國光さん、NFT、ホンマに儲かりまっか?

真田哲弥の未来対談『サナダマル!』第1回 #1
KLab株式会社創業者(同社会長)
  • 話題のNFTとは何か?今後の展望は?真田哲弥氏が國光宏尚氏に迫る
  • 國光氏の解説「NFTは大きく3つの特徴があるテクノロジー」
  • 彷彿とさせるICOブームの隆盛と廃り。NFTブームと何が違うのか?

今年に入り、「NFT」(Non-Fungible Token:非代替性トークン)と呼ばれるデジタル資産の高額な取引が急速に注目を集めています。3月には、ツイッター創業者のジャック・ドーシー氏が2006年に世界で初めてツイートした投稿が約291万ドル(約3億1000万円)で落札、日本でも話題になりました。

いささかバブル的な気配も強い「NFT」ですが、コンテンツビジネスの革命をもたらすとの予測もあります。そんなNFTに注目するKLab創業者の真田哲弥さんがSAKISIRUで各界のキーパーソンに迫る対談連載。第1回は、国内でNFTビジネスの最先端を走るgumi創業者の國光宏尚さんをゲストに迎え、NFTが「本物」なのか迫ります。(3日連続掲載)

第1回のゲストは國光宏尚氏(左)=撮影:西谷格
第1回のゲストは國光宏尚氏(左)=撮影:西谷格

NFT「そもそも」3つの特徴

【真田】僕らのネット業界の中では「水先案内人」的な存在なのが國光さん。「新しいことは國光に聞け」といわれています(笑)。NFTは、ジャック・ドーシーの初ツイートが高額で落札され、ネット業界の盛り上がりがすごいものがありますが、まだ知らない読者も多くいらっしゃるので、まず基本的な話を軽くお伺いできますでしょうか。

【國光】NFTは、基本的に大きく3つの特徴があるテクノロジーです。

1つ目の特徴はネット上だけど「限定商品」が作れます。1個限定、10個限定みたいな供給量を制限できます。でも、これまではそれが本当に10個なのか100個なのか、運営会社のみぞ知るのが実態でしたが、ブロックチェーンに裏付けられることで価値を証明できるようになりました。これは実に革命的なことです。

國光 宏尚(くにみつひろなお)gumi創業者(同社会長) 1974年兵庫生まれ。高校卒業後、中国・上海の復旦大学で学ぶも中退して、アジア諸国、北米、中南米などおよそ30カ国を旅する。帰国後、映像制作会社に入社。2007年に独立し、モバイルを中心としたインターネットコンテンツ提供会社を創業。2008年に商号をgumiに変更し、ソーシャルゲーム事業などを展開。近年は、VRやブロックチェーン関連の投資や新事業開発で注目される。

【真田】これまではサービスをつくるとき、中央集権型のデータベースで管理していたのを、パブリックなブロックチェーンで「10個限定」というのをオープンに世界中で限定できるわけですね。

【國光】2つ目の特徴は、NFT上にスマートコントラクトっていう名前のプログラムを書くことができます。みんなから価値を認められたデジタルアートやデジタルコンテンツがメルカリみたいなところで二次流通されたとき、いままでは元々作った人にお金が入らなかったのが、手数料の一部がアーティストに入るようになります。

【真田】コンサートのチケットを買い占めて高値転売する「転売ヤー」が近年問題になりましたが、あれも元のアーティストに還元されず、締め出すに躍起になってました。しかしスマートコントラクトで最初に製作者が誰なのかを記述しておけば、何回転売されても収益が還元されるわけですね。

【國光】付け加えると、スマートコントラクトは他にもいろいろなプログラムが書けるので色々な可能性があります。まだジャストアイデアですが、1年間そのNFTを持っておくと特典がついたり、逆になくなったりすることもできます。

【真田】ゲームの世界ではすでに、トレーディングカードゲームで「このカードをコンプリートすると何かいいことがある」というルールがあるんですが、それと同じようなルールをスマートコントラクトに書くことでできるわけですね。

真田 哲弥(さなだてつや)KLab創業者(同社会長) 1964年大阪生まれ。関西学院大学在学中に起業。学生ベンチャーブームの担い手として注目され、20代のうちに成功も挫折も経験。33歳でIT企業で初の会社員生活を経験した後、98年にサイバード創業に参画し、同社副社長。2000年、ケイ・ラボラトリー(現KLab)を創業。2011年に東証マザーズに上場(のちに東証一部に変更)。数々のモバイルゲームをヒットさせる。19年に社長を退任し現職。

