それでもその男がまた「尖閣」へ行く理由 〜 中国当局公船監視の中、漁とライブ配信決行!

上陸回数16回、書類送検13回…漁師の市議が訴える危機感
ノンフィクション作家/フリーライター
  • 尖閣諸島に通い続け、5日前にも行ってきたばかりの仲間均氏にインタビュー
  • 6月18、19日尖閣での漁決行の模様。中国公船以外にも「厳しい」現実とは?
  • 危険を承知で仲間氏は島に通い続けるのはなぜか。仲間氏が語る思い

日本の国境に位置する尖閣諸島に通い続ける男がいる。沖縄県石垣市議会議員、仲間均氏(73)。1994年の初当選の後、調査等の目的で尖閣諸島に通い始めた仲間氏。これまでに上陸した回数が16回、書類送検が13回、罰金が1回(10万円)を数えている。2014年以降、尖閣での漁に専念している仲間氏は中国海警局の公船を毎回見かけている。

6月18日~19日、仲間氏は現場海域での漁とライブ配信に臨んだ。携帯電話の電波が届かないエリアだけに使うのは、通話料がすさまじく高額な衛星携帯電話。現場で中国公船から攻撃を受けたりすることはなかったのか? ライブ配信は成功したのか?

仲間均氏と尖閣行きで使った「鶴丸」(撮影筆者)

尖閣での漁「厳しい」別の理由

仲間氏を含む4人(うちひとりは医師)が鶴丸(9.1トン)に乗り込み、石垣市登野城港を出港したのは6月18日午前9時のことだ。波の高さ約1.5メートルとややシケている中での出港だった。

約170キロ北北西に位置する尖閣諸島の南小島の接続水域(島から12海里~24海里の水域。領海の外側にある/1海里=1.85キロ)に鶴丸が到着したのは午後2時40分ごろ。

「南小島の南側でアカマチを狙いました。これは水深250メートル付近にいる高級魚。大潮かつ潮流が早かったので、餌がアカマチがいる水深まで届かない。そこで南小島から80~1000メートルの海域(深さ約100メートル)に移動して、マーマチを狙いました」

その模様はユーチューブでライブ配信(18日午後5時半~6時ごろ)された。

「衛星電話の機材ではコマ送り映像が限界でした。音を同時に流すことも出来ませんでした」と仲間氏は残念がる。

6月19日、漁労活動に従事する仲間均氏(YouTubeより=仲間氏提供)

朝の漁に備え、南小島沖で、午後8時ごろから朝まで停泊する。

翌19日朝5時、船は20キロも流されていた。そのため1時間ほどかけて元の南小島の南側まで戻り、6時ごろから2回目のマーマチ漁に臨んだ。7時から30分ほど2度目のライブ配信を行い、9時20分ごろに石垣島へと引き返した。そして登野城港に戻って来たのは19日の午後6時半頃だった。

マーマチは50キロ。あとはアーラミーバイ(クエ)が10キロほど。マーマチはキロ8000円ぐらいの値段でした。

魚が売れたかどうかは別として、これでは厳しい。出港するにあたってかかった船の整備費用や高騰する燃料代、そして後日請求が来る何十万円もの、衛星電話の通信費がかかるからだ。

異常な緊張感でせめぎ合う日中公船

仲間氏の5月9日映像より。中国公船の異常接近を食い止める海保の巡視船

現場海域での中国海警局の公船や海上保安庁の巡視船の動きはどうだったのか。

中国公船が2隻、接続水域に待ち構えていました。3000~4000トンクラスの砲台を備えていない船でした。一方、海保の巡視船5隻(180トン型の高速巡視船)が鶴丸を包囲して警護してくれました。あとはそのまわりにPL(1000トン型)が3~4隻いました。

5月9日に操業したときは、中国公船に約40メートルまで異常接近され、艦橋にいる乗組員2人によって撮影された。それはウクライナ軍事侵攻下の示威行為だったのかもしれない。ところが今回、全然近づいてこなかった。

ユーチューブでのライブ配信をすると、事前にツイッターで告知をしていましたからね。中国側はライブ配信で撮られるのを警戒したんでしょう。一番近付いてきても500メートルは離れていました。「ここは中国の領海だから日本の漁船は出て行け、漁船は入るな」という警告文を電光掲示板で、赤い文字で流しているだけでした。途中からもう1隻、応援に入ってきましたが、その2隻以上に遠くにいたままでした。

