「乙武さんもいろいろありました」渋谷区長の一言に、本人は神妙な面持ち

【参院選2022:大激戦東京ルポ】センター街の事務所前は大騒ぎ
ライター・編集者
  • 参院選激戦区東京、注目の乙武氏の第一声の模様
  • 「乙武さんもいろいろありました」渋谷区長の応援に神妙な面持ち
  • 「東京はバリアフリーが進んでいるなんていわれますが…」支援者の思い

障害があるから仕事が持てない、LGBTQの当事者だから結婚ができない、海外ルーツを持っているから部屋を借りられない、お金がないから進学ができない。こんな風にあきらめる必要のない社会にしていきたい。そのためには選択肢を増やしていく。選挙を通じて、しっかりやっていきたい。

第26回参院選が22日に公示され、7月10日の投開票に向けた選挙戦の火蓋が切られた。冒頭の発言は、東京選挙区(改選定数6)から無所属で出馬する乙武洋匡氏の“第一声”だ。手話通訳が付いているところが乙武氏らしい。今後は公式の会見などでは、必ず手話通訳を付けるのだという。

出馬をけしかけたあの著名人

神妙な面持ちの乙武氏(筆者撮影)

第一声の舞台に乙武氏が選んだのは、東京・渋谷のセンター街。自身の選挙事務所前だ。そして、この日の出馬挨拶には地元・渋谷区の長谷部健区長が応援に駆けつけた。長谷部区長は「ちがいを ちからに 変える街」をキャッチフレーズに掲げ、多様性に富んだ街づくりに取り組んでいるが、乙武氏はそんな渋谷区に共感して事務所をこの地に構えたという。

長谷部区長は応援演説の中で乙武氏の多様性への理解について賞賛しつつ、「乙武さんもいろいろありました。しかし、再び立ち上がろうとする姿を見て、背中を押して上げたいと思いました」と発言。そして、その言葉に対して神妙な面持ちで頷く乙武氏。言うまでもなく、16年に週刊誌で報じられた自身の不倫騒動の顛末だ。

当時、自民党から参院選に立候補する予定だった乙武氏は、この一件で出馬を断念せざるを得なくなった。その意味で今回の出馬は6年越しの夢であり、この日を迎えられたことは感無量だろう。「この6年間は悔しくて、最初の4年は政治のことはあえて考えないようしていたぐらい。それでも、こんな私に期待してくれる人たちもいて、もう一度チャレンジしようと考えました」と振り返る。出馬しようと腹を決めたのは、年末のことだったという。

ひろゆきさん(実業家の西村博之氏)と飲んだときに、やたらと出馬をけしかけられまして(笑)。また、40歳を過ぎて若い頃断念したJリーガーになる夢を叶え、その後は格闘家に転じて挑戦を続ける安彦考真さんの姿にも背中を押されました。今回の出馬は、この2人の存在が大きかったですね。もちろん支援者の方々の存在は言うまでもありませんが。

事務所隣のケバブ屋「一体何の騒ぎ?」

センター街という日本でも有数の人通りの多い場所だけに、事務所の前には報道陣だけでなく、多くの人々が集まっていた。

道行く若い女性2人組は「誰だか知らないけど、なんか見たことあるし」と会見する乙武氏にスマホを向ければ、事務所隣のケバブ屋の外国人店主は「アンタらが店の前に集まるから仕事にならないよ。一体、何の騒ぎなの?有名な奴でもいるの?」と憤懣やるかたない様子。そんな中、支援者と思しき車椅子の男性に話を聞いた。

東京はバリアフリーが進んでいるなんていわれますが、それは健常者の肌感覚でしかありません。実際には、我々にとって不便な場所はいくらでもあります。しかし、健常者中心の社会では、我々のような少数派の障碍者の意見や要望は通りにくい。車椅子でも不自由なく快適に過ごせる社会が実現するためには、乙武さんのような我々の気持ちがわかる人に当選してもらわないと。

有権者の記念撮影に応じる乙武氏(筆者撮影)

第一声を上げた後は、ゴールの国会議事堂へ向けて5キロの道のりをボランティアスタッフらとともに、自身をアピールしながら練り歩いた。歴史的な大激戦となっている東京選挙区。乙武氏は無所属だけに苦戦が予想されているが、長くて熱い戦いは始まったばかりだ。

東京選挙区(定数6)の候補者(敬称略)は以下の通り(政党は参院の議席数順、続いて諸派、無所属。数字は当選回数)。

  • 自民:朝日健太郎①、生稲晃子(新人)
  • 立民:蓮舫③、松尾明弘(新人)
  • 公明:竹谷とし子②
  • 維新:海老澤由紀(新人)
  • 共産:山添拓①
  • れいわ:山本太郎①
  • 社民:服部良一(新人)
  • N党:猪野恵司(新人)セッタケンジ(新人)田中健(新人)長谷川洋平(新人)松田美樹(新人)
  • ファ(国民推薦):荒木千陽(新人)
  • くにもり:安藤裕(新人)
  • 参政:河西泉緒(新人)
  • 第一:菅原深雪(新人)
  • 維新新風:河野憲二(新人)
  • 幸福実現:及川幸久(新人)
  • 参政:河西泉緒(新人)
  • 自由共和:青山雅幸(新人)
  • 諸派:沓澤亮治(新人)桑島康文(新人)後藤輝樹(新人)小畑治彦(新人)込山洋(新人)斎木陽平(新人)田村真菜(新人)内藤久遠(新人)中村之菊(新人)
  • 無所属:油井史正(新人)乙武洋匡(新人)中川智晴(新人)中村高志(新人)

 

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