「宙に浮く尖閣寄付金14億円」読売報道に、猪瀬氏が「歴代政権の責任」と猛反論

「石原・猪瀬のせいにするのは本末転倒」
ライター/SAKISIRU編集部

今年2月に亡くなった石原慎太郎氏が東京都知事時代、都による尖閣諸島(沖縄県石垣市)の購入計画を発表してから17日で10年が経った。読売新聞は節目となった同日、『宙に浮く尖閣寄付金14億円…猪瀬直樹氏「実務の話を詰めず、石原さんがぶち上げた」』という見出しの記事を配信した。

読売記事では、2012年から2013年の間に尖閣諸島購入のために寄せられた寄付金14億円超が未だに使われていない現状を伝えたものの、当時、副知事として計画を主導した猪瀬直樹氏は18日未明、ネットで読売記事に反論する一幕があった。

猪瀬直樹氏(昨年4月の取材時、撮影:武藤裕樹)

猪瀬氏「石原・猪瀬のせいは本末転倒」

記事では、石原氏のほか猪瀬氏の「実務の話を詰めないまま、石原さんがぶち上げた」というコメントも使われているが、猪瀬氏はこの記事に対して、自身のフェイスブックを更新し、「 『実務の話を詰めずに』は問題提起としてぶち上げるときにはあたりまえ」との見解を示した上で、次のように反論を続けた。

この記事の見出し(注・「宙に浮く尖閣寄付金14億円」)からしてもそうだが、国有地化を放置したままの政府の責任を問わず、石原・猪瀬のせいにするのは本末転倒も甚だしい

2012年4月に石原氏が尖閣諸島の東京都による購入計画を発表したことに中国は猛反発。中国の反発を和らげ「平穏かつ安定的な維持管理」することを目的に、2012年9月、当時の民主党政権(野田政権)は尖閣諸島の国有化を決めた経緯がある。

中国海警船は毎日のように接続水域内に侵入

国が国有化を発表した2012年9月以降、中国海警船による尖閣諸島周辺海域への侵入件数は“高止まり”が続いている。海上保安庁によれば、2012年8月まで領海内に侵入した、ひと月あたりの中国海警船の数はほぼ0だった。接続水域に広げてみても、ひと月あたり数件程度だった。

ところが、2012年9月以降は激増している。確認される数は月によってバラつきがあるものの、たとえば、2013年8月に領海内に侵入した中国海警船の数は28に上る。接続水域内で確認された中国海警船の数は毎月平均100隻ほどで、2016年8月には147件を記録した。第11管区海上保安本部(那覇市)によると、2020年に尖閣諸島の接続水域内で中国海警船が確認されたのは計333日で、2021年も332日だった。

毎日のように接続水域に中国海警船が侵入しているにも関わらず、政府は慎重姿勢を崩していない。「Sankei biz」が昨年9月15日に配信した記事によれば、国会議員らでつくる安全保障議員協議会(会長・久間章生元防衛相)が、尖閣諸島をドローンで空撮する計画を進めているのに対し、内閣官房の職員は「政府方針として尖閣への上陸は禁止しています。だからといって接近していいと言っているわけではありません」と述べたという。

魚釣島(内閣官房HPより)

今年9月で国有化から10年

れっきとした日本の領土であるにも関わらず、上陸はおろか接近することもまかりならんということだ。こうした政府の姿勢に猪瀬氏はフェイスブックで、自民党の政権復帰後も含めて国の対応について次のように喝破する。

「13年3月には条例を整備し、使途を『国による尖閣諸島活用の取り組み』と定めた」とあるように僕の都知事在任中にきちんと後始末を決めている。それを実行に移していないのは歴代政権(安倍政権を含む)の責任である。

昨年10月14日に行われた記者会見で、岸田首相は次のように述べている。

中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領とも電話会談を行い、尖閣諸島をめぐる情勢あるいは平和条約締結問題などについて、主張すべきは主張し、こうした諸懸案に取り組んでいくための第一歩を踏み出しました。

国が尖閣諸島の国有化を表明してから今年9月で10年を迎えるが、それまでに政府は何らかの「実行」に移すだろうか。そしてその時、宙に浮いた形の14億円超に上る寄付金はどのように活用されるのだろうか。

 
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