトークンを発行した時にガバナンストークン(運営方針などを決める際の発言権を表したトークン)をある程度持っていないと、経営の主導権を握れない。日本では、キャッシュになっていないにも関わらず時価評価で課税される。この課税があるから、ブロックチェーン界隈のスタートアップや技術者は日本で創業できない」
ホワイトペーパーでも、現在の税制の問題点を「自社発行の保有トークンに対する時価評価課税の負担が非常に重く、ビジネスの海外流出の要因に」と指摘。
実際に、日本の税制を理由に有力なスタートアップが既に国外に流出している。分散型台帳を相互に接続してデータのやり取りをする「パブリック・ブロックチェーン」を開発するステイクテクノロジーズは日本で起業したが、日本の税制の壁に阻まれ昨年、日本法人を清算し拠点をシンガポールに移した。同社最高経営責任者(CEO)の渡辺創太氏はツイッターで、日本の税制の問題点を訴えている。
このタイミングだからこそ言いますが、Astarは本当は日本でローンチしたかった。日本の暗号資産税制は変えないといけない。ここが重点課題。もしAstarを日本で12月ローンチしてたら来季、300億円くらいの税金になる。現金ないので税制で会社が潰れます。業界全員で働きかけてここを変えていきましょう
このタイミングだからこそ言いますが、Astarは本当は日本でローンチしたかった。日本の暗号資産税制は変えないといけない。ここが重点課題。もしAstarを日本で12月ローンチしてたら来季、300億円くらいの税金になる。現金ないので税制で会社が潰れます。業界全員で働きかけてここを変えていきましょう
— 渡辺創太 Astar Founder (@Sota_Web3) January 18, 2022
ホワイトペーパーでは、こうした税制の問題点や課題について、次のように提言した。
発行した法人が自ら保有するトークンは、期末時価評価の対象から除外し、実際に収益が発生した時点で課税するよう税制改正や取り扱いの見直しを行うべき。
消費者保護や著作権上の問題点にも言及
NFTに詳しい弁護士などからは、現在の法律では消費者の権利が守られていると言い難いとの指摘も出ている。現行の法律では、「第三者に対して権利侵害が主張できない」「出品されたプラットフォームでしか転売できない場合もある」といった課題があるという。ホワイトペーパーでは、そうした消費者保護に関しての問題点にも触れられている。
たとえば、「一般消費者にとって、NFTの取得によりどのような権利や法的地位を獲得できるのかがわかりにくい」という問題には、「NFT取引を類型化し、標準的な取引の内容を分かりやすく示すべき。また、民間において取引内容を分かりやすく示す仕組みの構築を検討しており、政府としてもこうした取り組みを促すべき」と提言。
「ブロックチェーン上にコンテンツデータは保存されておらず、NFTを保有していても、そのNFTが表章するコンテンツデータを喪失するリスクがある」という問題点には、「当面は、一般消費者に当該リスクを説明するよう、業界団体にガイドラインによるルール化等を促すべき。将来的には、特定の事業者に依存しないデータ保存の仕組みの活用を研究すべき」と提言されている。
著作権保護についても専門家から課題が指摘されている。この点について、ホワイトペーパーでは「特徴的な外観の量産品を模倣したデジタルデータがNFT化されても、著作権や意匠権によって十分に保護されない」といった問題点が指摘された。これに対する提言は「著作権・不正競争防止法等による対策の限界を整理しつつ、将来的には意匠権改正による手当の可能性を検討すべき。また、この問題について国際的な議論をリードすべき」というものだった。
平井議員「責任あるイノベーション推進」
自民党デジタル社会推進本部の平井卓也本部長は、公式ブログで次のようにコメントし、強い決意を表明した。
新しい産業や技術に関する政策遂行には多くの不確実性を伴いますが、政治の責任でリスクを正確に見積もり、ゼロリスクでなくても前に進む覚悟で、web3.0時代の責任あるイノベーションを推進していかなければなりません。
平井本部長のブログによれば、このホワイトペーパーを叩き台に今後、政府に提出する最終形に向けて広く意見を求め議論していくという。
なお、今回のホワイトペーパーに関しての意見は広く一般からも募っており、平議員の公式ホームページ「お問合せフォーム」から送ることができる。
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