「最後のご奉公」猪瀬直樹氏が維新から出馬、イデオロギーから脱却した「改革」はできるか
「ファクトには右、左はなくて、そこに解がある」- 猪瀬直樹氏が参院選比例で維新から出馬会見。「最後のご奉公」
- 昨年11月には民間の行革審議会を組織。脱炭素や移民政策など提言
- SAKISIRUの創刊企画で話していたのが「ファクトに右、左はなくて…」
元東京都知事で作家の猪瀬直樹氏が26日、記者会見を開き、今夏行われる参議院選挙に日本維新の会から比例代表で立候補することを明らかにした。
「一私人では限界」石原氏の言葉も後押し
記者会見の冒頭、猪瀬氏は「今回、日本維新の会の全国比例から立候補することにしました」と挨拶。今回、出馬に至った経緯を次のように説明した。
「岸田首相は“新しい資本主義”と言っているが、新しい資本主義とは一体何なんだ、これで改革はできるのかと(思った)。改革するためには、具体的なプランの提言をしていかなければならないが、一私人の立場では限界があると考え始めた。そういう中で日本維新の会から“一緒に戦ってみませんか、改革をともに進めていきませんか”との申し入れがあった。熟慮の末、今回、立候補を決意した」
猪瀬氏は立候補にあたって、元東京都知事で作家だった石原慎太郎氏(今年2月1日死去)の存在も大きかったと話す。
「数年前、石原慎太郎さんのご自宅を訪ねた。石原さんは“猪瀬さん、日本を頼むよ。日本を頼むよ。日本を頼むよ”と3回も言われた。その石原さんがお亡くなりになった。そのことも僕の気持ちを動かしたことは事実だ。石原さんの意志を継いで、日本の改革に最後のご奉公として自分の持てる力をすべて発揮していきたい」
移民に見る「右でも左でもない」政策
猪瀬氏は自身が中心となって昨年11月、民間の行政改革審議会「モデルチェンジ日本」を設立している。設立メンバーには、起業家で元国会議員の松田公太氏、メディアアーティストで筑波大学准教授の落合陽一氏、慶應義塾大学教授の安宅和人氏、産業金融事業や上場株投資事業を手掛けるシニフィアン共同代表の村上誠典氏など錚々たるメンバーが名を連ねている。
昨年11月には岸田首相に「COP26を受けての政策課題」を提言したほか、5月25日には「脱炭素の加速」「移民政策の司令塔の設置」を立て続けに提言している。特に、移民政策は、傾聴に値する提言内容だ。
たとえば、現在の外国人受け入れ政策を「戦略性のない、なし崩しの移民受入れは、社会の活力とイノベーションをもたらすことなく、経済成長を阻害し、社会の混乱要因を増し、さらには外交・安全保障にも悪影響をもたらしつつある」と指摘し、戦略的な 外国人政策の司令塔として「移民庁」を創設すべきと提言している。
さらに、移民受け入れの議論でよく見られる「日本人の賃金が下がる」「犯罪が増加する」といった懸念に対しては次のように提言している。
これに対しては事実と施策をもって対処すべきである。賃金については、 デイビッド・カード( 2021 年ノーベル経済学賞受賞)の研究によれば、移民受入は賃金低下をもたらさないとされている 。日本は今や、賃金が低いので世界での人材獲得が困難になっている現状も認識しなければならない。 また、犯罪に関しては、 戦略性なく外国人を受け入れ、社会統合政策が欠落しているからこそ増えてしまう。
そのほか、「外国人受入れをただ拡大すべきというのではなく、どの分野の人材を、どこの国からどう受け入れるのかを示すことが重要である」と指摘。外国人の子どものためには、インターナショナルスクールの整備、 公立学校での日本語教育の拡充 、大学のレベルアップなども提言している。
ファクトに右、左はなくて解がある
単なる移民賛成でもなく、かといって頭ごなしに移民反対のわけでもない斬新で思い切った内容ではないだろうか。「保守でもリベラルでもない」。この考え方の根底には、猪瀬氏の経験から得た知見がある。昨年4月に掲載したSAKISIRU創刊記念対談で、猪瀬氏は次のように述べていた。
「全共闘の時、セクトの中がケンカしてばかりで不毛だとすぐ分かりました。解決策が出てこないし、前へ進めない。だから、全共闘の反省に立って作家になっていった。右とか左っていうの、意味がない。ファクトファインディングであるべき。ファクトには右、左はなくて、そこに解がある。ファクトとロジックをつないでいけば、答えが出るんだという思いでやってきました。」
「民間の一私人の立場での政策提言には限界がある」として今回、出馬を決意した猪瀬氏。当選を果たし、国会議員の立場で旧来の保守ともリベラルとも違う新たな視点からの「改革」を成し遂げることができるか。
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