「心身の苦痛」があればすべて「いじめ」で良いのか?いじめ防止法の問題点とは
【連載:前編】弁護士は「かえって生じた混乱」指摘- 町田小6いじめ自殺の取材中、いじめ防止対策推進法の問題を聞く
- 詳しい弁護士から、「いじめの定義が広範すぎる」などの指摘
- 被害側が「心身の苦痛」を感じれば全て「いじめ」の定義に?
「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」--。これは祝日法で定める、きょう「こどもの日」の意義だ。GW後半を飾るおめでたい日ではあるが、その一方で教育や学校の問題を考える貴重な機会でもある。

“町田”で浮かぶ「いじめ防止法」の問題点
SAKISIRUは今年に入り、東京都町田市で小学6年の女子児童が自殺した問題を巡り、これまでマスコミで報道されてきたこととは別角度から取材・報道してきた。
その中で当事者や専門家を取材するうちに浮かび上がってきたのが、現行のいじめ防止対策推進法(以下、「いじめ防止法」)の問題点だ。同法は2013年、超党派による議員立法で制定されたが、教育現場の運用の難しさ、制度的な歪みも指摘されているのを知った。そこで同法の問題点に詳しい村山裕弁護士(東京弁護士会)に話を聞いた。村山氏は、日弁連子どもの権利委員会で、いじめ問題対策のPT座長を務めている。

いじめの「定義」が広すぎる
村山氏が真っ先に挙げたのは「いじめの定義が広範すぎる」という点だ。
現行法のいじめの定義は2条で定められており、被害側が「心身の苦痛」を感じればいじめとなる。学校が対応しないケースを防ぐために非常に広い定義が使われています。一方、4条ではいじめの禁止が盛り込まれており、いじめをした側が悪者扱いされるようになってしまったのです。
いじめを許さないという理念が先行した結果、現実から乖離してしまった。
2条と4条がセットになることで、子どもの日常的な接触であったり、成長の過程で生じる衝突なども「いじめ」と定義されるようになってしまいました。
村山氏の指摘を少し噛み砕いてみる。ここでいじめ防止法2条を確認したい。「いじめ」を次のように定義されている。
(定義)
第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
人間社会で心身の苦痛ゼロはあるのか?
法律を字義通りに解釈すると、
「いじめ」=「心理的又は物理的な影響を与える行為」によって「心身の苦痛を感じているもの」
となる。一方、4条によっていじめは「行ってはならない」と禁止されている。
(いじめの禁止)
第四条 児童等は、いじめを行ってはならない。
学校生活を送る上で、すべての児童や生徒の「心身の苦痛がゼロ」を維持するのは、確かにほぼ不可能と言える。村山弁護士は、極端な例として次のようなケースを提示する。
法律上は、掃除をサボっている同級生を軽く注意する程度でも、いじめになってしまう。
村山氏だけではなく、いじめ防止法について長年危惧してきた別の弁護士も
いじめ行為は不作為も含むとされています。人間社会において心身の苦痛を感じさせることがまったくない状態というのは概念上考えにくいため、現実的には毎日数えきれないほどの「いじめ」が成立することになります。
と指摘する。一般的な感覚で「いじめ」と言えば、ニュースで報じられるような凄惨な暴力や嫌がらせ、精神的に激しいダメージを与えるものを想起する。だが、法律上は該当児童が「心身の苦痛」を感じていればいじめと認定されるため、かえって混乱が生じてしまっているというわけだ。
(後編に続く)
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