日米首脳会談で小型原子炉の開発協力で合意、細野氏「世界の原発市場に日米同盟が返ってくる」
原発輸出で存在感見せるロシア、中国に対抗- 日米首脳会談の合意事項で「地味」だが、エネルギー戦略を考える上で重要な話
- 日米が、小型炉や高速炉など革新的な原子力技術で協力で合意
- 原発輸出で存在感際立つロシア、中国に対抗
23日に行われた日米首脳会談は、バイデン大統領の「日本の国連安保理常任理事国入りを支持する」といった発言や、中国が台湾に侵攻した場合にアメリカが台湾防衛に軍事的に関与するかを記者から問われたバイデン大統領が「イエス」と応えるなど、見どころ満載だった。
そんな中、一見すると地味ではあるものの、日本の成長戦略を考えるうえで非常に重要な合意がなされた。

小型原子炉の開発、日米協力で合意
小型原子炉の開発を、日米が協調して推進していくことの合意だ。日米首脳共同声明と合わせて発表された共同文書の一つ「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップファクトシート」には次のように記載されている。
日米両国は、小型モジュール炉や高速炉などの革新的な原子力技術について、キャパシティ・ビルディング及び資金調達手段と共に世界に展開することを支援することや、強靱なサプライチェーンの構築のために協力することを含め、協力していくことにコミットした。
日米両国は、原子炉の運転期間の長期化及び燃料供給の安定性確保に関する協力を含めるべく、既設炉の十分な活用に関する協力の機会を追求する。
日米が、小型炉や高速炉など革新的な原子力技術で協力していくことが示されたほか、原子炉の運転期間を長期化することでも協力していくことが今回、示されたされたわけだ。ファクトシートの「小型モジュール炉や高速炉などの革新的な原子力技術」は、新型原子炉として世界中で開発競争が繰り広げられている。

自民党衆院議員の細野豪志氏は、今回の合意の意義を次のようにツイートした。
既存原発だけではなく「小型炉」や「高速炉」など革新的原子力で協力していく方針が日米首脳会談で確認された。実現すれば、ロシア、中国に席巻されつつある世界の原発市場に日米同盟が返ってくる。核不拡散の観点からも大きい。
既存原発だけではなく「小型炉」や「高速炉」など革新的原子力で協力していく方針が日米首脳会談で確認された。実現すれば、ロシア、中国に席巻されつつある世界の原発市場に日米同盟が返ってくる。核不拡散の観点からも大きい。 https://t.co/Ll51joG3yr
— 細野豪志 (@hosono_54) May 23, 2022
原発輸出で存在感際立つロシア、中国
グローバルレベルでの産業活動の分析・研究を手掛けるパノラマ・データ・インサイトのレポートによると、世界の原子力発電所設備の市場規模は2021年に813.4億ドル(約10兆4000億円)に達したが、2030年までに1918.1億ドル(約24兆5000億円)にまで拡大すると予測されている。ただ、このままでは日本はその恩恵にあずかることは難しいと見られている。
日本貿易振興機構(ジェトロ)のビジネス短信(2018年7月6日)によると、ロシア国営原子力会社ロスアトムが世界の原発建設市場で67%のシェアを確保しているという。
また、中国は2020年11月に独自開発した新型原発「華竜1号」が稼働。中国メディアによると、パキスタンに輸出され、今年4月には臨界条件を達成した。さらに、イギリスやアルゼンチンなどへも輸出される予定だという。
中国は、新型原子炉の開発や輸出に熱心で、新型原子炉の輸出を広域経済圏構想「一帯一路」の中核とみなしている。2030年までに海外30カ所に原発を建設することを目指している。
翻って日本は、2011年の東京電力福島第一原発の事故を契機に、原発の新設はストップ。昨年末にようやく日立製作所が原発輸出を再始動したばかりだ。原発を10年以上新設していないことで、その間、技術者や原子炉の運転経験者がどんどん高齢化し定年を迎え始めている。原発を新設していないから、後進も育ちようがない。このままでは、日本は原発を作れない、運用できない国になってしまう。
今回の日米首脳会談で示された方針が、細野氏の言うところの「ロシア、中国に席巻されつつある世界の原発市場に日米同盟が返ってくる」ことのきっかけとなるか。
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