フェイスブック、豪で規制緩和へ「犯罪的陰謀」WSJ報道、日本には対岸の火事なのか?

意図的削除否定も、国家を脅かす存在感じわり

オーストラリア政府が、アメリカの大手IT企業に対し、ニュース記事の対価を支払うように求める法案を提出し、議会で審議中だった昨年、米フェイスブック(FB)が法案を有利な内容にしようと、公的機関のページを意図的に非公開にしていた疑いが浮上した。

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が5日(日本時間6日未明)、内部告発者の話や資料をもとにスクープ報道した。

BFritz Jorgensen /iStock

FB側はWSJの取材に対し、意図的なものではなかったと否定しているが、内部告発者の代理人を務める非営利組織の代表者がアメリカの規制当局に提出した資料で「犯罪的陰謀」と断定しているという。

実際、FBは、法案審議が大詰めを迎えていた昨年2月、オーストラリア国内のユーザーへのニュースコンテンツの提供を遮断したときは、日本でも報道された。BBCニュースによると、この時、同国政府の保健・緊急対応ページや、一部の政治家、慈善団体などのページも閲覧できなくなり、FB側は直後にそれらについてはあくまで「技術的なエラー」だったと釈明していた。

しかし、コロナ禍で重要な、公的機関による医療・健康情報へのアクセスが遮断されただけでなく、今回のWSJ報道により、削除対象となるページを決めるアルゴリズム導入など意図的な動きをしていた可能性が浮上。その後、法案の内容が修正されてFB側が脅威に捉えていた条項が削除されるなど思惑通りの結果になったとしている。

日本の規制動向、LINE問題で脚光

IT企業に対し、ニュース記事の対価を支払うように求める法的規制は世界初だった。この当時、アメリカでは下院がGAFA各社の調査を行い、EUでは19年3月にグーグルにも広告事業でも独禁法違反で14億9000万ユーロ(当時のレートで約1900億円)の課徴金を課し、昨年11月にはデジタル市場法を制定するなど、世界各国で大手ITに対する規制の動きが加速していた。

日本も例外ではなく、20年にデジタルプラットフォーム取引透明化法が施行。取引条件などの情報開示やプラットフォーム運営上の公正性確保、運営状況の報告を義務付けている。経産省は「国の関与を最小限にした中で、取引の透明化や公正な取引が本当に実現されるのか、今後注目していく必要がある」(経産省サイト)としており、まずは手探りといった様子だ。

そもそも、報道機関の持続可能性という社会的領域に踏み込んだオーストラリアとは異なり、日本の現行規制は、独禁法など経済規制の域にとどまっている。

Wachiwit/iStock

ただ、日本ではLINEの情報が業務委託先の中国で閲覧可能になっていたことが判明し、日本と政治的な溝が深まっていた韓国に画像のデータセンターがあったことも問題視(現在は国内に移管)。プラットフォームの情報保全について経済安全保障の観点からも危惧する向きが強まっている。

ある自民党の参院議員はサキシルの取材に対し、LINEのアカウントは持つものの、LINE問題の発覚前から「議員同士での機微な情報はLINEを使わず、国内製のチャットアプリでやりとりしていた」と明かす。

ただ、経済安全保障の企業事情に詳しい政策関係者は、LINE問題以後、「意外に思われそうだが、(親会社の)Zホールディングスは経済安全保障には積極的だ」とも指摘、軌道修正は進んでいるようだ。

フェイスブックを巡っては日本ではかつて佐賀県武雄市が市の公式サイトを全面移行して話題になった。ここまで特定のプラットフォームに振り切った動きは稀だが、LINEについては情報発信や公共料金支払い用に活用する行政機関は近年著しく増えるなど「インフラ化」が着実に進展してきた。 国家をも揺るがす影響力を持ち始めたプラットフォームへの規制のあり方について、今後も試行錯誤が続きそうだ。

 

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