ロシアが生物兵器としてサル痘ウイルス研究?英紙報道

フェイクか?真実か?ソ連出身科学者24年前の証言に注目
ライター/SAKISIRU編集部
  • アフリカで発生してきたサル痘が、アフリカ以外で多数確認され「異常」事態
  • 英紙が元ソ連科学者の24年前の証言を元にロシアの「サル痘の生物兵器計画」報道
  • そもそもサル痘はどんな病気か?ロシアの関与は?報道の信憑性は?

動物由来のウイルス感染症「サル痘」がヨーロッパなどで流行の兆しを見せている。世界保健機関(WHO)は21日、ヨーロッパと北米、オーストラリアの計12カ国で92人がサル痘に罹患したと発表した。サル痘は、これまでアフリカ大陸では継続的に発生してきた感染症だが、アフリカ以外で多数確認されるのは、「きわめて異常」(WHO)だ。

画像はイメージです(Riccardo Lennart Niels Mayer /iStock)

報道のソースとなった亡命科学者の証言

そんな中、この週末、にわかに信じがたいニュースがイギリスから飛び込んできた。イギリスのタブロイド紙「The METRO」が報じ、インドの英語放送チャンネル「WION」が外電引用した「Russia ‘planned to use monkeypox as a bioweapon’, report warned(ロシアは「サル痘を生物兵器として使用することを計画している」と報告書は警告した)」という記事だ。

ケン・アリベック氏(撮影:米NIH=Public Domain)

記事によれば、ソ連出身の科学者で現在はアメリカに渡っているケン・アリベック博士が、「ソ連では古くから天然痘ウイルスを生物兵器として使用する研究が行われていた」と、1998年の「生物兵器不拡散プロジェクト(CBWNP)」で主張したという。今回、その時の報告書が発見された。

報告書によれば、1980年に世界から天然痘が根絶されて以来、ソ連では生物兵器として代替ウイルスの研究に切り替えたというが、その中の一つがサル痘ウイルスだった。アリベック博士によると、ソ連ではサル痘ウイルスのほかに、ワクシニアウイルス、マウスポックスウイルス、ウサギポックスウイルスが研究されていたという。

アリベック博士はさらに、ロシア国防省は、ソ連の崩壊後も「将来の生物兵器を作成する」ためにサル痘ウイルスを研究し続けることを決定したと続けた。アリベック博士は、ソ連の生物兵器プログラムの副主任で、ソ連崩壊後、1年間ロシアにとどまった後、アメリカに渡った。

致死率は1~11%、根本治療法はなし

国立感染症研究所によると、サル痘は主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主(自然界で寄生体と共生している宿主)は、アフリカのリスやネズミといったげっ歯類が疑われているが、現時点では不明だという。

サル痘の発疹が現れた白人男性(Paco Burgada /iStock)

WHOのまとめでは、1970年にザイール(現在のコンゴ共和国)で初めて報告されて以降、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ナイジェリアで継続的に発生しており、特にコンゴ共和国では2022年1月年以降4月末までで1152例の患者と55例の死亡例が確認されている。

致死率は1~11%で、子どもや免疫不全の基礎疾患のある人は重症化しやすいとされている。その一方で、2003年にアメリカで71人が感染した事例では死者はなく、これまで先進国での死亡例は報告されていない。

日本における感染症法上の分類は、エキノコックス症、狂犬病、鳥インフルエンザ、マラリアなどと同等の4類感染症。サル痘への感染が確認された場合、その日のうちの届け出が義務付けられている。

潜伏期間は5~21日で、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続く。その後に顔面に湿疹が生じ、湿疹は全身へと広まっていく。現在のところ根本的な治療法はなく、症状を和らげる対症療法のみとなるが、天然痘ワクチンに高い予防効果があると考えられている。厚生労働省によると、ヒトからヒトへの感染はまれだが、飛沫による感染、体液に接触することでの感染があり得るという。

新型コロナウイルスに関しては、中国・武漢ウイルス研究所から流出したとの見方もあるが、今回のサル痘ウイルスの感染の異常な広まりに、ロシアは関与しているのだろうか。それとも全くのデマなのか。戦争が長引くにつれて、情報戦も激しさを増す中、ますますフェイクニュースと真実のニュースを見分けるのが難しくなってきている。

 
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