参院選目前「長崎の変」に政界震撼…最年少知事失職にらみ有名選挙コンサルタント刑事告発
402万円の違法な対価?郷原弁護士&上脇教授がタッグで告発- 長崎県知事選で違法な対価の疑いで有名選挙コンサルが刑事告発される
- 告発したのが政治・選挙コンプライアンスの第一人者、郷原弁護士と上脇教授
- 捜査の結果次第では、当選したばかりの知事失職シナリオも…。
今年2月の長崎県知事選で初当選した大石賢吾氏(39)の陣営から、公選法で禁止する選挙運動の対価を得た疑いがあるなどとして、選挙を支援した選挙コンサルタントと陣営の出納責任者の2人について、刑事告発の動きがあることが17日、明らかになった。
ヤフーニュースでは17日夜の時点では長崎県のローカル報道にほぼとどまっているが、政治資金コンプライアンスの専門家として名高い郷原信郎弁護士と上脇博之神戸学院大教授がタッグを組んで自ら告発人に。そして告発された選挙コンサルタントが、ヤフーニュースの公認専門家としても知られる大濱崎卓真氏(34)とあって、政界・選挙業界の関係者の間で全国的な衝撃が広がりつつある。

疑惑の電話代
郷原氏と上脇氏はこの日オンラインで記者会見し、長崎地検と協議の上で前日までに提出した告発内容を説明した。奇しくも検事時代、同地検で次席検事を務めたこともある郷原氏だが、正式に近く受理される段階に向けて手続きに入っているという。
告発状によると、大石知事が選挙後、県選管に提出した選挙の収支報告書では、投開票日から8日後の2月28日、大濱崎氏が経営する都内のコンサル会社に対し選挙運動に使った「電話料金」として402万82円を支払ったことを計上している。報告書には同じく「電話料金」として地元ケーブルテレビ局などに支払った5,304円〜5万2,806円も記載されているが、大濱崎氏への支払いは金額が突出している。
郷原氏らの調べでは、402万円もの電話代について大濱崎氏は知人に対し、いわゆるオートコールと呼ばれる機械式の電話で有権者に候補者への投票を呼びかけるサービスを利用し、「機械的に電話発信をする方式で、何万件何十万電話かけた費用」との説明をしているという。
オートコールによる選挙運動そのものは、陣営があらかじめ用意した投票呼びかけの録音を流すだけの“単純業務”にあたるため公選法上も問題はないが、問題は大濱崎氏の会社が電話事業者ではないことだ。同社が登記している事業内容には電話関連業務は含まれておらず、仮にオートコール業者への支払い経費だったとしても、候補者から対価を得て、有権者への投票働きかけを行なったことになる、と告発状では主張している。
郷原氏「選挙コンサルのあり方提起」
収支報告書に添付された402万円の裏付けとなる領収書は、大濱崎氏の会社名義のみで、オートコールの事業者について記載されていない。さらに深刻なのは、そうした形式的な問題にとどまらない疑いがあることだ。

郷原氏らは大濱崎氏が知人に話した内容の証拠を入手しているともいう。それによると、選挙情勢調査の費用が含まれていることを説明しているといい、大濱崎氏が動画番組で選挙運動を統括していたことを明らかにしていたことから、告発状では「選挙運動の対価として支払われたものであることは疑いの余地のない」と主張。全県規模の知事選では異例の500票差あまりでの勝利に大濱崎氏が貢献したことから「選挙運動の成果に対する『成功報酬』も含まれている可能性もある」などとして、その場合は選挙運動の対価に加えて、収支報告書で虚偽記載をした疑いもあると指摘している。
それにしても知名度のある選挙コンサルタントが刑事告発される異常事態だが、今回のように選挙コンサルが絡む選挙収支に違法な疑いが出てくること自体、政治資金や選挙資金の資料を長年分析してきた上脇氏でも「今まで見た中ではこういうのは初めて」という。郷原氏は「選挙コンサルの業務のあり方について問題提起する意味もある」と今回の告発に至った一因を説明する。
現在の公選法では選挙期間中のコンサルティング行為について候補者や陣営が支払いをすると、たとえコンサルの中身が高品質で価格が適正であっても、公選法が禁じる「選挙運動の対価」となり買収罪に抵触する可能性が強い。
そこで選挙コンサルは選挙前に行う情勢調査や、政治活動への助言を行う形式にして報酬を得ており、「選挙期間中はボランティア」(ベテラン選挙参謀)にしているのが通例だ。郷原氏も「(まともな)選挙コンサルの人たちは公選法を相当意識し、選挙期間中の対価で買収にならないように節度を持って活動している」との認識を示す。
今週の県議会で知事は…
2月の長崎県知事選は保守分裂の激しい選挙戦となり、新人の大石氏が、3期務めた現職の中村法道氏を、541票という歴史的な僅差で破って勝利。全国最年少の39歳の知事誕生として中央のメディアでも取り上げられた。
しかし選挙での遺恨もあってか、実は選挙後の刑事告発騒ぎが起きるのは今回が初めてではない。ここまで長崎ローカルの報道にとどまっているが、3月の県議会では大石知事の経歴詐称疑惑が県議に追及される事態が起き、市民団体が大石知事を、公選法違反(経歴詐称)の疑いで告発状を県警に提出。大濱崎氏の402万円の問題はこの時、一緒に届けられている。

