知床観光船事故で注目される「組織罰」、桂田精一社長を裁くにはこれしかない?
郷原信郎弁護士「『重大事故事業者処罰法』のような法律が必要」- 重大事故を起こした知床観光船の桂田精一社長は、今のところ逮捕されず
- “うっかりミス”を裁く現行法では、再発防止効果が薄い可能性
- 郷原弁護士は事業者に高額の罰金を課す「組織罰」が必要と指摘
北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が行方不明、14人の死亡が確認された、観光船「KAZU I(カズワン)」の沈没事故。運航会社「知床遊覧船」(斜里町)の事務所や桂田精一社長(58)自宅は業務上過失致死の疑いで家宅捜索を受けたが、今のところ逮捕には至っていない。

郷原氏ら提唱「組織罰」とは?
杜撰な安全管理によって人命に関わる大事故を起こしても、会社(法人)や会社の代表者が刑事罰を受けることはない。再発防止の観点から考えても、おかしいのではないか――。こうした考えから、「組織罰」を提唱する動きがある。
「組織罰を実現する会」の顧問を務める郷原信郎弁護士が説明する。
現行の刑法が定める『業務上過失致死傷罪』は、運転士やパイロットなど事故を起こした行為者を対象としているため、乗り物の運行会社やそのトップを裁くことはできません。
ただ、『ヒューマンエラーは裁けるか』(シドニー・デッカー著、東京大学出版会)という書籍でも指摘されているように、人間の“うっかりミス”を裁いても、再発防止にはあまり役に立たないのではないかという考えが広がっています。
人間である以上、“うっかりミス”は必ずある。「組織罰」とはミスをした人だけを罰するのではなく、ミスを誘発するような職場環境を放置してきた組織にも、罰則を課す必要があるという考え方だ。
刑法を改正するのは非常にハードルが高いので、「組織罰」を実現するには「重大事故事業者処罰法」のような名称の法律(適用範囲が特定される「特別法」)を制定する必要があります。

組織罰の設置で期待できる変化
具体的には、どのような法律のイメージだろうか。
行為者に業務上過失致傷罪が成立する場合、事業者に対して高額の罰金刑を課す法律を想定しています。罰金の金額が低いと再発防止効果がないので「罰金額の上限は純資産額とする」など、重大事故を起こすと経営上大きなダメージとなる程度の罰金額が必要です。
ただし、免責事項として次のような条文を加えるという。
「組織が万全の安全管理対策を取っていた場合、罰金は免責される」という条項を加えることで、再発防止に役立ちます。何をもって「万全の安全管理対策」とするかは議論の余地がありますが、判例を積み重ねることで定まっていくと考えます。
ポイントは、事故を起こした行為者に業務上過失致傷罪が成立した場合、事業者にも自動的に罰金が課される点だという。
組織罰が実現すれば、事業者は「万全の安全管理対策」を行なっていたことを自ら証明する必要があります。そのため、事故原因や事故の背景について、現在以上に真相解明がしやすくなるはずです。
「組織罰を実現する会」は、福知山線脱線事故や笹子トンネル天井板崩落事故の被害者遺族らが2016年に立ち上げた。今後は議員会館で院内集会を開き、国会議員に組織罰の必要性を周知していく予定という。
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