夏の高校野球 中止の決断を朝日に求める

「五輪中止」社説の覚悟、2つの試金石
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役
  • 朝日が全国紙の先陣を切って五輪中止を求める社説を掲載したが、覚悟は本物か?
  • 早くも五輪スポンサーは継続すると声明。経営陣のご都合主義にみえてしまう
  • 五輪と同時期の甲子園大会も中止する覚悟はあるのか?報道機関の覚悟が問われる

東京オリンピック開催に懐疑的な世論が高まる中で、朝日新聞が26日、「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」と題した社説を掲載した。すでに地方紙では信濃毎日新聞が中止を求める社説を掲載していたが、全国紙では先陣を切った格好だ。ただし、その社説を出す覚悟が本物なのかどうか2つの試金石がある。

bee32/iStock

ひとつは事業会社としての自社とオリンピックとの関わり合いだ。すでに週刊ポストのネット記事などをきっかけに、朝日を含む新聞各社がオリンピックのスポンサーとしてどういう腹づもりなのかをネット世論では問われていたが、どうやらその覚悟は全くなさそうだ。

編集と事業の「壁」を悪用

朝日は社説の反響を見越したかのようにコーポレートサイトで「オフィシャルパートナー」継続を表明した。その中では

2016年1月に大会組織委員会とオフィシャルパートナー契約を結んだことをお伝えした際、「オフィシャルパートナーとしての活動と言論機関としての報道は一線を画します」とお約束しました。朝日新聞が五輪に関わる事象を時々刻々、公正な視点で報じていくことに変わりありません。社説などの言論は常に是々非々の立場を貫いています。

などと、社説と事業は別、いわゆる新聞社内のファイヤーウォールを理由に挙げて切り離しを図っている。編集と事業のファイヤーウォールは、事業側や広告主などの都合で編集内容への不当な介入をさせないために、自主的に設けて運用しているというのが新聞社一般の通念だろう。

ところが、今回はこれを逆手に「悪用」したように見える。つまり、編集部から事業側への圧力を回避したというか、オリンピックが予定通り開催された場合に「おこぼれ」を逃すのではないかという、根本的に朝日の経営陣がファイヤーウォールを方便にした疑惑がぬぐえない。そもそも、そんなご都合主義をしてしまえば、社説は朝日を支持してきた読者の信頼を失い、記者個人の思いつき作文と化してしまうのではないのか。

変異株の脅威は甲子園も同じだが…

オリンピックのスポンサーを降りないわけだから、2つ目の試金石はなおさら怪しくなる。これもネット上では朝から噴出していたが、朝日はオリンピックと同じ時期に主催する高校野球の地方大会、そして勝ち上がったチームが戦う夏の甲子園大会は、コロナ禍のリスクがないとでもいうのか。実際、昨夏の大会はコロナを理由に戦後初の中止をした。結果としてはコロナの落ち着き具合をみて、非公式試合の交流戦は行ったが、ここにきて朝日社説がオリンピック中止の理由に挙げているように「変異株の出現で警戒の度は強まっている」(社説より)。

まさかオリンピックの中止を求めておき、昨夏より変異株の脅威が強まっている中で、高校野球を予定通りやるとでもいうのだろうか。

誤解なきように言っておくが、朝日がオリンピック中止を意見として社説に出すことは言論の自由だ。私とは意見が違うが、勝手にすればいいと思う。しかし、部数を落とし続ける大きなきっかけとなったのは、慰安婦問題の虚報をはじめとする信頼失墜があったことを忘れてはいまいか。上述した2つの試金石でダブスタに思われる結果に終わるならば、報道・言論機関を運営する朝日新聞社の本気度、覚悟がないものと思われてしまう。筆者が批判するのはその一点だ。正々堂々とスポンサーを降板し、甲子園大会を中止すべきだ。

 
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役

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