さらに今週14日の県議会では、一般質問で再び402万円の問題が取り上げられ、大石知事は大濱崎氏について「普段から話をする“取引先”」と認めたものの、「選挙運動に関して費用は発生したことはない」と疑惑を否定した。市民団体らが先行した告発の動きは「調査が素人レベルで地元メディアには相手にされていない」(関係者)。郷原氏も市民団体の告発状を入手した上で、「何が具体的に誰の犯罪事実なのかということが明確に特定されて書かれているものではなかった」と指摘する。
しかし新たな告発は、数々の政治・選挙コンプライアンスの世界で「最強のツートップ」(政界関係者)とも言える郷原氏と上脇氏がタッグを組んで自ら実施。郷原氏は横浜市の山中竹春市長のパワハラ・経歴詐称疑惑を追及し続け、上脇氏は広島県の元国会議員夫妻を大型買収事件で刑事告発するなど、政界が震え上がるビッグネームの参戦となる。
知事失職のシナリオも
長崎地検次席検事時代、自民党長崎県連の違法献金事件の捜査指揮をとった郷原氏によれば、告発状が正式に受理された後の捜査について、証拠も十分にそろっていることから、他県から応援検事を多数呼ぶほどの「手間はあまりかからない」という。
一方で、この日の記者会見で地元記者が気にしていたのは、捜査の結果、有罪が確定した場合には今年2月に就任したばかりの大石知事が連座制で失職するシナリオだ。郷原氏は、記者からその可能性を尋ねられると「そうなります」と断言。複数の地元テレビ局は今後の事態を想定してか17日夕から会見の模様を速報するなど高い関心を示した。
ヤフーニュース個人のオーサーページによると、大濱崎氏は1988年生まれ。青山学院大学を中退後、22歳になる年に会社を設立し、国政・地方選を多数手がけてきた。
複数の政界関係者によると、自民党の麻生派や岸田派の若手議員、都民ファーストの都議など与野党問わずクライアントを持ってきた。中高年が圧倒的に存在感を示す選挙の世界にあって30代と若いことからメディア露出も多いが、昨年の衆院選に際し、自民党二階派の有名な若手議員が選挙区では公認されないとの見通しを書いたものの、結局公認される事態も。ベテランの政治ジャーナリストは「取材が甘い。上っ面で仕事をしている」と手厳しい。
SAKISIRU編集部は17日、大濱崎氏の会社に今回の告発について取材メールを送ったが、期限までに回答はなかった。今後コメントがあれば紹介する。
参院選目前に浮上した全国最年少知事と有名若手選挙コンサルの疑惑。長崎県は国に対し、ハウステンボスにカジノなどの統合型リゾート施設(IR)誘致を正式に申請。横浜市や和歌山県などでIRの見送りが相次ぐ中、「政治利権で最後の秘境」(政界関係者)ともささやかれており、現地のみならず、永田町の政治・メディア関係者も選挙後の行方に固唾をのんで見守る展開になりそうだ。
■
【追記 21日8:00】大濱崎氏は18日、毎日新聞の取材に対して「報酬は含まれておらず公選法には抵触しない」と反論した。これに対し、郷原氏は20日、ツイッターで「なぜ、その個別の支払を収支報告書に記載し各領収書を提出しないのか、選管に提出された選挙コンサル会社名義の領収書の「ほか」は何を意味するのか。その点についての説明は、未だにない」と指摘した。
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