元テレ朝アナ・富川氏の“ジャーナリスト宣言”が報道関係者に波紋

4月にトヨタに転身、企業所属のジャーナリストの是非

3月でテレビ朝日を退社し、トヨタ自動車に転職した富川悠太・元アナウンサーが「4月より新天地、トヨタ自動車株式会社の所属ジャーナリストとして新たな一歩を踏み出しました」と決意表明したことが、報道関係者に波紋を広げている。

富川悠太氏の新会社「オフィス・プレンティージャパン」サイトより

富川氏は今月11日、自らのマネジメント業務を行う会社を設立し、新会社の公式サイトをローンチ。挨拶文の冒頭で「私儀  このたび、23年間勤務した株式会社テレビ朝日を退社致しました。在職中においては公私ともに格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」と改めてテレ朝退社を報告。そして今後について

4月より新天地、トヨタ自動車株式会社の所属ジャーナリストとして新たな一歩を踏み出しました。これまでの現場経験を生かした「本当のこと」への追求と挑戦を続けていく覚悟です。

とコメントしている。

しかしこの“ジャーナリスト宣言”が物議を醸し始めている。

富川氏はテレ朝ではアナウンサー職としての勤務。報道ステーションでメインキャスターを務める前は現場リポーターを務めることはあったものの、これまで公表している経歴などからは、政治部や社会部など報道局の記者として取材活動はしていなかったと見られているためだ。

富川氏を巡っては3月上旬に退社を発表し、トヨタへの異例の転職が一部で報道されてから報道関係者の間にさざ波が走ったが、デイリースポーツが20日、新サイトのローンチと“ジャーナリスト宣言”を報道したことで波紋をさらに広げつつある。

元朝日新聞記者で、現在はフリーの宮崎園子氏はツイッターに「ずーっと考えていたけど、ますます『ジャーナリスト」「ジャーナリズム』ってなんなんだろう、って考え込んだ」と困惑する想いを綴った。

また週刊ダイヤモンド岡田悟記者は「『トヨタ自動車株式会社の所属ジャーナリスト』という概念は存在しないと思います。吉野家所属記者とか」と皮肉まじりに評した。

ジャーナリストは明確に定義されているわけではないが、辞書では「ジャーナリズムに関係をもつ人。新聞・雑誌などの編集者・記者など」(デジタル大辞泉=小学館)と解説される。なお、ここでいう「ジャーナリズム」について同じ辞書では

新聞・雑誌・ラジオ・テレビなどにより、時事的な問題の報道・解説・批評などを伝達する活動の総称。また、その機関。

としており、この字義に合わせればテレ朝時代の富川氏の役割は記者経験はなくてもキャスターとして「時事的な問題の報道・解説・批評をするジャーナリズムの関係者」であることには違いない。トヨタ入社で同社のメディア、トヨタイムズの動画番組でキャスターとして時事の話題を伝えるかもしれないが、トヨタイムズは同社の広報戦略に基づいて発信される情報であるため、報道か宣伝かという選択肢になれば後者の部類に入るのは確かだ。

元週刊文春記者で、現在はフリーの赤石晋一郎氏は「企業所属のジャーナリストという肩書きについて、広報だろと批判の声が上がっているよう」と騒動を俯瞰した上で、「まぁ、新聞テレビで会社員のままジャーナリストを名乗ってるかたも多い訳で。シガラミないジャーナリストの方が少数な気がしやす。肩書き云々ではなく、何をするかが問われるのだろう」と冷静な見方を示していた。

【関連記事】元テレ朝、富川氏の“ジャーナリスト宣言”、悪いのはトヨタの常識外れの野望

 

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