韓国新政権「訪日団」に岸田総理が伝えるべき2つのこと

日韓関係、ウクライナ情勢で変わるか。新大統領の挑戦始まる
早稲田大学名誉教授
  • 韓国新政権の日韓政策協議団が24日訪日へ。岸田首相に大統領就任式出席要請か
  • 明らかに変わった韓国の対日世論。ウクライナ戦争で北朝鮮の思惑に気付いた影響も
  • 韓国内の政治経済事情は難問山積み。尹錫悦新大統領の挑戦の意義とは?

韓国の対日世論の空気が変わり始めている。韓国新政権の日韓政策協議団が、24日から日本を訪問するが、その目的は5月10日の尹錫悦氏の大統領就任式への、岸田文雄首相の参列要請とみられる。

また、北朝鮮の核、ミサイル開発への日米韓協力復活と、ウクライナ戦争について政府高官や国会議員らと懸案問題を話し合う。次期大統領は、日韓関係改善に意欲的で、岸田首相が就任式に出席すれば、両首脳の決意を国際社会に示せる。ウクライナ戦争後の世界を見据え、「前向きに応じる」と伝えるべきだ。

岸田首相と尹次期大統領(官邸サイト、尹氏Facebook)

明らかに変わった韓国の対日世論

尹氏のように、韓国の大統領選挙で、立候補表明の日から「日韓関係改善」を公約した人物は、これまでいなかった。「親日」と批判されたら、票が減るからだ。それでも尹錫悦新大統領は、あえて「日韓関係改善」を掲げ、最後まで言及した。なかなかの「信念の政治家」としての片鱗がうかがえる。

日韓関係改善と政策協議団の派遣に批判的な記事を掲載した韓国メディアは、文在寅政権を支持した「ハンギョレ新聞」だけだった。多くのメディアは前向きだ。元慰安婦支援組織の「正義記憶連帯」は、過去に慰安婦合意に関わった人物が代表団にいると批判したが、多くのメディアは無視した。

政権交代で、韓国の対日世論は明らかに柔和になった。日本製品ボイコットも下火になり、日本製ビールなどの購入が増えている。その事実を、わざわざ韓国メディアが報じている。多くの韓国民が日韓関係改善を望んでいる「空気」を伝えている。

ウクライナ戦争で気づかされた北朝鮮の思惑

ウクライナ戦争も、韓国の「空気」に影響を与えている。韓国は北朝鮮からの戦争の危機を、ようやく実感し、韓国軍幹部は、「北朝鮮が核兵器を決して放棄しない教訓を得た」と判断している。ウクライナは核を持たないから攻撃され、ロシアは核を保持するから攻撃されない、との考えだ。韓国は、北朝鮮の崩壊を図るか、核保有を認めるかの選択に直面する。

2019年4月、ロシア初訪問でプーチン氏と会談する金正恩氏(写真:ロイター/アフロ)

文在寅大統領は、ロシアのウクライナ侵攻を真剣には受け止めず、韓国の安全保障の危機とは捉えなかった。ロシア制裁への参加を表明したが、有効な政策は打ち出さなかった。一方、尹次期大統領は、韓国の安全保障強化に取り組む覚悟で、米韓同盟強化と日本との関係改善が必須と考える。中国の台湾侵攻危機も、韓国に難題を突きつける。

ウクライナ戦争後に、ロシアとプーチン大統領は、国際社会での影響力を失い、制裁は継続され欧米から排斥されるだろう。半面、中国の影響力は拡大する。韓国は、日米との関係を強化すれば中国の嫌がらせを受ける。中国は、韓国製品の輸入制限や韓国企業を狙った規制、韓流エンタメへの嫌がらせをするだろう。

野党勢力の抵抗に耐えられるか

国内の政治経済事情も、難問山積みだ。野党になった左派政党は、なお35%もの支持勢力を誇示している。国会でも55%を超える議席を持ち、新政権の政策にことごとく反発し、政治混乱を招こうとするのは目に見えている。

韓国の左派勢力は、なお日韓関係改善に抵抗するだろう。彼らは、北朝鮮を支持する勢力で、日韓関係が悪化すれば、北朝鮮が喜ぶと考えている。メディアは「左派」と言わないが、北朝鮮を支援し日韓関係を悪化させた文在寅政権は、明らかに左派勢力だ。

日韓関係は、2018年に韓国最高裁が元徴用工への慰謝料支払いを命じる判決を下したことで、決定的に悪化した。明らかに日韓基本条約の請求権合意違反で、国際法違反だった。

文政権を「忖度」した最高裁判決

文在寅大統領(韓国大統領府サイトより)

判決を下した最高裁長官は、文在寅大統領が地裁所長からわざわざ抜擢した人物だ。その意図は明らかで、徴用工裁判で日本企業への慰謝料支払いを判決させるためだった。常識で考えれば、文在寅大統領が指示した判決だった。百歩譲っても、最高裁長官は文在寅大統領の意向を「忖度した」と言っていい。

大統領府と政府高官は「司法の判決を尊重する」とうそぶいたが、まともに信じる日本国民は少ないだろう。

日本政府は韓国新政権の代表団に「日本では、文在寅大統領が指示した判決だとの見方がある」と、疑問を伝えるべきだ。判決は、証拠も示さず抽象的に「新日本製鉄住金(現日本製鐵)」と「日韓併合不法」を、不法行為と認定したに過ぎない。あまりにいい加減な判決なのだから、日本政府は「我が国の法律家も疑問を示している」と韓国新政権に伝えてほしい。

「怖い政権」の「歴史的挑戦」

尹氏が大統領就任後、前職大統領や現与党政治家の不正腐敗に厳しく切り込み、正義を貫徹する「怖い政権」と思わせない限り、政権はたちまち力を失う。それもあって、文氏と、尹氏と争った李在明氏は捜査される可能性が高い。そのため、検察が捜査できないようにする法律を成立させようとしている。これは、2人や与党高官や政治家の中に、身に覚えのある人たちがいる事実を物語る。

一方で、韓国政治は、政治学では「権威主義政治が民主主義を妨害する」と言われてきた。歴代政権で、青瓦台は国民から隔離された腐敗の温床で、自由民主主義を妨害したからだ。尹新大統領の青瓦台(大統領府)移転は、この権威主義政治への歴史的な挑戦の象徴と言える。

尹新大統領の挑戦は成功するか、注目したい。

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