バイデン離日直後の3連発!コロナ渦中の北朝鮮によるミサイル発射、その意図は?
金正恩委員長「危機感」の表れか?次は核実験か?- 北朝鮮が24日、弾道ミサイルと見られる3連発。飛距離抑制のICBM発射か
- 日米韓の結束を強めようとする、バイデン大統領、尹錫悦新大統領へけん制?
- ウクライナ情勢も影響か。核実験が今後の交渉有無の試金石
韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は25日午前6時ころから同40分ごろにかけて、弾道ミサイルと推定されるミサイル3発を発射した模様である。防衛省も。このミサイルの内の2発を確認した。発射されたのは北朝鮮の首都平壌(ピョンヤン)近郊の順安(スアン)飛行場付近と見られており、ここでは最近、長距離弾道ミサイル(ICBM)の発射準備も行われているとされていた。

飛距離を抑制したICBM発射か
防衛省は、今回最初に発射された弾道ミサイルは、最高高度約550km飛距離約300kmであり、ICBMの可能性があると発表した。
防衛省が発表したこの最高高度と飛距離は、北朝鮮が本年2月27日と3月5日に「偵察衛星打ち上げの試験」と称してミサイル発射を行った際の数値とほぼ同様である。日米韓の情報機関は、これら(2月27日と3月5日)の発射について、北朝鮮が「ICBM(火星-17)の性能を抑えた試験発射」を実施したものと分析していたことから、今回も同様な発射試験を行った可能性がある。
韓国合同参謀本部によると、2発目は高度およそ20キロで消失し、3発目は最高高度約60(防衛省発表約50)kmで飛距離約760(同約750)kmとしていることから、2発目は恐らく軌道に乗らず失敗したものと推測され、自衛隊ではレーダー覆域の見通し外における消失によって探知できなかったものと思われる。
また、3発目は本年1月5日に発射された「新型の極超音速ミサイル」と同等の最高高度と飛距離及び飛翔時間であることから、このミサイルが発射された可能性がある。このミサイルは、中距離弾道ミサイル「火星12」の推進ロケットを母体に開発されたものと見られており、「火星12」が2017年9月に約3,700km飛翔したことに鑑みると、これも性能を抑えて発射した可能性を窺わせるものである。
日米韓の結束に対抗
北朝鮮の弾道ミサイル発射は、今年に入って(失敗と見られる発射2発を含めて)計16回(日)、25発目であり、すでに5月の段階で過去の年間発射数の最高を更新している状況にある。北朝鮮が、これほどまでに頻繁に各種の弾道ミサイル発射を実行しているのは、何よりも金正恩委員長が、核・ミサイル開発をさらに深化・加速させることを意図しているからに他ならない。これは、別の見方をすると危機感の現れだと言える。

本年1月23日の拙稿「北朝鮮、中国、ロシア…日本を脅かす3国の今年の出方と思惑を読む」でも触れたとおり、金委員長は1月19日に開催された(重要な政策的課題を決定する)朝鮮労働党中央委員会政治局会議において、米国との「信頼醸成措置を全面的に見直す」として、「(核実験やICBMの発射など)暫定中止したすべての活動」の再稼働検討を指示しており、このICBMの発射もこれに基づくものである。
そしてこれは、日米韓の結束を強めようとする、米国のバイデン大統領と韓国の新たなリーダーとなった尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する「けん制」という意味合いが濃い。バイデン大統領の韓国と日本への歴訪直後に発射されたのも、このような理由によるものと考えられる。
ウクライナ情勢も影響
加えて、ウクライナ情勢も影響していることは間違いない。前述の拙稿でも触れたが、現在、米国は最大の脅威国である中国への対応と並んで、ウクライナを侵略しようと企てて武力行使しているロシアにも備えなければならない状況に陥っている。
したがって、北朝鮮への対応は後手にならざるを得ない。この隙に乗じて、核ミサイル開発を加速させ、「決してウクライナのような憂き目に遭わないよう」強固な核武装で国家を盤石に固めることによって、日米韓と対等に張り合うことを目指しているのだろう。
一方で、5月22日の拙稿「プーチン、金正恩…『独裁者の終わりの始まり』示す兆候を読み解く」で触れたように、今回思いもよらないような新型コロナウイルスのオーバーシュート(爆発的患者急増)によって、北朝鮮は国家の脆弱な側面が露呈してしまった。金委員長は、自国とその体制の危うさを、いやというほど知らされたことであろう。そのストレスからか、いつ の間にかリバウンドしてまた元の体重に戻りつつあるように見える。実際のところ、日米韓の支援は喉から手が出るほど欲しいことだろう。
核実験が今後の交渉有無の試金石
決して、中国だけに頼ることなく、真に国家を繁栄させるためには、日米韓といつまでも敵対 関係にあるより、うまく折り合いをつけて協力を得ることが何より得策であることを、金委員長は重々承知しているはずである。
今回のICBM発射や、極超音速ミサイル発射において、朝鮮半島西側から発射し、角度の大きいロフト軌道やその他の手段によって飛距離を大幅に抑制し、わが国のEEZ外にその弾頭を落下させ、日米韓へ必要以上の刺激を与えないよう配慮したのは、今後の交渉に期待している一面をのぞかせているようにも受け止められる。
北朝鮮の分析サイトである38ノースなどによると、核実験の準備もかなり進んでいるように見えるが、これを近々に実行するか否かが、北朝鮮に対して交渉の余地が有るか無しかを占う試金石となろう。
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