BTS活動休止報道:兵役めぐる思惑、ファン以外で彼らの軍隊入りを望まないのは誰か
デビューからの経済効果5兆円超の試算も...- 韓国の人気グループ「BTS」活動休止報道の背景に見える思惑とは?
- 活動休止の背景に兵役制度。兵役法改正案もあったが、入隊時期が問題に…
- 10年間の経済効果は5兆円超の試算も。誰がBTSの兵役を望まないのかといえば…
韓国の人気グループ「BTS」が6月14日、ユーチューブチャンネルで“活動休止”を発表した。この報道に世界中のファンが悲しみに暮れる中、さらには解散説まで飛び出し、グループと所属事務所のHYBE(ハイブ)は当面の間、ソロ活動を展開するだけだとし、活動休止説や解散説を払拭しようと躍起だ。

透けて見える「兵役後」の戦略
そもそも活動休止が報じられたのは、ユーチューブ動画におけるBTSの発言から。リーダーのRMが「BTSを長く続けるためには、自分ひとりに戻る時間が必要」とグループの活動休止をほのめかせば、メンバーのVも「グループ活動ばかりだったから、ソロで活動して再び集まれば、シナジー効果が出ると思う」と、RMの発言に賛意を示した。
さらにRMは「韓国のアイドルシステムは人として成熟するための時間を与えてくれない」などと、休息の必要性も訴えた。アジアの人気アイドルに過ぎなかったBTSが、この数年で全米NO.1ヒットを連発するなど、世界的なスーパーグループに成長したことを考えると、「さもありなん」と思われる向きもあるかもしれない。だが、今回の報道の背景にあるのは言うまでもなく兵役問題である。
知っての通り、韓国では成人男性は28歳の誕生日までに軍に入隊し、約20カ月間の兵役に就かなければならない。それはBTSのメンバーにとっても例外ではなかったが、2020年12月、大衆芸術分野のアーティストに2年間の兵役延期を認める兵役法改正案が可決された。これは当時28歳だったジンの兵役を意識した法改正で、別名“BTS法”と呼ばれたものだった。だが、その延長期限も今年の12月には切れてしまい、待ったなしの状況。つまり、BTSが7人全員の“完全体”として活動できるのもあとわずか。今回の“活動休止報道”からは、兵役後のBTSの戦略が透けて見えるのだ。

現在、BTSは最年長で29歳のジンから最年少で24歳のジョングクまで、兵役を視野に入れる年齢にさしかかっている。たとえば、それぞれが30歳で入隊したとしたら、兵役を終えてグループ全員が揃うのは最長で5年後になってしまう。さすがにそれは考えづらく、各メンバーの入隊時期を調整して、メンバーを欠く期間を極力短くすることになるのではないか。
たとえば同じK-POPグループのSUPER JUNIORなどは、兵役を終えてグループ全員が揃うまでに10年もかかっている。BTS側からすれば、こんなことは是が非でも避けたいところだろう。そう考えると極端な話、全員が同じ時期に入隊すれば、最短の20か月で全員が揃う。もちろんその間、グループは活動休止せざるを得ないが、今回の報道はその布石ではないだろうか。それが言い過ぎだとしても、活動休止を匂わせたら世間はどんな反応を示すかを知るために打ち上げた“観測気球”だと言えはしないだろうか。
“一大輸出産業”の行方左右
BTSの兵役問題については、かねてから議論となってきた。スポーツ界や芸術界には国際大会で一定以上の好成績を残せば兵役が免除されるのに、ポピュラー音楽などエンタメ界にはそうした恩恵がない。しかし、K-POPはいまや国を挙げての“一大輸出産業”である。ましてや全世界規模でブレイクしたBTSは、これほど韓国という国家に貢献しているのに、兵役が免除されないのは不公平だという議論だ。
一方で、有名人だからといって兵役を免除されるべきではないとの声も根強い。まさに国を二分する議論であるわけだが、前述のBTS法はそうした妥協の産物と言えるだろう。だが、議論が白熱する中、当のBTSとしてはメンバーのジンが「国からの招集があれば、兵役にはメンバー皆が応じる予定です」 と語るなど恬淡としている。彼らからすれば下手に兵役が免除されてしまうと、常に模範的な振る舞いが求められるなど、彼らの活動に手枷足枷をはめられ不自由なものになってしまう。

では、誰がBTSの兵役を望まないのかと言えば、それは韓国政府と所属事務所のHYBEである。韓国文化観光研究所によると、一昨年に米ビルボード100で1位を獲得した“Dynamite”の経済効果は1兆7,000億ウォン(約1,660億円)だと試算されている。また韓国現代経済研究院は、BTSが今の人気を維持てきれば13年のデビューから23年までの10年間で56兆ウォン(約5兆4,000億円)を稼ぎ出すはずだという。実はBTSの兵役免除で恩恵を受けるのは、彼らを外貨獲得と国威発揚の手段と考える韓国政府なのだ。
HYBEにしても、同事務所の昨年の売り上げに占めるBTSの割合は67%に達するほどだという。つまりHYBEは多くをBTSに依存しており、彼らは事務所の浮沈を左右する存在でもあるのだ。それだけに今回の報道には株式市場も大きく反応。15日のHYBEの株価は前日比25%安の14万5000フォンまで急落、時価総額は1日で1兆9850億ウォン減少したことになる。同事務所が活動休止報道の火消しに努めるのは、当然といえば当然である。
その後、25%急落した株価は翌16日の終値が14万8000ウォンで、報道を否定しても前日比でたった2%戻したに過ぎない。つまり、市場はHYBEの報道否定に懐疑的な目を向けているということであり、BTSの兵役騒動はまだまだ予断を許さない。
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