【國光】まだ二次流通の手数料ぐらいしか発明がないのですが、いろいろなイノベーションが起こると思っています。そして3つ目の特徴が最初から「ピュア・グローバル」。例えば、ナイジェリアのアーティストが作ったデジタルアートをブラジルの人が購入して、その人が二次流通マーケットに出したNFTをウクライナの人が買って、この時の手数料の一部がナイジェリアの人にも戻るというような商流ができるわけですね。 

「僕調べ95%詐欺」ICOとの違い

【真田】NFTのこうした盛り上がりに対して、いろいろな疑念や懸念を持ってる人もたくさんいます。例えば、2017年に、仮想通貨で資金調達をする「ICO」ブームがありましたが、ほとんど紙屑のような値段になってしまいました。一方で技術的特徴は、NFTとICOは似た特徴をたくさん持っています。

ICOブームで損をした人は、NFTもまたICOブームの時みたいになるのではないかとの懸念を持ってる人もいると思うのですが、その点はどう思われますか。

【國光】“僕調べ”ですけど(笑)ICOは95%くらいが詐欺、もしくは努力をしたけどプロダクトを完成出来なかったわけです。

【真田】“僕調べ”でも95%ぐらいは詐欺でしたね(笑)。

【國光】ただ、そういう中から本当のイノベーションも生まれてきています。ビットコインに次ぐ規模の仮想通貨でイーサリアムがあります。“イーサ”は、ブロックチェーンを使う時にかかるガス代のコストが大きな問題になっているのですが、これを解決しようとポルカドットやアゴリック、シータなどの新しいチェーンが出てきています。

MF3d/iStock

少し遡ると、去年、仮想通貨やブロックチェーンが盛り上がってきた一つの大きな理由がDeFi(分散型金融)の流行がありました。この流れに続いてNFTを扱うマーケットプレイスとして、オープンシーやラリブルなどが出てきました。さきほどの“僕調べ”95%の詐欺やダメだった以外の5%に、DeFiやNFTのような本物のイノベーションが起きたわけです。

なので、ICOでよかったのはバブルが起きると、未知数のアグレッシブな領域に資金が集まります。多くはダメになるのですが、その中からピュアなイノベーションが生まれてくるのです。アメリカや日本で昔あったITバブルも同じだったと思うんですよね。

既存金融の「利権」壊す

【真田】NFTで、もうけようと思う人が世界中に群がり出ていますが、僕も95%ぐらいの人はNFTで損をすると思います(笑)。ただ、ICOブームの時は最初から詐欺目的みたいなものもありましたが、NFTに関しては、需給バランスからして値上がり続けることはないだろうというようなものもあるので、よく見極めないと最高値で買ってあとで暴落するものをつかんでしまうかなとは思います。

【國光】ただ、ICOの大きな本質は「資金調達の民主化」だと思います。要するに初期の段階から一般の投資家もイノベーション創出に参加できる。しかし、既存の金融システムでは、エアビーアンドビーが上場した際に時価総額が10兆円つきましたが、そこに至るまでの投資は、機関投資家やVCしか参加できなくて一般投資家は上場してからしか買えないんですね。ある意味、これって既存の金融機関の利権なわけですが、イーサリアムとかビットコインは、ごく初期はすごく安くて誰でも買えたわけです。

【真田】なるほど、株式投資と違って初期には誰しもチャンスがありますね。ただICOのリスクは決して小さくありませんね。

【國光】もちろん、投資家保護で足りない部分はありました。ただ民主化の功績はありますから、規制をかけまくるのではなくて投資家保護のルールを整えていくほうがいいと思います。実際、いまかなり整備されてきました。

【真田】いまはICOに続いて日本の法律に準拠したSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)がありますが、規制と技術がうまく融合していますか。

【國光】いや、役所のトップダウンで既存の枠組みの中でやろうとしたので、うまく機能してませんね。いまはボトムアップで動きが出ています。情報開示が不十分なまま一般の人たちにトークンを売り出そうとするのは問題なわけですが、その解決策も出てきています。

#2に続く

KLab株式会社創業者(同社会長)

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