経済も動かせず、感染も封じ込められず…菅政権のコロナ対応ますます隘路に
ワクチン接種終了時は次の首相?- 緊急事態宣言再延長。菅政権のここまでのコロナ対応を、磯山友幸氏が総括
- 1~3月期のGDPは米国と対照的にマイナス。緊急事態再延長でさらに深刻化か
- ワクチン接種を起死回生策にするも大混乱。効果が見えるまで政権が持つか
菅義偉政権の新型コロナ対策が隘路にはまっている。政府は5月28日、全閣僚からなる新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、9都道府県への「緊急事態宣言」を6月20日まで延長することを決めた。5月の大型連休中の「短期決戦」で新型コロナの「第4波」を抑え込むとしていたが、感染は思うように収まらず、結局、5月末まで延長したが、それでもやはりダメで、再延長となった。

先進国で最も経済的打撃?
緊急事態宣言は思うように効果を上げていない。「人流」を抑えるとしているものの、連休明け以降はむしろ増加傾向で、休業要請に従わない店舗も増えている。人の動きを抑えると言いながら、大型イベントなどは開催を許すなど、対応はチグハグだ。今回も「とうてい解除できる状況にない」という専門家の声を聞いて「延長」を決めたが、厳しい休業要請などはむしろ緩める方向にならざるを得ず、今後も感染が急速に収まることはないという諦めムードが官邸内にも広がっている。
一方で、経済への打撃は深刻だ。昨年4月の1回目の緊急事態宣言での休業は大打撃だったとはいえ、多くの企業、店舗が何とか乗り切った。政府の支援金が奏功した面もあるが、過去からの蓄積を食い潰したところも少なくない。その後、1年にわたって自粛が繰り返されたため、今回の延長で「いよいよ経営がもたない」という悲鳴が聞こえる。
日本の1−3月期のGDP(国内総生産)は前期比年率5.1%減とマイナス成長に沈んだ。2020年4-6月期に28.6%減と大きく落ち込んだ後、7-9月期は22.9%増、10-12月期も11.6%増と回復傾向にあったが、1月からの2回目の緊急事態宣言がきき、マイナスに転じた。米国の1-3月期が6.4%増と3四半期連続のプラスになったのとは対照的だった。しかも、今回の緊急事態宣言延長で、4-6月期もマイナス成長になるとの見方が出始めている。
飲食店ばかりでなく小売店やサービス業など多くの店舗、企業にボディーブローのようにきき始めており、先進国の中で日本が最も深刻な経済的打撃を受けるのではないか、という声も出てきた。
「ワクチン」起死回生を図るも…

経済も動かせず、感染も封じ込められない菅政権への批判の声は日増しに強まっている。一方で、東京オリンピック・パラリンピックについては「安全・安心な大会を目指す」と頑なに言い続ける菅首相に怨嗟の声が上がる。緊急事態宣言の効果が明らかに落ちているのも、国民の多くが政府や自治体の言うことを聞かず、行動を止めないからだ。政府・自治体は徹底的に信用を失っている。
そんな菅首相が起死回生の一打として望みをかけるのがワクチン接種。もはやワクチン接種で感染拡大を食い止める以外に道はない、というわけだが、世界から大きく出遅れ、ワクチン接種率は死者が急増しているインドよりも低い。
ワクチン接種は厚労省が所管で、厚労省は当初から予防接種と同じく市区町村の仕事として「通達行政」を行ってきた。2月に始まった医療従事者480万人向けのワクチン接種はいきなり都道府県の仕事に割り振られたが、都道府県にはそのノウハウがなく大混乱。5月末になっても接種がすべて終わっていない。
一方、3600万人いる高齢者は市区町村が行っているが、予約などでこちらも大混乱。菅首相がいくら「7月末までに終わらせよ」と号令をかけても、終わる見通しが立っていない。
そんな中、4月末に菅首相は突如として自衛隊にワクチン接種を行うよう指示を出した。厚労省もワクチン担当の特命担当である河野太郎大臣周辺にも「寝耳に水」の事態で、菅首相からすれば堪忍袋の緒が切れたということか。「何でもあり」の指示を出し始めた。それでも国民の大半がワクチンを打ち終わるのは年内いっぱいはかかるとみられ、起死回生とは言いながら、その効果が出始める頃には首相は替わっている、という可能性が強まっている。
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