「日本の低学歴化」日経記事がネットで話題、博士号取得者減少の背景に何が?
記事に文句相次ぐも、米国との比較で浮き彫りになる現実- 日経の記事「『低学歴国』ニッポン」がネット上で話題に
- 日本の博士号取得者減少の背景とは?大学院出身者が企業で冷遇も
- 米企業の経営トップの多くが大学院卒。日本は時価総額10傑の企業のうち…
日本経済新聞が2日に掲載した「『低学歴国』ニッポン 革新先導へ博士生かせ”というタイトルの記事がネット上で大きな話題となった。記事は、人口100万人当たりの博士号取得者を示したうえで、先進国の中では「低学歴国」となりつつあるという内容。
この記事が配信されると、著名人、一般ユーザーを問わずツイッターではさまざまな意見が寄せられた。

米山氏「戦車より教育、戦車より生活」
上智大学の相澤真一准教授(教育社会学)は、大学教員の立場から次のようにツイートした。
この記事の背景としてもそうなのだが「大学での勉強が面白い」と思った学生たちを素直に勉強することを応援したり、あわよくば院進学を薦められるような状況が当たり前であってほしい。私自身、一歩キャンパスを出ればそういう世界でないことに大学入学直後からずっと悩んだ。
この記事の背景としてもそうなのだが「大学での勉強が面白い」と思った学生たちを素直に勉強することを応援したり、あわよくば院進学を薦められるような状況が当たり前であってほしい。私自身、一歩キャンパスを出ればそういう世界でないことに大学入学直後からずっと悩んだ。https://t.co/Vq9rWcIagZ
— 相澤 真一 (Shinichi Aizawa) (@isaactruth) May 2, 2022
同志社大学大学院の内藤正典教授(ムスリム移民研究)は、企業の責任が大きいと指摘する。
一つ言わせて欲しいのだが、国の博士課程教育リーディングプログラムで博士号取得者の企業への就職を強化した時、文系に対する企業の反応は総じて冷たかった。文系の博士も多様な可能性を持っているのに
一つ言わせて欲しいのだが、国の博士課程教育リーディングプログラムで博士号取得者の企業への就職を強化した時、文系に対する企業の反応は総じて冷たかった。文系の博士も多様な可能性を持っているのに→「低学歴国」ニッポン 革新先導へ博士生かせ : 日本経済新聞 https://t.co/BeNcMAoKkY
— masanorinaito (@masanorinaito) May 2, 2022
自身も医学博士号を取得している、立民の米山隆一衆院議員は、このままではさらなる国力の低下を招くと危機感をあらわにした。
今や日本は世界の中で「低学歴」な国になってしまっています。日本にまず必要なのは、博士号に至る教育と、博士号取得者を生かせる社会・経済環境であり、戦車を買う事にその為のリソースを費やすのは、経済力・国力の低下を招く亡国の道です。戦車より教育、戦車より生活です。
今や日本は世界の中で「低学歴」な国になってしまっています。日本にまず必要なのは、博士号に至る教育と、博士号取得者を生かせる社会・経済環境であり、戦車を買う事にその為のリソースを費やすのは、経済力・国力の低下を招く亡国の道です。戦車より教育、戦車より生活ですhttps://t.co/IMg65XQIeo
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) May 2, 2022
博士号取得者減少の背景に「ポスドク問題」
日本で博士課程への進学者が減少している背景には、博士課程を修了した優秀な人材が将来展望も描けず、不安定な身分のまま年齢を重ねていく、いわゆる「ポスドク問題」がある。
1990年代から始まった「大学院重点化政策」で、博士課程を修了した人材は増加したものの、身分が安定している雇用期間の定めのない職員は増えていかなかった。その結果、研究を続けるためには1年から数年程度の、期限付きの職に就かなければならない博士号取得者だけが増えていった。
期限付きから雇用期間が無期限の正規職に採用されるのは稀で、企業も専門知識はあるものの年齢を重ねており、実務経験のない人を採用することを敬遠してきた。博士号を取得したにも関わらず就職に苦労する先輩たちを見てきたから、今の学生たちは積極的に大学院に進学しないという背景がある。
日本企業の経営トップ、大半は学部卒だが…

さらに、新卒採用の場合でも日本の企業では大学院出身者が、長らく冷遇されてきた歴史もある。大学院出身の経営者には、ハーバード大学経営大学院を修了しMBAを取得した楽天グループ社長の三木谷浩史氏やスマートニュースの代表取締役会長兼社長の鈴木健氏(東京大学大学院総合文化研究科)、グノシーの代表取締役兼CEO(最高経営責任者)の福島良典氏(東京大学大学院工学系研究科)などデジタル系では目立つもののほんの一握り。しかもその多くは創業者だ。
日本の時価総額トップ10の企業で、経営トップが大学院を修了しているのは三菱UFJフィナンシャルグループ社長の亀澤宏規氏(東京大学大学院理学系研究科)しかいない。トップ20に広げても、本田技研工業社長の三部敏宏氏(広島大学大学院工学研究科)くらいのもの。トヨタ自動車もソニーグループもキーエンスも経営トップは学部卒者だ。
一方、アメリカでは、ツイッター社を買収したことでも騒がれている、テスラCEOのイーロン・マスク氏は学部卒だが、マスク氏は異例と言っていい。
アメリカ企業の経営トップの多くが大学院出身者だ。昨年、CEOを創業者のジェフ・ベソス氏から引き継いだ、アマゾンのアンディ・ジャシー氏はハーバード大学経営大学院でMBAを取得している。アルファベット(Google)のサンダー・ピチャイCEOは、ペンシルバニア大学ウォートン校経営大学院でMBAを取得した。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、経営学の修士号に加えてコンピュータ科学の修士号を得ている。ネットフリックスもユーチューブも、経営トップは博士号を取得している。
日本の企業では、大学院修了者が出世しにくい構造が続いており、さらに、教育と就労を繰り返す「リカレント教育」も根付いていない。文部科学省の「高等教育の将来構想に関する参考資料」によると、25歳以上の学士過程への入学者の割合は、2.5%にとどまっている。OECD加盟国の平均は16.6%で、日本は世界最低レベルだ。
博士取得者を敬遠する企業文化、博士取得者が出世しづらい企業の体質、さらに学びなおしを許容しない社会。これらすべてを早急に改善しない限り、日経新聞が言うところの「日本の低学歴化」は止まらないのかもしれない。
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