「異色」中国版ウィズコロナ論とは? “上海の尾身さん”が語っていた現場のリアル

国際都市・上海では欧米的な考えが受容されやすい?
ライター/SAKISIRU編集部
  • ロックダウンが続く中国・上海で、「上海の尾身さん」がウィズコロナ論を示唆
  • ゼロコロナと同じぐらい「日常生活の維持」も重要と説明
  • 国際都市・上海で欧米的なウィズコロナ論が浮上するのは当然の流れか

コロナ感染者が急増しロックダウンが続いている中国・上海では、実はウィズコロナへの模索が始まっていた矢先に中央政府から通達が入り、ゼロコロナ路線を堅持することになったと見られている。

中国では異例のウィズコロナを提唱して注目されたのが、上海市のコロナ専門家チームのトップで、復旦大学付属華山医院感染科主任の張文宏(ジャン・ウェンホン)氏だ。どのような人物なのか。なぜ上海市は「異例」のウィズコロナを打ち出せたのか。現地在住経験のある筆者の見方も交えて考えたい。

張文宏氏(2020年撮影、写真:アフロ)

「コロナに打ち勝つのは難しい」

張氏はSNSでもウィズコロナの考えを広めようとしていた。3月24日午前3時過ぎにSNS「微博(ウェイボー)」でウィズコロナをある程度容認する考え方を表明し、注目を集めた。張文宏氏は、いわば“上海の尾身さん”と言うべき立場。微博(ウェイボー)では、

コロナは恐ろしいものではないが、打ち勝つのはとても難しい。現実は残酷なものだ。この数日、上海はコロナ発生以降、もっとも困難な局面にある。感染者数は昨年の予想超えており、医療資源も突然に逼迫し始めた。

と書き始め、1つ目のポイントとして「将来のコロナ対策は、どのモデルを採用すべきか」を説明。

都市の経済活動を止めることなくコロナ抑え込むには、データに基づいて政策を調整していく必要がある。当面は、陽性者をふるいにかけ、重点地区を封鎖し、感染の連鎖を断ち切ることだ。

などと述べた。ウィズコロナを視野に入れるべきと示唆しているように見える。

続いて、「国家衛生健康委員会によるPCR検査の指針が、変わりつつある」と指摘し、

「計画区域内でのPCR検査の対象者について、国の指針が『全員』から『区域』へと変更になった」

エリア全体の経済生活を止めて全員を検査するモデルは、徐々に変わりつつある

などと述べ、国の施策も変化しつつあるとの見解を示していた。

3つ目のポイントとして、中国が採用している不活化ワクチンについても、3回接種することで高齢者の死亡率を下げられると香港大学が発表したと説明。最後に4つ目のポイントとして「今後は通常の生活を維持することが、ゼロコロナと同じぐらい重要になる」と指摘した。

「日常生活を犠牲にしてでもウイルスをやっつけようと考えるのは、無理がある。コロナを抑え込みながら、人々の生活や医療システムを保障しなくてはならない。中小企業の倒産も避けなくてはいけない。上海でコロナを防ぐことができれば、今後はこうしたことが重要になってくる。コロナとの戦いは終わらないが、生活はずっと続いていくのだ」

と言い、ゼロコロナ政策だけでは限界に達しつつあるとの見解を示した。

中国版ウィズコロナ道半ばで挫折

ロックダウンが延長された上海。写真は4/6、現地のPCR検査場の様子(AFP/アフロ)

実際、上海では当初、全面的に都市を閉鎖するゼロコロナではなく、封鎖地域を最小限にして市民生活や経済への影響を極力抑えようとした。しかし、この中国版ウィズコロナへの挑戦は長くは続かなかった。4月上旬、国務院(中央政府)から孫春蘭副首相が上海市を訪れて、習近平総書記の強い懸念を伝えた。報道されているように、ゼロコロナを堅持するよう通達があったとみられている。

ところで、なぜ中国では異色とも言えるゼロコロナの試みが上海から出てきたのだろうか。

1969年生まれの張氏は、香港大学やハーバード大学、シカゴ州立大学などで研究や仕事をしていた経験もあり、20〜30代の若い頃に海外生活を送っている。世代的には、冷戦が終わり改革開放がようやく軌道に乗り始めた90年代前半に、社会に出ている。

上海は戦前は欧米列強が租界を設置し、現在も多くの外国人が居住しており、その数は80万人とも言われている。中国大陸のなかではもっとも国際的な都市であり、海外の文化や考え方が比較的入りやすい地域と言える。上海でウィズコロナ論が浮上してきたのは、こうした歴史的背景も関係しているのではないだろうか。上海以外の都市では、ウィズコロナは語られにくかっただろう。

欧米各国がウィズコロナへと方針を転換するなか、国際都市・上海でウィズコロナ論が語られるのは、当然の流れだったのかもしれない。

ライター/SAKISIRU編集部

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