中国公船が鶴丸に近付くことはなかった(6月19日、YouTubeより=仲間氏提供)

常駐しはじめた2012年秋直後は汽笛を鳴らされたり、10メートル近くまで接近してきて、中国語で警告放送をされたりもした。遠巻きに見ているということは、当時に比べると、それだけ控えめになったということか。

とんでもない。以前は漁を終えて石垣へ帰るときに追いかけてくるというのがパターン化していました。我々の船がいよいよ帰るというときに、後をつけてきて、「中国公船が日本の漁船を追い出す様子」を映像におさめていました。

ところが昨年12月ぐらいから、手法を変えて、今は我々が来るのを最初から接続水域で待ち構えていて、我々の船と一緒に日本の領海内(その国の海の領域。沿岸から12海里以内)に躊躇なく入ってくるようになりました。四六時中、追いかけてくる。要は領海に躊躇なく入ってくるということ。もう自分たちのものだと言いたげな動きです。今や尖閣の接続水域にいるのが当たり前の状態。中国にもはや乗っ取られていると言っても過言ではありません。

「行き続けることが領土を守ること」

では今回、何時間ぐらい追いかけられたのか。

18日の午後2時40分から、翌日の午後2時まで。だから24時間弱。我々が動くと海保も中国公船も動きます。中国公船は我々の船に近づきたい。しかしそれをさせまいと海上保安庁が動き続ける。海上保安庁も、拿捕されたら大変だと思って必死に守ってくれました。

日中両国の公船による、異常な緊張感の中でのせめぎ合いが、国境の海を舞台に繰り広げられているのだ。

巡視船の奥に見える魚釣島(6月19日、仲間氏ブログより)

気になるのは今後のことだ。ますますエスカレートし、それこそ南沙諸島のように中国公船が漁船を拿捕したりすることも考えられる。

過去には、竹島も北方領土も、日本の漁民が拿捕されていますし、攻撃を受けて死者も出ています。尖閣もそういう形にだんだんなりつつあります。

危険を承知で仲間氏は島に通い続けるのはなぜか。

日本の漁船が尖閣に行かなくなったら終わりですよ。島自体が中国に乗っ取られると思います。だから、こうして行き続けることが、日本の領土や領海を守るということですし、こうして尖閣の現状を国民に広く知ってもらうことが大事だと私は思っています。

そのためには、魚がブランド化して高く売れるようして、たくさんの漁民が尖閣へ向かう状況を作り出さねばならない。だから商標登録をつけて、はい、付加価値を上げて値段を高くしようというのが今の私の戦いなんです。

台湾有事より「尖閣の方が早いかも」

「尖閣の現状を国民に広く知ってもらうことが大事」と語る仲間均氏(撮影筆者)

世界の軍事費の中国の割合は1990年が1.06%だったのが、2021年は14.12%と急増している(参考:世界軍事費ランキングとパワー・バランス)。

1870年代に明治政府が行った琉球処分で琉球王国はその歴史に幕を閉じた。王国の親中国派は処分をさせまいと清国を頼った。歴史的に中国大陸との縁が深い沖縄だけに、逆に中国はかつての冊封体制の時代感覚を引きずるように、沖縄を自国に組み込める“潜在的な領土”と見なしているフシがなくもない。

こうした、“潜在的な領土”という考えが拡大解釈され、ウクライナに侵攻したロシアのように、中国が沖縄を軍事的に支配してしまう可能性はゼロではない。そして尖閣には自衛隊員や警察官、誰もいない文字通りの無人島だ。

尖閣に常駐する中国公船に接近され、危機感を肌で知る仲間氏は言う。

中国が台湾と尖閣同時に侵攻すると私は思っています。もしかしたら尖閣の方が早いかも知れません。

今は米軍基地があるので、沖縄本島自体への侵攻は不可能だ。しかし無人で基地のない尖閣を台湾侵攻のドサクサで占領を試みるかもしれない。きょう23日は、先の大戦で日本軍が沖縄での組織的戦闘を終えたとされ、県内が戦没者を鎮魂する「慰霊の日」。ウクライナ侵攻で尖閣占領のシナリオが現実味を増す中、沖縄に新たな戦火が訪れないことを祈るばかりだ。

(参照:YouTube「仲間均ちゃんねる」)

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