日本維新の会の公約、選挙争点はBIより「フロー大減税」だ!
「社会主義経済化」にNo- ベーシックインカムが注目された日本維新の会の公約を、渡瀬裕哉氏が独自の分析
- 消費税、法人税、所得税、の三税を減税するフロー大減税。海外の保守政党なら当然
- 既存政党の政策は「政府の支出拡大政策による社会主義経済化」。維新が新たな対立軸
(編集部より)遅くとも秋までに行われる衆院選。政局的な動きばかりが報道されがちな中で、自民、公明の政権運営に野党はどう立ち向かっていくのか。アメリカ共和党をはじめ、各国保守政党の減税政策に詳しい渡瀬裕哉氏が注目する維新の「異質」な公約とは?
日本維新の会が5月17日、次期衆議院選挙の公約の柱となる「日本大改革プラン」を公表した。その主な柱は下記の3つの内容にまとめられている。
日本大改革プランの三本柱
- 税制改革 消費税減税を含む、消費喚起と経済成⻑を重視する「フロー大減税」
- 社会保障改革 主要政党で初となる「ベーシックインカム(最低所得保障)」の公約への明記
- 成長戦略 労働市場の流動化(解雇規制緩和等)まで踏み込んだ、タブーに挑戦する規制改革
同政策の取りまとめ役は、若手の藤田文武衆議院議員であり、筆者もネット番組などで対談をさせていたことがある。非常に人柄も良く理知的な方で好感が持てる人物であった。
報道各社の「日本大改革プラン」を見ると、本大改革プランに関して「ベーシックインカム(BI)」導入を掲げたことばかりが注目されていた。
異質な公約「フロー大減税」
維新側が配布した資料でBIに関する内容が多く明記されていたからだろうが、「次期衆議院選挙」という射程を考えると、選挙争点として本来報道すべき内容はBIではないだろう。BIは政治的・制度的なハードルが高すぎるため、一朝一夕に実現できるようなものではない。したがって、維新のBIは具体的な政策内容の是非というよりは中長期的な政策の方向性として受け止める類のものである。
実際、三本柱の第一本目は「税制改革」であり、その内容だけで次期衆議院選挙の争点としては十分だ。「フロー大減税」と題された政策は従来までの他の政党にはない異質さを持っている。
それは、消費税、法人税、所得税、の三税を減税するというものだ。日本では消費税と法人税・所得税をトレードオフとするリベラルな議論が多く、三税全てを引き下げて経済活性化を図る、という内容の主張は皆無と言って良い。維新が掲げた経済成長策として「減税」を柱に立てる海外の保守政党・自由主義政党なら当然の政策であり、その方向性は大いに評価できる。
具体的には、フローに対する課税見直しとして、消費税減税(2年間の5%、恒常的に8%へ、*維新は国会で独自法案提出済)、法人税減税 (既得権益化した租税特別措置の廃止、*特定業界に阿る租特は政治による利権の塊だ)、所得税実質減税が謳われている。所得税減税はBIとの組み合わせとされているが、現在の累進税のシンプル化だけでも十分だろう。
ストックに対する課税見直しとしては、相続税は廃止、固定資産税は適正化(≒増税)、金融資産課税は見送りということで、一部増税案は含まれるものの、原則として減税の方向性は力強いものだと言える。
日本では政府歳出拡大によるバラマキによる景気対策を主張する政党しかない。その政治劣化が不毛な55年体制による与野党合作の巨大な政府を生み出し、日本全国津々浦々、補助金と規制で雁字搦めにした疑似社会主義経済を創り出している原因だ。
維新が掲げる「対立軸」
筆者が維新の日本大改革プランを読んだ限りでは、BIについては詳細な制度設計という点では議論の余地が大いに残されている。しかし、複雑で誰も理解できない利権構造の集合体と化した社会保障制度などの制度を抜本改革したいという根本的なコンセプトには共感する。
不透明な制度を作ると必ず「中抜き」をする政治関係者・役所関係者が生まれる。そして、役所に提出する資料作りのような「付加価値ゼロ」の作業に膨大な民間側の人手・費用を浪費させられる。そのため、BIに直ぐに至らないまでも「制度の簡素化・合理化に伴う政府の中抜き率の低下」は極めて重要な問題だ。
今回、維新のように「減税」を軸に据えた経済成長政策を掲げる世界標準の対立軸を提起する政党が出てきたことは僥倖である。労働市場も含めた規制改革による経済成長も同様の方向性を持つ政策として歓迎したい。「大減税による民間経済活性化」VS「政府支出拡大による社会主義経済化」のどちらを選ぶのか、という政治の対立軸がしっかりと整理されることを望む。
来年度以降のコロナ禍からの景気回復を見据えて、「フロー大減税」に対する賛否こそ問わるべき選挙争点である。
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