日本、気づいたら先進国最低レベル 〜 ベトナム、オーストラリアが最低賃金引き上げへ

いまや韓国が先行、背後は旧社会主義国ばかり...
ライター/SAKISIRU編集部
  • ベトナムとオーストラリアが7月から最低賃金引き上げへ
  • 日本は引き上げ率が長年低迷。かつての世界トップクラスがいまや…
  • アジアでは上位を維持するものの、10年後、20年後は…
ベトナム共和国建国の父、ホーチミンの肖像画を載せた紙幣(Holger Kleine /iStock)

ベトナム政府は12日、地域別に設定されている最低賃金を改定し、7月1日から最低賃金を月額で平均6%引き上げる政令を発布した。ベトナムの最低賃金の改定は、2020年1月に月額で平均5.5%引き上げられて以来、2年ぶり。

さらに、オーストラリアも、この7月から最低賃金を引き上げる。オーストラリアの労使裁定機関・フェアワーク委員会は15日、7月1日から最低賃金を5.2%引き上げることを発表した。これで、オーストラリアの最低時給は、21.38オーストラリア・ドル(約2010円)となる。最低賃金の引き上げは、今年5月に行われた総選挙で勝利したアンソニー・アルバニージー首相の選挙公約だった。

日本の最低賃金は韓国より下

日本では昨年7月に、最低賃金が全国平均で28円引き上げられて全国平均で930円になったが、先進各国と比べると、引き上げ率は非常に低い。

イギリスでは、2018年4月から最低賃金が7.83ポンド(約1290円)に引き上げられたが、2019年4月には8.21ポンド(約1350円、+4.9%)、2020年4月には8.72ポンド(約1440円、+6.2%)、2021年4月には8.91ポンド(約1470円、+2.2%)にそれぞれ引き上げられている。

アメリカもドイツもイギリスと同程度の引き上げ率で、それも毎年のように最低賃金が引き上げられている。ニューヨークの最低賃金は、2017年には9.7ドル(約1303円)だったが、今年1月時点で13.2ドル(約1770円)にまで上がっている。韓国も2018年1月に、それまでより16.4%増、2019年1月にはさらに10.9%増と、その2年間で一気に最低賃金を引き上げた。

対して、日本の最低賃金の引き上げ率は、全国平均で848円(2017年)→874円(2018年、+0.3%)→901円(2019年、+0.3%)→902円(2020年、+0.01%)→930(2021年、+0.3%)と、ほかの先進国と比べて異常ともいえるほど低い。

その結果、日本の最低賃金は韓国に抜かれて、世界14位にまで落ちた。2000年代初頭、日本の最低賃金は世界トップクラスだった。現在、OECDで日本より最低賃金が低い国には、旧社会主義国が目立つ。

なお、アメリカの最低賃金も日本より下だが、アメリカは国として決めた最低賃金のほかに、州ごとに最低賃金が決められている。前出のように、ニューヨーク州の最低賃金は、13.2ドル(約1770円)だ。OECDの統計は、国としての最低賃金を基に作られているため、見かけ上、アメリカの最低賃金が日本より低いように見えるだけだ。

y-studio /iStock

アジアの中では、依然トップクラスだが…

日本の最低賃金は、先進各国の中では最下位グループに入ってしまっている。しかし、OECD加盟国以外のアジアに目を向けてみると、日本の最低賃金は依然トップクラスのままだ。三菱UFJ銀行が発行する「BTMU Global Business Insight」によると、アジア・オセアニアの各都市の最低賃金を比べると、日本(この調査では横浜市)より最低賃金が高いのは、オーストラリアのシドニーと、ニュージーランドのオークランドだけだった。

とはいえ、冒頭のベトナムのように、アジア各国もこのところ、軒並み賃金がアップしている。日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、2020年度から2021年度の1年間だけで、パキスタンが8%、インドが7%、バングラデシュが6.4%、ミャンマーが6.1%、それぞれ賃金が上がっている。

もちろん、これらの国々は、まだ日本よりは最低賃金も平均賃金もかなり低い。しかし、年々、高いレベルで賃金が上がっていることは事実だ。対して、なかなか賃金が上がらない日本。10年後、20年後、日本はアジアの中でも賃金が安い国になってはいないか、杞憂であれば良いのだが…。

 
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