ロッテ清田はタイガー・ウッズと同じ?球団は医学的アプローチを
個人的責任より組織的解決の段階- ロッテ清田選手の度重なる不倫スキャンダル。個人の問題に終始する風潮に違和感
- 球団の不手際もあるが、謹慎処分解除直後の不祥事は異様では?依存症の疑いも
- WHOが近年、強迫的性行動症を認定。診断など球団はアプローチを変えるべき
プロ野球・千葉ロッテの清田育宏選手が度重なる不倫スキャンダルを起こして、ここ数日のSNSが荒れに荒れている。筆者は読売新聞時代、球団の番記者として清田選手を取材したことがあり、昨年の不祥事は残念でならなかったが、謹慎明け早々に起こした今回の問題をみていると、清田選手ひとりに責めを負わせるには、違和感を覚えはじめている。
今回の騒動に至る経緯
清田選手の醜聞報道は6年前にもあったが、とくに騒動が大きくなったのは今年1月のフライデーの報道だった。清田選手は妻子がいるが、昨年9月の札幌遠征の際に女性と密会。これだけなら、よくある有名人の不倫騒ぎに過ぎないが、この札幌遠征でチーム内で清田選手を含む8人が新型コロナに集団感染し、その時の本人の対応が問題を大きくした。
清田選手は球団の調査に対し「部外者との会食はしていない」と虚偽の報告をしたばかりか、密会相手の女性もコロナに感染すると不倫の発覚を恐れて病院に行かないほしいと“隠蔽工作”をしたことが発覚。チームは、このとき視野に入っていたリーグ優勝を逃したこともあってファンの怒りが爆発。球団は本人とすでに2年契約をかわした後だったが、フライデー報道を受けて無期限の謹慎処分にしていた。
清田選手の謹慎処分は、反省の態度をみて5月1日付で解除されたが、その2週間も経たないうちにまたも別の女性と密会しているところを、フライデーに撮られた。その様子が今週後半に報道されてから、ロッテファンを中心にSNSの騒動が再燃しているという次第だ。
球団の管理問題も問われる
筆者が、清田選手のことを取材したのはルーキー時代に過ぎない。いまや彼は35歳のベテランになり、野球の現場を離れた筆者は彼の後輩選手の半分は顔と名前を一致しないほど事情に疎い。しかし、旧知の球界関係者から久々に連絡がきて今回の騒動に関する意見交換をするうちに、ヒートアップするファンたちがあまり指摘しない問題に気づいた。
これは他球団で重役をつとめた人の意見だが、清田選手自身の甘さがあることもさりながら、球団フロントの危機管理が機能していたのか疑義が強いということだ。振り返れば、昨年10月に球団が集団感染を発表した際、球団本部長は当初、選手が外食に行っていなかったとの見解を示していたが、夕刊フジや週刊新潮の報道で異なる事実が判明。夕刊フジからはロッテが他球団と異なり、会食人数の制限もしていなかったことが指摘されるなど対応のまずさが浮き彫りになった。こうしたチームの運営環境が、実績のある選手を甘やかしてはいなかっただろうか。
そして、もうひとつファンはもちろん球界関係者も指摘しない問題がある。常識的に考えて、選手生命にかかわる不祥事を起こし、謹慎処分が解けたばかりの局面で同じ過ちを繰り返す清田選手の行動や心理について、なぜ誰も「異変」を感じないのだろうか。ある種の「依存症」ではないかと疑い始めている。
もちろん筆者は医師ではないので軽々に断言をするつもりはない。筆者はいまの野球の現場のことも知らないが、ひとつだけ野球記者たちにない経験を述べさせてもらうと、アゴラの編集長時代に依存症に詳しい田中紀子氏の記事を取り扱ってきたこともあって、アスリートと依存症の相関性が思い浮かんだ。依存症はギャンブル、アルコールなど様々だが、清田選手の場合、米プロゴルフのタイガー・ウッズ選手も悩まされた強迫的性行動症、俗に言う“セックス依存症”を疑ってみてもいいのではないか。
WHOが認定した強迫的性行動症
強迫的性行動症は、2018年、WHOが精神疾患のひとつとして認定。病気としては比較的新しく定義されたばかりだが、強迫的性行動症の診断基準は、以下の6項目があるという(参照:斉藤章佳氏「「仕事やお金を失ってもやめられない」性欲の強さと関係なく発症する”セックス依存症”の怖さ」プレジデントオンライン)。
- 強烈かつ反復的な性的衝動または渇望の抑制の失敗
- 反復的な性行動が生活の中心となり、他の関心、活動、責任がおろそかになる
- 性行動の反復を減らす努力がたびたび失敗に終わっている
- 望ましくない結果が生じているにもかかわらず、またそこから満足が得られていないにもかかわらず、性行動を継続している
- この状態が、少なくとも6カ月以上の期間にわたって継続している
- 重大な苦悩、および個人、家族、社会、教育、職業、および他の重要な領域での機能に重大な問題が生じている
病気についての詳細は、上記リンクの記事をお読みいただければと思うが、清田選手の問題行動に当てはまるのかどうかか、まず身近にいる家族や球団関係者が疑ってみて、専門医による適切な診断を勧めたほうがいいのではないか。
記事にもあるように「性欲をコントロールできないから」といった偏見にも注意したい。あるロッテOBがスポーツ紙に「選手を辞めてホストにでもなればいい」という趣旨の放言をしていたが、そういう昭和型の精神主義的、個人切り捨てのやり方では、誰も救われない。
■
不幸中の幸いか清田選手は複数年契約で、来年まで現役を続けられる可能性は残されている(5月21日昼時点)。契約解除を指摘する声も相次いでいるが、筆者から提案したいのは、トカゲのしっぽ切りにするのではなく、医学的な知見も含めて、構造的な問題解決のアプローチに変えるべきだということだ。正直、若くして大金を稼ぐこともあるプロ野球選手のなかには、ギャンブルなどで身を持ち崩す人がたまにいるのも事実だ。
清田選手が依存症かどうかはまだわからないが、将来、依存症の疑いのある選手が出てきた時、球団が組織的にサポートして医学的アプローチから立ち直りの機会をつくる「モデル」を作っておくことは決して無駄な投資ではない。復帰まで悪戦苦闘する過程を社会的に共有すれば、周囲からは多少違う見方をされるのではないだろうか。
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