「ナベツネ老害」読売新聞の異様なスポーツベッティング叩き、政界や報道他社はドン引き
連日猛反対のキャンペーンに「朝日新聞と違う気持ち悪さ」の声も- 読売新聞が政府で検討中のスポーツベッティング(賭博)導入に猛反対
- 経産省の素案を独自入手スクープも政府が否定。それでも連載スタート
- “ドン引き”気味の政府与党や報道他社。渡邉恒雄会長の意向取り沙汰
読売新聞が7日から連日、政府・与党内で導入を検討してきた「スポーツベッティング(賭博)」に猛反対するキャンペーンを始め、政財界や報道関係者の間で波紋を広げている。
選手の八百長行為やギャンブル依存症の問題を理由に挙げている「正論」を掲げているものの、自民党や、槍玉に挙げられた経産省、報道を横目にしている他メディアの報道関係者で額面通りに受け取る人は少ない。「プロ野球の権益への介入を嫌う、渡邉恒雄会長の意向がチラついている」と興醒めする向きすらある。

高野連まで引っ張り出して反対論
読売の「スポーツベッティング潰し」が始まったのは7日付の朝刊。経産省が、スポーツベッティングの解禁に向けて検討内容をまとめた素案を入手し、1面トップで報じた。政府の内部文書を独自入手して特報するまでは普通のことだが、記事はストレートニュースの範疇を大きく超え、まるで社説のように強い筆調で「八百長やギャンブル依存を招きかねないスポーツ賭博には反対論が強く、スポーツ界はじめ各界の猛反発は必至だ」と反対派を“煽動”。「一つの試合中に賭けの機会が数多く設けられることで、ギャンブル依存症患者の増加が懸念される」などとネガティブなトーンに終始しているのが特徴的だ。
筆鋒は1面で収まらず、3面の解説特集記事「スキャナー」では、スポーツ界の疑問や不安の声を大々的に紹介。日頃は読売と“犬猿の仲”の日本高野連の幹部まで登場し、「国民に真を問うべきだ」との意見を掲載する力の入れようだった。
最大部数紙によるセンセーショナルな報道に政府は困惑気味だ。松野官房長官は7日午前の記者会見で、読売記者から「スポーツベッティングの反対論が強いが、効果や意義についてどう考えているか」と尋ねられたのに対し、「現在、経済産業省ではスポーツについて研究会を開催をしているが、いずれの研究会においてもスポーツベッティングの解禁案を提示する予定はないと報告を受けている。具体的に何ら検討が行われていない中で、仮定に基づく質問に対してコメントすることは差し控えさせていただきたい」と言及を避けた。
一方、名指しされた経産省は、萩生田経産相が「私の知る限り、経産省で主導して直ちに(スポーツ賭博解禁を)実現したいという動きは全くない」と強く否定した(コメントは産経新聞より)。読売新聞は報道を否定されたものの、その日の夕刊1面では準トップの扱いで、萩生田氏の発言を報道した。
実際、「スポーツベッティングは自民党からの提案」(経産省関係者)だった。しかもその動きを初報したのは読売をはじめとする日本メディアではない。英フィナンシャルタイムズが昨年4月、コロナ禍でプロスポーツが大打撃を受けたことを背景に、日本政府関係者が、サッカーと野球のスポーツベッティング合法化に向け検討を始めたと報じた。
前述の関係者が指摘するように、この時期、自民党政策調査会にスポーツ立国調査会スポーツビジネス小委員会が設けられ、ミクシィなどネット企業やスポーツベッティング事業者を呼んでヒアリング。SAKISIRUも昨年5月にその動きを報じているが、読売は当時、特に反応しなかった。
「ナベツネを刺激した」説
自民党の発案であろうと、今回の報道で政府内でのスポーツベッティング検討の動きが鈍くなる可能性は強い。経産省の関係者はSAKISIRUの取材に「読売としてはスポーツベッティング潰しの目的を果たせたのではないか」と皮肉ったが、それでも読売は“追及”をやめないようだ。今度は8日朝刊1面で「検証スポーツ賭博」と題した連載を始めたのだ。
連載の第1回ではIT企業などがスポーツベッティングの新市場開拓に積極的だった経緯や、経産省が、日本経済に新たな産業の柱を生み出す狙いから導入に「前のめり」とリポート。そして、これに異議を唱えるべく、ギャンブル依存症の問題を挙げたり、「日本では健全なスポーツを育成するために、企業が資金や人材の面で貢献してきた歴史がある」と強調したりした。

ヒートアップするばかりの読売の反対論に他のメディアは“ドン引き”だ。大手ネットメディアの編集者は「ナベツネ、プロ野球、巨人というワードがちらつく」と苦笑する。8日までの紙面では「プロ野球」や「巨人軍」の文字は出てこないものの、経産省の審議官が推進団体の会合に出席した際、「海外ではスポーツベッティングなど新しいサービスがプロスポーツ界の新たな収益源になっている」と挨拶したことを取り上げており、読売が、プロ野球が賭けの対象になることを警戒していると受け止める向きが強い。
また、8日の連載記事では、経産省を槍玉にあげる中で、読売の反対するデジタル教科書の導入に積極的だったことに触れていたことに、政府関係者は「報道の仕方として異常ではないか」と苦言する。スポーツベッティングの推進派に、ソフトバンク、楽天、DeNAといったプロ野球界の新興勢力が加わっていることから、「新興チームの改革マインドがナベツネを刺激した」(自民党閣僚経験者)と“老害”ぶりを冷ややかに見る向きも出始めている。
フジ平井氏がコラムで“一矢”
読売の煽るばかりの反対世論の流れに“一矢報いる”動きも出てきた。フジテレビの平井文夫解説委員は「スポーツ賭博はダメなのに競馬や宝くじはOKな理由を誰か教えてくれ」と皮肉たっぷりのコラムを自社のネットニュースに掲載。読売の名指しこそ避けたものの、「八百長とギャンブル依存症の増加を心配する声があるがどちらもピンとこない」と所感を述べた上で、「いい大人が大勢集まって『八百長の防止』くらいできないのか?」「依存症が怖いのなら競馬もパチンコも全部やめないといけない」と言及。
さらにスポーツベッティング導入の理由に挙げられるスポーツ振興の財源の問題に触れ、「昔に比べると『部活』はすでに学校から地域に移行しつつある」「うまく育てていくためには人材と共に財源が必要で、スポーツ賭博も含めて柔軟に考えないとうまくいかないのではないだろうか」と、冷静かつ建設的に議論することを求めた。異論の先陣を切った平井氏に他社の報道関係者は「よく反攻ののろしをあげた」と目を見張るが、ギャンブル反対という「正論」が前面に出る上に、メディア界の最大実力者である渡辺会長に睨まれるのをはばかってか、ダンマリを決め込む他社の記者が多いようだ。
あるベテランの政治記者は今回の騒動について「読売新聞は朝日新聞と違う気持ち悪さがある」と呆れ気味に話す。国会では野党が通るはずもない内閣不信任案を提出。岸田首相がそれを受けて解散を断行して衆参ダブル選挙になるはずもなく、自民の圧勝が予想されている参院選を前に永田町は、政治も報道も“から騒ぎ”に終始している。
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(関連記事=連載:政府・与党内でスポーツギャンブル本格解禁の動き)
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