“ツイッター嫌い”の読売新聞刺激か。マスク氏の買収で日本にも警戒論拡大

神戸市長はいきなりアカウント削除
  • イーロン・マスク氏のツイッター買収に日本で「警戒論」広がる
  • 神戸市長が「もう限界」「状況さらに悪くなる」アカウント削除
  • “ツイッター嫌い”の読売は社説でマスク氏の経営を露骨に疑問視

「ネット言論の自由」を掲げるイーロン・マスク氏がツイッター社の買収に成功したことで、本国・アメリカでは、トランプ前大統領がパージされた共和党の一部で歓迎の声が上がる一方、日本国内では「無秩序化」を警戒する向きが広がりつつあるようだ。

ツイッター社を手中に収めることになったイーロン・マスク氏(写真:ZUMA Press/アフロ)

神戸市長、いきなりアカウント削除

日本国内の政治家でいきなり反応したのが久元喜造・神戸市長だった。今回の買収が確定した直後の27日、「Twitter始めて9年近く。市政や神戸の情報発信のつもりでやって来ましたが、事実無根、あるいは歪曲された書き込みに悩んできました。もう限界です」と心境を吐露。さらに「マスク氏の買収で状況は更に悪くなるでしょう。この辺が潮時かもしれません」と述べ、アカウントを削除までする意向を示した(30日早朝に削除)。

久元氏ツイッター(現在は削除)

これには「公人として発信して居るならば批判する輩がいるのは避けられないのかと思います」と忠告するネット民もいたが、地元紙の神戸新聞によると、フェイスブックでの発信は続ける意向のようで、ツイッターから撤退の決意は変わらず30日早朝に予告通りアカウントを削除した。

同じ政令市トップである千葉市長を経験し、現在は千葉県知事に転じた熊谷俊人氏は「豊かな知識と神戸愛あふれるツイート、楽しみにしていただけに残念です。 SNSは人間社会の感情の渦をもろに浴びるので、ある種の割り切りが無いと辛いかもしれません」と“別れ”を惜しんだ。

一方で熊谷氏は「組織のトップだからこそ発信・受信できるものがあり、特に行政の場合は職員は公務員で、首長(知事、市長)のみが政治家という特殊な立ち位置なので、首長がSNSを行う必要性が他組織よりも高いと感じます」と述べるなど、ツイッターの意義を強調。「私の場合は集合知によって政治や行政の新しい姿を実現したいという、この世界に来た私なりの目的意識と、個人的な興味として社会学、SNSを通じてより鮮明に確認できる人間社会や個人の思想に関心があるので、特にストレスを感じずにSNSを行っています」と、引き続き続行する意向を示した。

読売新聞はマスク氏に“拒否反応”

編集部撮影

報道機関では、日本経済新聞が買収決定直後の26日朝刊一面トップで「ネット言論、問われる公共性」と題した記事を掲載。日本の大手新聞で「ネット言論」がこれほど破格の扱いをされるのは異例だった。同日付の社説ではトランプ氏のアカウント凍結にマスク氏が反対していたことを挙げ、「買収に成功した場合、同氏にはツイッターの公共性とそれに伴う責任を改めて強く自覚して行動してほしい」と注文した。

ただ、日経は社説のタイトルが「ツイッターの公共性と社会的責任を問う」とあるように、マスク氏への批評もまだ比較的穏当だが、読売新聞はマスク氏の買収に苦言気味だ。その2日後の朝刊で社説を掲載し、タイトルもズバリ「有害情報の自由化は許されぬ」。冒頭から

SNSは、多くの人が情報をやりとりする重要なインフラの一つとなっている。運営にあたっては、高い倫理観と社会的責任が求められることを自覚するべきだ。

といきなり喧嘩腰を見せると、

言論の自由を名目にした有害投稿は認められない。運営者が対策を取るのは当然だ。マスク氏の買収後に、問題投稿が放置されることがあってはならない。

と日経よりテンション高く踏み込んだだけでなく、マスク氏がかねてテスラ株売却の賛否を問う投稿などで物議を醸してきた事例を挙げ、「テスラや宇宙企業スペースXで成功したマスク氏だが、SNS運営の実績はない」と述べるなど、世界的SNSサービスの経営者としての“適格性”を露骨に疑問視。最後は日本政府に対しても「マスク氏の買収後に有害投稿が増えないかどうか、警戒する必要がある」と葉っぱをかける力の入れようだった。

読売新聞の“ツイッター嫌い”は筋金入りであることは新聞業界でも周知の事実だ。

ツイッターが若者の間で流行り始めた2011年1月、日本のこれからの方向性を各界の有識者が論じる正月連載で劇作家の山崎正和氏(2020年死去)にインタビュー。その中で「日本がどのような社会を目指すべきかといえば、もはや「知識基盤社会」しかない」と述べたくだりで、教育の大切さを説いた後、「大衆社会がより悪くなること」を懸念の一つに列挙。その際、山崎氏が

ブログやツイッターの普及により、知的訓練を受けていない人が発信する楽しみを覚えた。これが新聞や本の軽視につながり、「責任を持って情報を選択する編集」が弱くなれば、国民の知的低下を招き、関心の範囲を狭くしてしまう。ネット時代にあっても、責任あるマスコミが権威を持つ社会にしていく必要がある。

と述べたことを巡って、当時のツイッター空間で著名人も反応するなど物議を醸した。

読売の“本音”を代弁したかのような山崎氏の持論の是非はその後のネット空間の問題を考えると、一理ありそうだが、いずれにせよ、東日本大震災を機に災害時のSNSの効用が認知され、ライバルの朝日新聞やお隣の日経などでは自社の記者が会社公認でアカウントを持って積極的に発信するようになったが、読売では原則的に記者のツイッター使用を解禁してこなかった。プロ野球12球団の中でも巨人軍のツイッターアカウント開設はもっとも遅かった。

なお、先ごろNHKのネット媒体で話題になった「匿名記者」アカウントには読売関係者も相当数紛れていると他社の間では評判になっている。

読売にとってマスク氏のような「異形」の起業家は、かつてプロ野球参入やニッポン放送買収に乗り出した堀江貴文氏に対し、強烈な拒否反応を示したように、ある意味、“リベラル”すぎて苦手なタイプかもしれない。

 

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