公共政策を推進するアプローチ手法とは?ロビイストの業務を因数分解
「企業から社会を動かす行動学」第4回- 人それぞれなロビイストの定義や仕事術。きめ細かく語るために業務を因数分解
- 公共政策を推進するアプローチ手法として重要な3つのポイント
- RULE、APPEAL、DEAL…筆者所属先で採用する「5L」というアプローチ法とは
連載4回目です。前回の連載の最後に、私は次の通り書きました。
21 世紀最もセクシーな職業はデータサイエンティストといういわれ方をよくします。筆者は、ロビイストもそれに匹敵すると思っています。
これは10年以上の私の持論なのですが、これについていろんな人から仕事の方法論をぜひ教えてほしいといわれました。ロビイストの定義、仕事術というものは、これに携わる人にとって考えが大きく異なるのです。一方で、その割に、他の職種と比べると、きめ細かい粒度での仕事術や仕事の素養が語られてはいない気がします。 それを語るためには、まずは、仕事の業務を因数分解してみましょう。
ロビイング・パブリックアフェアーズの定義
話を進めるために、5月27日に経済産業省が出した調査報告書中の「新市場創出サービス」の定義を借りて、以下の活動と定義する(各企業等の担当者が自ら行う場合とそ れらを専業とする専門サービス提供者の場合の双方を指す)こととします。
中長期的な社会・経済の流れを利用して、問題設定やストーリーテリング等を通じて ステークホルダーの共感を獲得し、協力を集めることで、企業などが目指すイノベーションの社会実装に必要な外部環境(規制、基準、規範、共通認識等)の構築を推進する。
アプローチ手法として何があるのか
(1)総論
法制度、商慣行、社会の評価などの外部環境は「所与の前提条件」でしたが、それを「可変の構想対象」と捉えたうえで戦略をとる『非市場戦略』をとることが必要です。手前味噌ですが、私が所属するマカイラ株式会社では、5つのLと整理しています(後述)。
アプローチ手法として重要なのは、以下の1、2、3の3点です。ただし、他の領域での営業やプ ロジェクトマネジメントで進化した体系的な手法を取り入れ切れておらず、まだまだ改 善・進化の可能性はあります。
- 狭義のロビイングはあくまでもラインナップの一つにすぎないこと、総合的な素養が求められる業務であること
- すべてのアプローチに共通し重要な要素はコミュニケーション戦略であること、渉外活動の基本は『営業』と変わらない、あるいは、究極の営業ということ
- 社会課題を解決するために必要となる新たなルールや構想等を実現するためのプ ロジェクトマネージャーであること
(2)5L アプローチ
以下の5つから構成されますが、末尾(近く)をとって5つのLと説明しています。
①RULE
法令やガイドライン、業界自主ルールなどの制定・改変を目指した活動(政策リサーチ、政策プランニング、個別課題に対する政策提言等を関係者へ打ち込み・ロビイングなど) 例)従来の規制では想定していない事態、空白地帯になることへの具体的な提案提出 と懸念点への宿題返し(民泊新法の制定、キックボード解禁など)
②APPEAL
社会の共感・支持を獲得するための活動(イベント/シンポジウム企画、メデ ィアリレーションズ、SNS、キャンペーン、ブランディング、公共非営利マー ケティング等) 例)業界団体の設立とこれに伴うPR活動(Website 構築、設立シンポジウム 開催とメディアカバーなど) 地域振興のためのブランド開発(魅力・訴求ポイントの再定義、ロゴ、 タグライン等の制作)
③DEAL(トライセクターコーディネーション)
公的機関、民間企業、非営利団体等との個別の合意・行為のとりつけ 例)自治体-企業間の連携協定に向けた関係者間の交渉と協定締結 NPO-企業での実証事業の実施に向けた関係者間の交渉と実装
④REAL
社会環境整備、社会課題解決のための、実事業の構想・立ち上げ 例)事業開発、コンソーシアム組成 ファンディング支援
⑤IDEAL
基盤となる社会・政策構想の理論化・体系化(社会・政策研究、メディア運 営・発信等) 例)マネーフォワード社の Fintech 研究所の設立
次回予告
上記で整理されたアプローチ手法に沿ってロビイングやルールメイキング業務に求めら れるそれぞれの素養などを書いていきます。
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