JR東日本が赤字路線の初公表示唆、深澤社長「地域交通として維持できない」

全国赤字だらけ、地域の足どう持続可能に?
ライター/SAKISIRU編集部

JR東日本の深澤祐二社長は、5日の定例記者会見で、今月下旬頃までに赤字路線の収支を公表すると明らかにした。読売新聞によると、深沢社長は、「赤字の絶対額も大きくなり、(バス路線への転換などを)議論しないと、地域交通として維持できないという思いがある」と述べたという。

ymgerman /iStock

北海道から九州まで赤字路線だらけ

実は、これまでにJR東日本を除く、JR各社はすでに赤字路線を公表している。2016年1月にJRとしてはじめて赤字路線を公表したのは、JR北海道。以来、6月3日に発表した2020年3月期まで、8期連続で全線が赤字の苦境に陥っている。2020年3月期の営業損益は、全線区合計で790億600万円の赤字だった

JR九州も2020年5月に初めて、赤字路線を公表。赤字額が最も大きいのは、日豊線の佐伯-延岡間で6億7400万円の赤字だった。次いで、肥薩線の八代-人吉間で5億7300万円の赤字。JR九州の全線のうち、赤字線区は9割前後に上るという。

JR四国は、今年5月に鉄道路線の区間ごとの2020年度の収支を発表。それによると、新型コロナ感染拡大前の2019年度まで、唯一、黒字だった瀬戸大橋線も赤字に転落。JR四国管区のすべての路線で赤字となった。100円の収入を得るために必要な費用を示す「営業係数」が最も高かったのは、予土線の北宇和島-若井間で、100円の収入を得るのに必要な経費は1401円だった。

JR西日本も、今年4月に初めて、赤字路線を公表。17路線30区間が赤字路線と公表され、JR西日本は記者発表時に「今回お示ししている線区におきましては、鉄道の特性が十分に発揮できない」と、赤字路線の廃線を匂わせるような発言をしている。

JR西日本の開示資料より

JR九州の取り組みとは

そうした中、JR各社もただ手をこまねいているわけではない。特にJR九州はさまざまな知恵を絞って、何とか経営正常化を実現しようとしている。たとえば、西九州新幹線が武雄温泉―長崎間で今秋開業することに合わせて、新たな観光列車「ふたつ星4047」の運行が開始される。

JR九州「ふたつ星4047」特設サイトより

昨年には、九州新幹線の未活用スペースを活用した荷物輸送サービス「はやっ!便」の提供を始めた。博多-熊本間を最速1時間50分、博多-鹿児島中央間を最速2時間40分で結ぶ。900円からという低料金も相まって、既に一定数の利用があるという。また、今年1月には、九州新幹線小倉駅にコワーキングスペースを開業した。

JR九州の青柳俊彦社長は、日本経済新聞のインタビューで次のように述べ、新規事業の手ごたえを示していた。

「始まったばかりだが一定の利用があり、大きく化けることを期待している。JR九州は35年前(分割民営化で)脆弱な鉄道網と3000人の余剰人員を抱えて発足し、『明日の飯』を稼ぐため様々な事業に取り組んだ。当時の貪欲さを持ってチャレンジしたい」

持続可能な地域交通の議論を

とはいえ、JR各社ともに赤字額が大きすぎて、いくら新規事業に力を入れても、抜本的な収益構造の改革なしには赤字解消は難しいのが現実だろう。その場合、ローカル線を廃止し、バス路線に転換するなどが具体的な選択肢となるが、地域住民の反対は根強い。地域選出の政治家も地域住民の反対を押し切って、ローカル線をバス路線に転換する政策を主張するのは躊躇があるだろう。

しかし、そうはいっても多くのローカル線の主な利用客は通学する学生だ。人口減少がこの先より進むと考えられる中、当然、学生の数も減り続けていくことになる。

ローカル線を継続していく限り、赤字は膨れ上がるばかりになる可能性が高い。どういった交通であれば今後も持続可能で、さらに地域にとって一番良いのかについて、地域住民を交えて話し合っていかなければならない段階に来てしまっているのではないか。

 
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